Coverage of 2008 Japan National Championship

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世界中のゲーマーに愛されて15年。

「まさか、勝てるとは思いませんでしたよ」

と、大礒 正嗣(長野/広島)は笑みを浮かべながら語った。土曜日に犯してしまったあの致命的なミス。

だが、そのミスが大礒を生まれ変わらせた。いや、過去の姿を思い出させたと言うべきか。

長く現場から離れていたことが、勘を鈍らせるということは十分にあるだろう。しかし、ミスをミスとせずに、自分を目覚めさせるきっかけに大礒はすることができた。

そして、そこからの快進撃。その姿は、あの津村 健志(広島)をして、「今のイソさんとはマッチアップしたくない」と言わせるほどのものであった。

青と白という古典的な万能の色で構成されたコントロールデック。万能ゆえの難しさはあるものの、今の大礒が手にすれば、それは王者のマジックと呼ぶに相応しい。

今年の世界選手権の開催地は、アメリカ・メンフィス。

この15周年の節目の年に、本場アメリカで、大礒の、そして代表メンバーの活躍する姿を見ることができるだろう。

また、トップ8入賞者やサイドイベントのオープンスタンダードを制した秋山 貴志(千葉)のように、社会人として仕事を持ったプレイヤーの活躍が目立った大会であった。

そのほとんどのプレイヤーが、限られた時間でのマジックだからこそ、その中で全力で集中することの大切さを学ぶことができたと語っている。趣味としてマジックは続けていきたい、でも続ける以上は勝つ努力をしたいと。

プレイヤーの数だけマジックとのつきあい方がある。

あなたとマジックはどのような関係ですか?




Quarterfinals   Semifinals   Finals   Champion
1 Mihara Makihito   Takakuwa Akihiro, 3-1        
8 Takakuwa Akihiro   Takakuwa Akihiro, 3-2
       
4 Senba Kouraou   Kurihara Shingou, 3-2   Masashi Oiso, 3-1
5 Kurihara Shingou    
       
2 Takahashi Yuuta   Oiso Masashi, 3-0
7 Oiso Masashi   Oiso Masashi, 3-1
       
3 Watanabe Yuuya   Watanabe Yuuya, 3-1
6 Yamamoto Shouhei    

3rd Place Playoff  
Watanabe Yuuya Watanabe Yuuya, 3-0
Kurihara Shingou


2008 Magic Japan National Championship Intro (in Japanese)


2008 Magic Japan National Championship Game 1 (in Japanese)


2008 Magic Japan National Championship Game 2 (in Japanese)


2008 Magic Japan National Championship Game 3 (in Japanese)


2008 Magic Japan National Championship Game 4 and Wrap-up (in Japanese)


EVENT COVERAGE INFORMATION
Pairings Results Standings
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1

 

  • The Top 8 Player Profile
    by Event Coverage Staff

  • 高桑 祥広/Akihiro Takakuwa
    年齢:23
    在住地:神奈川
    職業:会社員

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴
    玄人杯優勝! GP Top 8

    そのほかのマジックでの業績:
    Sexy Lobster RoM担当

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《吠えたける鉱山/Howling Mine

    マジック以外に興味があること:
    少しでも低マナを補充したいはずなのに、高橋はおかしくなってしまったのだろうか?

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    高橋 優太

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    赤単ストーム 高橋 純也

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    《取り消し/Cancel》が復活


    大礒 正嗣/Masashi Oiso
    年齢:24
    在住地:長野(広島)
    職業:Sexy Lobsterコミュニティ観察担当

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴:
    忘れた(世界選手権団体戦優勝、PT Top 8多数)

    そのほかのマジックでの業績:
    青パクト(《否定の契約/Pact of Negation》で敗北を選択。
    《祖先の幻視/Ancestral Vision》を1ターン目に待機しない

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《小川跳ね》

    マジック以外に興味があること:
    楽な生活

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    高橋 優太

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    ゆとりひばり ガブリエル ナシフとコガモ(津村 健志)と(北山)雅也くん

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    コンボデッキの復権


    仙波 恒太郎/Koutaro Senba
    年齢:27
    在住地:千葉県柏市
    職業:会社員

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴:特になし

    そのほかのマジックでの業績:
    都道府県選手権優勝 AKB杯全勝 LMC優勝 千葉ドラ優勝 邪悪魔法使い優勝

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《送還/Unsummon

    マジック以外に興味があること:
    ボウリング・ゴルフ・カラオケ

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    三原さん(まっきー)

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    青黒フェアリー 飯塚 俊+石垣 涼士

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    《忘却の輪/Oblivion Ring


    渡辺 雄也/Yuuya Watanabe
    年齢:19
    在住地:神奈川
    職業:ミスターPWC

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴:
    GP京都優勝、2006 The Finals 準優勝、 2007 The Finals ベスト8

    そのほかのマジックでの業績:
    2007 Rookie of The Year

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《思案/Ponder

    マジック以外に興味があること:
    マジック大好きです

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    自分かあんちゃん(高橋 優太)

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    UWヒバリ 自分

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    面白いリミテッド環境


    高橋 優太/Yuuta Takahashi
    年齢:22
    在住地:東京
    職業:学生

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴:
    GP静岡と神戸

    そのほかのマジックでの業績:
    大山祭りでガラクと大口・ホビステとオーガをよろしく

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《祖先の幻視/Ancestral Vision

    マジック以外に興味があること:
    Jazz・ピアノ

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    自分

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    青黒フェアリー 自作

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    1マナの強いカード 3マナのインスタントのドロースペル


    山本 昇平/Shohei Yamamoto
    年齢:26
    在住地:広島県
    職業:会社員

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴:
    日本選手権

    そのほかのマジックでの業績:
    世界選手権のチーム戦

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《憤怒の鍛治工/Rage Forger

    マジック以外に興味があること:
    小説

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    僕以外の誰か

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    《根の壁/Wall of Roots》ヒバリ

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    楽しいリミテッド


    三原 槙仁/Makihito Mihara
    年齢:26
    在住地:千葉
    職業:会社員

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴:
    2003・2004・2005日本選手権トップ8、2006世界選手権1位

    そのほかのマジックでの業績:
    LMCトップ8多数

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《大いなるガルガドン/Greater Gargadon

    マジック以外に興味があること:
    読書

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    あんちゃん(高橋 優太)

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    Lark(ヒバリ) 自分

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    おもしろいリミテッド


    栗原 伸豪/Shingou Kurihara
    年齢:25
    在住地:東京
    職業:Level 8 Magic Player

    マジックの大きなイベントでのベスト8入賞歴:
    GP3回 PT1回(チーム戦なら+2回)日本選手権1回

    そのほかのマジックでの業績:
    特になし

    今週末のMVPカードを1枚選んでください:
    《突撃の地鳴り/Seismic Assault

    マジック以外に興味があること:
    コードギアスカフェ

    誰がチャンピオンになるでしょう:
    高桑

    今回プレイしているスタンダードデッキとデザイナー:
    青赤アサルト白鳥

    アラーラの断片に何を期待していますか?:
    タカラトミーの浅原通信のカードレビューに期待します。



     
  • The Top 8 Decks
    by Event Coverage Staff

  • Takahashi Yuta
    2008 Japan Nationals - Top 8


    Watanabe Yuya
    2008 Japan Nationals - Top 8


    Senba Koutaro
    2008 Japan Nationals - Top 8


    Kurihara Shingou
    2008 Japan Nationals - Top 8




    Takakuwa Akihiro
    2008 Japan Nationals - Top 8

    Main Deck

    60 cards

    Fungal Reaches
    Molten Slagheap
    Mountain
    Spinerock Knoll

    20 lands


    0 creatures

    Empty the Warrens
    Grapeshot
    Ignite Memories
    Lotus Bloom
    Manamorphose
    Pyromancer's Swath
    Rift Bolt
    Rite of Flame
    Shard Volley
    Shock
    Tarfire

    40 other spells

    Sideboard
    Guttural Response
    Howling Mine
    Ignite Memories
    Martyr of Ashes

    15 sideboard cards




     
  • Standard Metagame Breakdown and Rogue Decks
    by Yukio Kozakai / Takeshi Miyasaka
  • ※デッキリストは日曜日になってから追記されました。

    35 ヒバリ/Reveillark
    22 フェアリー/Faerie
    21 赤単ビートダウン/Mono Red Beatdown
    14 マーフォーク/Merfolk
    12 エルフ/Elf
    10 白単ビートダウン/Mono White Beatdown
    8 スワンアサルト/Swan Assault
    5 トースト系/Quik’n Toast
    5 黒赤トークン/Black Red Token
    4 緑単ビートダウン/Mono Green Beatdown
    4 ブリンク/Momentary Blink
    4 ストーム/Storm
    3 黒緑ビッグマナ/Black Green Mana Ramp
    3 黒緑手札破壊/Black Green Hand Destruction
    2 青白コントロール/Blue White Control
    1 黒青コントロール/Black Blue Control
    1 黒緑ビートダウン/Black Green Beatdown
    1 黒単ビートダウン/Mono Black Beatdown
    1 赤白ランデス/Red White Land Destruction

    Tier 1: ヒバリ/Reveillark

    安定性、デッキパワー共に環境トップクラスのアーキタイプだったが、フェアリーに対しての不利が叫ばれていた。ところが、そのフェアリーがイーブンタイド導入後に隆盛してきた赤単に対抗するシフトを敷き始めたことも追い風となり、今大会では最大勢力となった。

    一口にヒバリと言ってもその中身は多種多様。マナベースの安定を重視した純正青白ヒバリを始め、《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》を加えて、《熟考漂い/Mulldrifter》《残忍なレッドキャップ/Murderous Redcap》などを《影武者/Body Double》《目覚ましヒバリ/Reveillark》でループする無限コンボを内蔵した形もある。ちなみに、多かったのはこちらの無限コンボ型の方で、19名のプレイヤーが採用している。

    また、マナブーストの部分に《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》《精神石/Mind Stone》ではなく「ブロックできるマナベース」として《根の壁/Wall of Roots》を採用しているバージョンもある。安定の青白を取るか、トップデッキで勝てる可能性のある無限型を取るか。プレイヤー間での議論は尽きない。

    Watanabe Yuya
    2008 Japan Nationals - Standard

    Tier 1: フェアリー/Faerie

    先月行われたグランプリ神戸で優勝を果たした高橋 優太(東京)が使用していたのがフェアリーだったのは記憶に新しい。スタンダードでも、その構成パーツの根幹はブロック構築のそれと大差ない。それに、ローウィン・シャドームーアブロック以外のカードを組み込めるわけだから、間違いなく強さは保証されている。

    とにかくデッキが軽く作られており、相手のターンに動くことの出来るカードばかりで構成されているのが一般的で、そのスキは限りなく少ない。序盤に《苦花/Bitterblossom》を置ければ、あとは《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》がほぼ確定カウンターと化し、《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》が攻防一体の仕事を果たす。

    赤単に対しての相性の悪さが指摘されるが、先ほど名前の挙がった高橋は、環境に合わせて常にフェアリーを進化させてきており、赤単を克服したフェアリーの構築に成功したと宣言している。そうなるとほぼ全てのデッキに対して戦えるデッキになる可能性もある。

    Takahashi Yuta
    2008 Japan Nationals - Standard

    赤単ビートダウン/Mono Red Beatdown

    序盤から《運命の大立者/Figure of Destiny》《血騎士/Blood Knight》などの優秀なクリーチャーで攻め立て、火力でサポートする古くからあるアーキタイプだ。赤単自体はシャドームーア発売当初から《復讐の亜神/Demigod of Revenge》をフィーチャーしたデッキが存在し、そこそこの成績を残していたのだが、イーブンタイドで《運命の大立者》を得たことでその地位を確立した。

    火力も《冠雪の山/Snow-Covered Mountain》を介して抜群の除去性能を誇る《雪崩し/Skred》が採用され、《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》《カメレオンの巨像/Chameleon Colossus》《剃刀毛のマスティコア/Razormane Masticore》など、赤単にとって厄介な存在をわずか1マナで焼き払える高性能さが魅力だ。

    赤ゆえに対策された時の脆さは持ち合わせるが、今の赤はその上から叩き潰せるだけのパワーがある。

    Saito Tomoharu
    2008 Japan Nationals - Standard

    マーフォーク/Merfolk

    環境の2大巨頭、ヒバリとフェアリーが《島/Island》を置くデッキであることに目をつけ、《アトランティスの王/Lord of Atlantis》《メロウの騎兵/Merrow Reejerey》などでマーフォーク軍団を強化しつつ島を渡り、あとはカウンターで守るというクロックパーミッションがこのマーフォークデッキだ。

    赤には滅法弱いけれども爆発力が物凄いのが特長で、殴り合いに持ち込むとエルフを食うことも珍しくはない。《メロウの騎兵》を使ったタップアンタップのトリックと、《石ころ川の旗騎士/Stonybrook Banneret》によって《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》《誘惑蒔き/Sower of Temptation》《賢人の消火/Sage’s Dousing》のコストまで軽減される柔軟な展開が出来る上、ただ殴る、除去する、だけの動きではないビートダウンであることで、玄人好みされるデッキでもある。

    エルフ/Elf

    黒緑エルフ。現環境のビートダウンの代名詞だったが、最近はメタゲームのスミに追いやられているイメージが強かった。

    デッキパワーと爆発力はかなりのレベルなのだが、流行のヒバリを始め、モーニングタイド後には、相性が良いと言われたフェアリーにも勝ち負けがおぼつかなくなり、次第にその数は少なくなっていった。

    ところが、最近はメインボードの《思考囲い/Thoughtseize》から崩して一気にクロックを刻むタイプや、《カメレオンの巨像/Chameleon Colossus》を投入して《苦花/Bitterblossom》のトークン群を駆け抜けたりと、姿形を少しずつ変えて生き残ってきた。安定性がある上に赤にも対抗しやすいデッキなので、評価は少し改める必要がありそうだ。

    白単ビートダウン/Mono White Beatdown

    Breakdownの流れを追っていくと、いかにローウィン・シャドームーアブロック構築の影響が大きいかがわかる。

    白単では大きく分けて2種類のタイプが存在したが、そのうちの1つが、限定構築でも活躍しているキスキンである。1ターン目からロケットスタートが可能なアーキタイプであり、さらに白単色でありながら《損ない/Unmake》というデメリットのないインスタントの確定除去を得たのは大きい。

    また、大阪勢は藤田 剛史(大阪)がデザインした白単を採用しており、《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》《聖なる後光の騎士/Knight of the Holy Nimbus》といった、時のらせん時代のエースが久々に戦場を駆け巡っている。

    Fujita Tsuyoshi
    2008 Japan Nationals - Standard

    スワンアサルト/Swan Assault

    《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》を使用したコンボデッキということで、ひとくくりにさせて頂いた。《ブリン・アーゴルの白鳥》に向けて《突撃の地鳴り/Seismic Assault》で土地を投げてドローし続け、手札があふれ返った頃合で今度は対戦相手にその火種を向けるというシンプルな作りだ。ここから《突撃の地鳴り》を抜いた赤青バーンの形を取ったタイプもある。

    日本での人気は一息だった印象だが、各国の国別選手権でスワンアサルトは結果を残し、再び日本のメタゲームに食い込んできた。

    Kurihara Shingou
    2008 Japan Nationals - Standard

    トースト系/Quik’n Toast

    多色グッドスタッフと言えばわかりやすいだろうか。

    《熟考漂い/Mulldrifter》《滅び/Damnation》《謎めいた命令/Cryptic Command》などのアドバンテージ呪文と、《雲打ち/Cloudthresher》《妖精の女王、ウーナ/Oona, Queen of the Fae》などのフィニッシャーで勝負を決める、系統で言うとビッグマナに近いデッキである。

    カードパワーの高いカードを詰め込んでいるので、きちんと機能すると強いのだが動きが大振りなので、マナの色がかみ合わなかったりマナ加速がおぼつかないと何も出来ないまま負けてしまうこともままある。ブロック構築ではトーストならではという動きで存在感を示したが、スタンダードではヒバリデッキで代替が利くケースが多いことと、デッキ自体の安定感の差が、そのまま人気に現れてしまっている。

    ただ、構成パーツに時のらせんブロックのカードが少ないので、今後に期待だ。

    黒赤トークン/Black Red Token

    《苦花/Bitterblossom》《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal》《湿地の飛び回り/Marsh Flitter》《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》などの、トークンを複数生み出す赤黒のカードを詰め込んで、そのまま殴るも良し、《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》の餌にするもよし、《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk》で一気に勝負をつけるもよし。と、いうデッキだ。

    全体除去に対してリカバリーが効きやすい反面、1枚1枚のカードパワーがあまり高くないこととサイズが小さいという2点で、一度ペースを崩されると脆い一面もある。それをカバーするために《墓穴までの契約/Grave Pact》がメインから取られるタイプもあり、より速攻性を持たせるために《魂魄流/Torrent of Souls》を入れるケースも多い。

    以前は《憤怒焚きの巨人/Furystoke Giant》で突然に大量ダメージを叩き出すバージョンもあったが、デッキ全体の構成を軽くする方向に進んだ結果、現在のようなレシピになっている。

    Ito Motoaki
    2008 Japan Nationals - Standard

    緑単ビートダウン/Mono Green Beatdown

    ドイツ選手権ベスト8入賞で注目を浴びた、緑単。伝統の「ストンピィ」である。動きは単純明快で、出す、殴る、強化する、以上。加速力においては赤単や白単も上回り、序盤から大量ダメージを叩き込むことが出来る。特に《イラクサの歩哨/Nettle Sentinel》がイーブンタイドから入ったのは大きく、1ターン目から2点のクロックを刻めることでデッキとしての存在意義を確立させた。

    ブリンク/Momentary Blink

    ヒバリよりも、より《一瞬の瞬き/Momentary Blink》による「場に出た」時の効果を重視する形で、ヒバリと違うのは《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》《叫び大口/Shriekmaw》を取っている点だ。より盤面のコントロールにシフトしたタイプで、ヒバリによるゆっくりとしたアドバンテージよりも即仕事をするクリーチャー達で素早い勝利を目指すのがこのブリンクだ。

    デッキ自体が非常に「丸い」構成になっているため、ビートダウンともコントロールとも戦える苦手の少ないデッキに仕上がっている。しかし、それはどのデッキに対してもまんべんなく勝ったり負けたりするという意味でもあり、勝ちに行くための一刺しが欲しいところではある。

    ストーム/Storm

    かつては世界を制した《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》も、今大会では使用者はわずか1名となっている。では、残りの3名はというと《紅蓮術士の刈り痕/Pyromancer’s Swath》で《ぶどう弾/Grapeshot》をサポートする形のストームバーンであり、赤単フルバーンという言い方も出来る。

    《背骨岩の小山/Spinerock Knoll》に秘匿した、本来なら9マナ必要な《ドラゴンの嵐/Dragonstorm》を実質2マナで発動させたり、締めの火力を仕込んだりといった使い方で勝負のターンで一気に決めるのが常套手段だ。

    かつては、赤青で《手練/Sleight of Hand》《時間の把握/Telling Time》などを使っていたが、現在はドローサポートに全く頼らないナチュラルドローだけで戦わなければならないのがコンボデッキとしては悩みのタネだ。しかし、手持ちの火力だけで足りることもあるので、1つの勝ちパターンだけではないところが逆に強みとも言える。

    Azuma Motokiyo
    2008 Japan Nationals - Standard

    その他のデッキ/Rogue

    他にも、少数派ではあるがこれだけのアーキタイプを各プレイヤーが持ち込んでいる。リストのみの紹介となるが、全国100万人とも200万人とも言われるRogueデッキファンの皆様、必見。

    黒緑ビッグマナ/Black Green Mana Ramp

    黒緑手札破壊/Black Green Hand Destruction

    Honnami Tomoyuki
    2008 Japan Nationals - Standard

    Main Deck

    60 cards

    Forest
    Llanowar Wastes
    Reflecting Pool
    Swamp
    Treetop Village
    Twilight Mire
    Urborg, Tomb of Yawgmoth

    24 lands

    Augur of Skulls
    Murderous Redcap
    Shriekmaw
    Tarmogoyf
    Tombstalker

    18 creatures

    Damnation
    Raven's Crime
    Stupor
    The Rack
    Thoughtseize

    18 other spells

    Sideboard
    Damnation
    Deathgrip
    Extirpate
    Graveborn Muse
    Riftsweeper
    Terror

    15 sideboard cards


    青白コントロール/Blue White Control

    黒青コントロール/Black Blue Control

    黒緑ビートダウン/Black Green Beatdown

    黒単ビートダウン/Mono Black Beatdown

    Ando Reiji
    2008 Japan Nationals - Standard

    Main Deck

    60 cards

    Mutavault
    Pendelhaven
    19  Swamp

    22 lands

    Inkfathom Infiltrator
    Murderous Redcap
    Nightshade Stinger
    Oona's Blackguard
    Prickly Boggart
    Shriekmaw
    Stinkdrinker Bandit

    28 creatures

    Bad Moon
    Bitterblossom
    Sudden Death

    10 other spells

    Sideboard
    Bottle Gnomes
    Damnation
    Faerie Macabre
    Grave Pact
    Marsh Flitter
    Mutavault

    15 sideboard cards


    赤白ランデス/Red White Land Destruction

    Mizutani Naoto
    2008 Japan Nationals - Standard



     
  • Quarterfinals : 三原 槙仁(千葉) vs. 高桑 祥広(神奈川)
    by Yukio Kozakai
  • 力強い握手から三原と高桑(手前)は試合を開始!
    圧倒的なパフォーマンスでスイスラウンドを駆け抜け、ラウンド12終了時点で早くもプレーオフ進出を決めた三原 槙仁(千葉)。現在でこそ千葉コミュニティの一員として語られることも多い三原だが、もともとは大分のプレイヤーだった。

    就職を期に千葉へと引っ越してきたわけだが、さすがに会社員ともなるとそうそうマジックは出来ないだろう、世界王者になったのに引退か......と、誰もが思っていた。ところが、うっかり会社に「世界王者」であることが知れ渡ってしまった。世の社会人プレイヤーの実に97%(推定)が恐れる、俗に言う「会社バレ」というやつだ。

    ところがこれが好転した。「君、世界レベルなんでしょ? なら行っておいでよ!」と、プロツアーで休暇が取りやすくなったというのだ。そんな三原も社会人2年目を迎えて、上司が長い休みに入る時などは、次第に責任のある仕事も任されるようになってきたという。その辺は、プロツアーで何度も長い休みを取るのだから、ギブアンドテイクが成立している。

    さて、話を戻してその魔界で三原がどうしていたかというと、千葉で毎週開かれていた「LMC」という大会にほぼ毎回参加して優勝や上位入賞の常連となり、気がついたら「LMCの番人」として君臨していた。誰と対戦しても手加減一切なしで全力でマジックすることから、千葉民は三原を倒すことを目標に掲げつつマジックをするようになっていった。

    それが、今年の千葉コミュニティの活躍につながっている。メンバーの実力は確実に底上げされ、グランプリマニラを制した菅谷 裕信(千葉)のようなタイトルホルダーまで送り込んだのだが、それに一役も二役もかっていたのだ。もちろん、三原自身も三田村 和弥(千葉)や秋山 貴志(千葉)といった強豪プレイヤーとLMCで真剣勝負をし、腕を磨き続けてきた。

    三原は、日本選手権において2003年から3年連続でトップ8入賞を果たしていたが、全て準々決勝で敗退してきた。3度目ならぬ、4度目の正直へ。世界王者となって、プレーオフを勝ち抜く為に必要な豪運と流れを味方につける術を知った三原は、もう運命を恐れない。
    運命は、戦わぬものに微笑むことなど、決して無いのだから。

    職場での理解も得て、世界にはばたきつづける三原 槙仁
    ―――「ずいぶんと久しぶりじゃないですか?」

    高桑 「日本選手権は毎年来てますよ? あと、今年は静岡も行きましたね」

    昨年から社会人となった高桑 祥広(神奈川)。この名前をクレジットするのは実に久しぶりだ。プレイヤーとしてのキャリアでピークにあったのは、2003年から2004年にかけてだった。2003年のグランプリ京都でTOP4入りを果たすなど、グランプリやプロツアーで活躍を見せていたのだが、就職を期にプレミアイベントで姿を見なくなっていた。

    高桑と日本選手権といえば、2004年のスイスラウンド最終戦。これを勝てばプレーオフというマッチに敗れて日曜日への椅子をつかめなかった。4年越しのリベンジに、やっと成功したのである。

    高桑 「でも、ずっとマジック・オンライン(以下、MO)はしていたんですよ」

    また2004年の話になるが、神河物語のリミテッドで行われたグランプリ横浜。その中で、見事な秘儀・連繋のライブラリーアウトデッキをドラフトしたテクニックに注目して、高桑へインタビューした項があった。これも、MO発のテクニックであった。

    筆者はMOをプレイしていないので詳しく話を聞くと、今回高桑が使っている「ストーム」は、MOでは構成パーツが非常に安く購入できるとのことで、コストをかけずに練習を繰り返せたという。

    高桑 「公式戦で三原さんに勝ったことないんですよね。だけど、今日が僕の日なら行けますよ!」

    さあ、ゲーム開始のアナウンスが流れる。日本選手権決勝ラウンド、いよいよ開幕だ!

    Game 1

    三原 「メインはいかに《誘惑蒔き/Sower of Temptation》を引かないかですよ」

    しかし、昨日の練習から吸い付くように《誘惑蒔き》を引き込むという三原はマリガン。高桑もマリガンとなるが、《背骨岩の小山/Spinerock Knoll》《睡蓮の花/Lotus Bloom》《炎の儀式/Rite of Flame》《ぶどう弾/Grapeshot》《タール火/Tarfire》《山/Mountain》、あとは《紅蓮術士の刈り痕/Pyromancer’s Swath》があればというハンドで、しっかり《背骨岩の小山》の秘匿で《紅蓮術士の刈り痕》の姿が。

    しかも、三原は土地が1枚でストップしてしまう。後手1ランドキープだったのだ。

    高桑は《炎の儀式》込みで11マナを捻り出し、《タール火》、《ぶどう弾》×2からストーム4の《記憶の点火/Ignite Memories》でロシアンルーレットをスタート。残ライフ11点から、5回《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》を当てれば三原は生き残る計算だったが、《影武者/Body Double》が選ばれると即座に――

    三原 「参りました」

    手札を数えてディスカードを宣言する三原。

    ストームを数えてコンボを決める高桑。

    どちらの数え唄が勝利への凱歌かは、一目瞭然だった。

    三原 槙仁 0-1 高桑 祥広

    Game 2

    天を仰ぐ高桑 祥広
    またもマリガンスタートの三原。高桑は《背骨岩の小山》からじっくり立ち上がり、三原は《結ばれた奪い取り/Bonded Fetch》で手札の整理を図るが、すぐに《ショック/Shock》で退場となる。

    高桑は手札と相談し、《裂け目の稲妻/Rift Bolt》を2枚待機。次のターンに6点のダメージを三原に与えると、《紅蓮術士の刈り痕》をプレイ。これは《否定の契約/Pact of Negation》でカウンターする三原だったが、《炎の儀式》経由で追加の《ぶどう弾》からストーム6の《記憶の点火》。

    三原のハンドは2枚。《戦場の鍛冶場/Battlefield Forge》と《ルーンのほつれ/Rune Snag》。三原のライフは8なので、7回中4回的中すれば高桑の勝ちだ。何というか、さっきからこのテーブルだけゲームが違う。

    外れ、当たり、外れ、当たり、当たり、外れ......

    外れ!

    首の皮一枚つながった三原は《熟考漂い/Mulldrifter》から持ち直し、その後《ショック》1枚あればいいという状況が続くのに、高桑は掘っても掘っても土地ばかりでどこまで掘っても火力が無い。

    それでも高桑は諦めなかったが、驚異的なトップデッキを続けて無限ライフを決めた三原が、高桑を振り切った。

    三原 槙仁 1-1 高桑 祥広

    Game 3

    1ターン目に《背骨岩の小山》《睡蓮の花》のロケットスタートから、待機明けが重なるように《裂け目の稲妻》を待機。全てが解き放たれる、第4ターン。《魔力変/Manamorphose》をプレイすると三原から《ルーンのほつれ》が飛んでくる。これに《耳障りな反応/Guttural Response》で対応すると、ストーム5から《ぶどう弾》。

    《背骨岩の小山》を発動して《睡蓮の花》をプレイし、残4マナと残り1枚のハンドからキッチリと《巣穴からの総出/Empty the Warrens》ストーム8!

    三原 「ノン《炎渦竜巻/Firespout》......」

    高桑、脅威の4ターンキル!

    三原 槙仁 1-2 高桑 祥広

    《背骨岩の小山/Spinerock Knoll》に秘匿というスタートを4ゲーム連続で展開した高桑

    Game 4

    高桑 「この運ゲー感がたまらないよね」

    三原 「俺はカウンター構えてニヤニヤしながら王者のマジックがしたい」

    三原の顔から、いつもの余裕の表情が消える。そして、開幕ターンで思わず2人ともが「パーフェクト」と叫ぶ。高桑がまたも《背骨岩の小山》から2枚の《睡蓮の花》待機、しかも2ターン目にはしっかり《菌類の到達地/Fungal Reaches》を置いたのだ。

    《睡蓮の花》の待機が明ける。2枚の《魔力変》を経由してから《炎の儀式》、《裂け目の稲妻》《ショック》でストーム7の《ぶどう弾》。さらに《裂け目の稲妻》を重ねてトドメのストーム9《ぶどう弾》。

    この大舞台で4ターンキルを2回出されては、さすがの豪腕・三原もどうすることも出来なかった。

    三原 槙仁 1-3 高桑 祥広

    またしても、三原は準々決勝で姿を消した。それを観戦していた三田村と秋山が三原に話しかける。

    秋山 「また千葉はストームに屈したわけですね」

    三田村 「ボードコントロールがコンボに負ける図式が再び」

    昨年のプレーオフ進出の2人が感慨深く話す。思えば、昨年は石川 練(神奈川)のストームの前に、三田村が準々決勝で、秋山が準決勝でそれぞれ涙を飲んだ。2人のデッキは「ソーラーフレア」。対抗する手段は今回の三原同様、ほとんど持ち合わせていなかった。残酷な運命が、まるで入れ子人形のように繰り返されたのだった。

    三原は2人に向かって一言だけ応えた。

    三原 「王者のマジックが出来なかったなぁ」

    ダイスで決まった勝負の行方。ストームは立派なデッキであり、戦術であるが、力と技の純粋な勝負を楽しみたかった三原は、それだけが残念だったと漏らす。しかし、もう切り変えた三原は三田村たちに努めて明るく振舞った。

    三原 「マジックでもしましょうか」

    豪腕、ブルドーザー、そして魔王とまでも称された王者が、静かにトーナメントから去っていった。

    Final Results: 高桑 祥広 準決勝進出!



     
  • Quarterfinals : 高橋 優太(東京) vs. 大礒 正嗣(長野)
    by Atsushi Ito
  •  握手を交わす大礒と高橋
    国内イベント三連覇が、現実のものとして見えてきた。

    グランプリ静岡、グランプリ神戸を立て続けに駆け抜けた『妖精に魅入られた男』高橋 優太。

    三連覇はもちろんとして、日本選手権それ自体にも思い入れは深い。

    「去年の日本選手権ではトップ8で負けちゃって、あとの準決勝と決勝をただ眺めてるだけなのが本当に悔しかった。あそこに自分が座ってれば、って思ってしまって」

    『不屈のストイシズム』とも称される、そのひたすらに純粋な克己心が彼をここまで強くした。

    高橋 「今年こそは優勝します」

    歴戦の相棒であるフェアリーを手に、準々決勝の舞台に上がる。

    そんな高橋の前に立ちはだかるのは『世界の壁』大礒 正嗣。幾多のプロツアートップ8入賞経験を持つ、文字通り世界レベルのプレイヤーである。

    かつての『ルーキー』もブランクの影響か、スイスラウンドではほとんど初心者レベルと言っていいプレイミスがいくつかあったようだが、それでもトップ8に残るのだから、その強さたるやまさしく推して知るべし。

    高橋について聞いてみると、さすがに彼のここ最近の活躍は知っているとのこと。

    大礒 「でも彼は個人戦のプロツアーでは、いまいち目立った活躍がないですよね。世界レベルになるにはその壁を打ち破ってもらわないと。さしずめ今は僕がその越えるべき壁というところでしょうか」

    津村 健志の調整による青白《目覚ましヒバリ/Reveillark》を駆り、久しぶりのトップ8で才気を爆発させる。

    さて、フェアリー対青白《目覚ましヒバリ》。一般的にはフェアリーの方が有利と思われがちだが、実は互いのデッキ構成によって相性差が大きく変動するマッチアップである。

    特に大礒の《ヒバリ》デッキは《祖先の幻視/Ancestral Vision》《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》と二種の待機カードで1ターンの行動回数を増やし、待機が解けるターンにフェアリー側にアップキープの行動を迫ることで、《謎めいた命令/Cryptic Command》で迎撃したりメインフェイズで本命の《目覚ましヒバリ/Reveillark》を通したりなどして強烈なカウンターパンチを食らわせることができる構成となっている。

    加えて高橋のフェアリーは対ビートダウンを強く意識しすぎており、サイド後でもそれほど対コントロールに強い構成にならない、と公開されたリストを見て大礒が指摘する。

    他方で高橋は、大磯のデッキのマナベースの脆さに着目する。《冠雪の島/Snow-Covered Island》が多すぎて《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》がちゃんと3ターン目に出ることが少ないはず、という考えを持ったようだ。

    互いの思惑が交錯する。兎にも角にも、結果はやってみるまでわからない。

    高橋が壁を越えるのか、大礒がそれを阻むのか。注目の一戦が、幕を開けた。

    プロツアーベスト8入賞5回、「世界の壁」大礒 正嗣
    Game 1

    先攻の大礒が少考してキープを宣言すると、高橋は即座にマリガンを選択。しかし6枚のハンドもキープには至らず、5枚でのスタートを強いられてしまう。《祖先の幻視/Ancestral Vision》待機の大磯に対し、高橋には1ターン目の《祖先の幻視》も2ターン目の《苦花/Bitterblossom》もない。3ターン目にようやく《祖先の幻視》を待機しつつも、3枚目の土地が置けない高橋。

    一方の大礒は4ターン目に2枚目の《祖先の幻視》を待機した上で淡々と土地を伸ばす。返しで高橋は3枚目の土地を引き入れ、マナを立たせてターンエンド。アップキープに待機の明けた《祖先の幻視》を《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》しようと試みるがこれは大礒の《霊魂放逐/Remove Soul》に阻まれ、大礒に大量のカードが補充される。大礒はさらに《熟考漂い/Mulldrifter》を想起し、アドバンテージ差をつけてターンエンド。

    高橋はようやく4枚目の土地を置き、マナを立ててエンドを宣言。大は《虹色のレンズ/Prismatic Lens》から《熟考漂い/Mulldrifter》をプレイ。これを高橋が通して、大礒の手札はさらに拡充される。高橋はエンドに《やっかい児/Pestermite》をプレイし、今出た《熟考漂い》をタップ。アタック後にメインで《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をプレイしてエンド。大礒はこの隙に《目覚ましヒバリ/Reveillark》を着地させる。

    ここでようやく高橋の《祖先の幻視》の待機が明ける。高橋はさらなる《祖先の幻視》を待機した後、《霧縛りの徒党》でアタック。大礒がこれを《目覚ましヒバリ》でブロックし、お互い何もせずに戦闘が解決。高橋の場に《やっかい児/Pestermite》、大礒の場に《熟考漂い/Mulldrifter》が舞い戻る。

    《やっかい児》の能力で先ほどの《祖先の幻視》待機で使ったマナを起こした高橋は、5マナで《叫び大口/Shriekmaw》をプレイするも、大礒のメインに2枚しか入っていない、しかし2枚目の《霊魂放逐/Remove Soul》で阻まれる。返しで大礒の2枚目の《祖先の幻視》の待機が明け、膨れ上がる大礒の手札。

    大礒は《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》→《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》と展開してクロックを一気に増加させると、高橋は《苦花/Bitterblossom》《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》と置いて一応殴り合いの構え。だが大礒は3枚目の《熟考漂い/Mulldrifter》想起ののち2体目の《目覚ましヒバリ/Reveillark》を召喚し、2マナ立たせてターンを終える。

    次の大礒のアップキープに高橋が《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をプレイするが、大礒が《一瞬の瞬き/Momentary Blink》で《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》を瞬かせ、覇権にスタックして《霧縛りの徒党》が手札に戻ると、盤面を制圧された高橋は静かに負けを認めた。

    高橋 優太 0-1 大礒 正嗣

    ここで大礒は以下のようにサイドボーディングをした。

    In
    1《霊魂放逐/Remove Soul
    2《隆盛なる勇士クロウヴァクス/Crovax, Ascendant Hero
    2《否定の契約/Pact of Negation
    2《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir

    Out
    1《目覚ましヒバリ/Reveillark
    2《一瞬の瞬き/Momentary Blink
    4《ルーンのほつれ/Rune Snag

    国内イベント三連覇を狙う「妖精に魅入られた男」高橋 優太
    Game 2

    高橋の先攻。1ゲーム目ではマリガニングトラブルに見舞われたが、今度はしっかり7枚でキープ。大礒も土地が5枚ながら《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》《熟考漂い/Mulldrifter》という手札を意を決してキープすると、ファーストドローが《祖先の幻視/Ancestral Vision》という強運。

    高橋は1ゲーム目同様《祖先の幻視》も《苦花/Bitterblossom》もないが、3ターン目に《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》を置くと、自分だけドローでアドバンテージをとりにいく。他方大礒も《熟考漂い/Mulldrifter》想起で遅れをとらない。

    高橋の4ターン目、メインは《ジェイス》で自分だけドローしてエンド。大礒のアップキープに《やっかい児/Pestermite》で土地を寝かせる。ここで大礒はさらなる《祖先の幻視》を待機してゆっくりとゲームを支配していく。次ターン、高橋は《ジェイス》でお互いドローを選択し、次ターン待機の解ける《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》に備える。さらに《祖先の幻視》を待機し、ドロー合戦は混戦の様相を呈してきた。

    大礒は同時に解ける待機のうち、まず《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》を解決。これに対し高橋は何もせず、《変わり谷/Mutavault》が手札に戻る。続いて《祖先の幻視》の解決に対して、ひとまず《やっかい児/Pestermite》をプレイしようとするが、《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンターと土地バウンスでこのターン高橋の土地が一気に2枚戻る。

    《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》が《やっかい児》で相打ちになった後、大礒は3枚目となる《祖先の幻視》を待機してエンド。高橋は生き残っている《ジェイス》でドロー後、土地が戻って膨れ上がった手札から土地を1枚をディスカードし、4マナ立たせてターンを終える。大礒は6マナあるが落ち着いて《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を待機してエンド。

    ここで高橋はエンド前に《謎めいた命令/Cryptic Command》で土地バウンス+ドローを試みるが、それにスタックでの《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》で再び高橋の土地は3枚に。お互い1ターンずつ飛んでいては、待機の数が少ない高橋に旨みがない。

    高橋またも4枚目の土地を置いて《ジェイス》でドローしてからディスカードしてターンを終えるだけ。《造物の学者、ヴェンセール》が《ジェイス》を葬った後、高橋がエンド前に再び《謎めいた命令》をプレイすると、今度はそれにスタックで大礒が《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》をプレイ!

    高橋はメインで《謎めいた命令》で《テフェリー》をバウンスするしかない。大礒の2枚目の《祖先の幻視》の待機が明け、再び《テフェリー》が降臨すると、高橋はカードを片付けた。

    高橋 優太 0-2 大礒 正嗣

    高橋は一旦席を立ち、流れを変えようとする。

    Game 3

    しかし高橋は痛恨のマリガン。それでも高橋に流れは来ないのか、《祖先の幻視/Ancestral Vision》なしでタップインでエンド。対照的に大礒は三度《祖先の幻視》を待機。

    高橋が1手遅い《思考囲い/Thoughtseize》をプレイすると、大礒の手札は土地の他に《目覚ましヒバリ/Reveillark》《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》《霊魂放逐/Remove Soul》《否定の契約/Pact of Negation》と濃厚。高橋はこの中から《造物の学者、ヴェンセール》を選ぶ。

    高橋は3ターン目にようやく《祖先の幻視》を待機してエンド。その後お互い4枚目の土地を淡々と置きあう。高橋は5ターン目に2枚目の《祖先の幻視》を待機するが、一足早く待機の明けた大磯の《祖先の幻視》はスルー。大礒は5枚目の土地を置き、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》をプレイしてターンエンド。

    高橋は6枚目の土地を置けず、大礒は返しで6枚目の土地を置き、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》を普通にプレイ。これを高橋が《ルーンのほつれ/Rune Snag》。高橋の《祖先の幻視》1枚目がようやく解け、《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》をプレイしてお互いドローしてエンド。大礒は《熟考漂い/Mulldrifter》をプレイして、高橋はこれもスルーするしかない。大礒はさらに《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を待機して、攻め手を緩めない。

    高橋は大礒のエンド前に《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を召喚するが、次ターンの大礒のアップキープには何もせず、大礒が《熟考漂い》と《台所の嫌がらせ屋》の2体で《ジェイス》にアタックすると、高橋はこれをスルー。大礒は全マナを立たせてターンエンド。高橋はエンドに《やっかい児/Pestermite》をプレイし、自分の土地を起こした上で《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》。これは予定調和の《霊魂放逐/Remove Soul》に阻まれる。

    さらに大礒は高橋の《祖先の幻視》にスタックで《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》をプレイ。高橋がこれを2枚目の《ルーンのほつれ/Rune Snag》で阻み、フルタップで《叫び大口/Shriekmaw》をプレイすると、返しでついに大礒の《隆盛なる勇士クロウヴァクス/Crovax, Ascendant Hero》が通ってしまう。

    ここで高橋は2枚目となる《叫び大口》をプレイし、《クロウヴァクス》は一旦手札に帰るが、大礒の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》の待機が明けると、大礒は《目覚ましヒバリ/Reveillark》を立て続けに2体召喚。高橋は大礒のアップキープに《謎めいた命令/Cryptic Command》でオールタップして粘ろうとするが、そこに大礒の《否定の契約/Pact of Negation》が突き刺さって、高橋はそっと手を差し出したのだった。

    高橋 「あれだけマリガンしたのに《祖先の幻視/Ancestral Vision》も《苦花/Bitterblossom》も初手に来なかった・・・回りが悪すぎました。」

    高橋 優太 0-3 大礒 正嗣

    Final Results: 大礒 正嗣の勝利!



     
  • Quarterfinals : 渡辺 雄也(神奈川) vs. 山本 昇平(広島)
    by Daisuke Kawasaki
  • 渡辺と山本、日本代表へむけて絶対に負けられない戦い
    日本選手権とは、ひとつの壮大な物語である。

    過去に多くのプレイヤーが積み重ねてきたマジックのすべてがこの日本選手権に集約されているといっても過言ではないだろう。

    日本代表、そして日本チャンピオンという肩書きを求めて、多くのプレイヤーが研鑽を積んだ集大成なのだから。

    そして、日本代表となったメンバーは、日本のプレイヤーの物語の集大成として世界選手権という物語へとストーリーは紡がれていく。。

    山本 昇平(広島)は、2006年にその物語の登場人物のひとりとしてパリで行われた世界選手権へと出場した。

    2005年の日本代表は、横浜で行われた世界選手権の国別対抗戦でみごと優勝した。チャンピオン諸藤 拓馬(福岡)を筆頭に、「世界のISO」大礒 正嗣(当時広島)・「やる気のイデア」志村 一郎(茨城)が脇を固めるというこのチームは、ドラフト中の通称コントも含めて、ひとつの物語としていまなお語り継がれている。

    そして、その物語を引き継ぐ形で2006年代表チームは世界選手権に臨み、みごとプレーオフへと進出する。2005年世界選手権個人戦を優勝し、そして、2006年には日本チャンピオンになった森 勝洋(当時東京)のワンマンチームという印象の強い2006年代表チームだったが、ならば、山本は森の物語の脇役だったのだろうか。

    山本には山本の物語がある。

    山本 「《根の壁/Wall of Roots》好きなんですよね」

    モーニングタイドが発売された直後からメタゲームに君臨し続けた《目覚ましヒバリ/Reveillark》というアーキタイプ。もともと青白で構築されていたが、グランプリ・静岡、そしてプロツアー・ハリウッドとスタンダードでのプレミアイベントを経て、いくつかのパターンに分岐していくこととなる。

    《目覚ましヒバリ》デックは、みっつのタイプにわけられる。

    ひとつめは青白のアドバンテージエンジンだけで十分と考えて一種のコントロールデックとして構築するタイプ。対戦する渡辺 雄也(神奈川)のデックなどがこれにふくまれる。

    ふたつめは《鏡の精体/Mirror Entity》で、もしくは赤をタッチしての《大いなるガルガドン/Greater Gargadon》での無限コンボを搭載したタイプ。プロツアー・ハリウッドの三原 槙仁(千葉)のデックがそうでした。

    そして、みっつめが山本のデック。

    通常《目覚ましヒバリ》デックでは、デック全体が重いという弱点をフォローするために、4枚~6枚程度のマナアーティファクトを投入するのだが、山本はこの部分に《根の壁》を採用し、速攻デックに対する対策にするとともに、中盤では相手のターンにもマナをだせるという《根の壁》の利点を活用してさらなる擬似的なマナ加速を可能とするデックを構築してきた。

    他にも山本のデックには注目するべきポイントは多いのだが、しかし、もっとも特徴的な部分はこの《根の壁》だろう。

    思えば、山本が2006年に日本選手権に持ち込んできたデックも、シーストンピーという語り尽くされたアーキタイプでありながらも、《石の雨/Stone Rain》《氷結地獄/Cryoclasm》の土地破壊8枚体制という非常に特徴的なチューンがされていた。

    山本の物語は山本のデックとともにある。

    個人個人が自分の物語をもって、テーブルの前に座る。

    そして、すべての個人の物語は全体の物語へと集約されていく。

    日本選手権という、ひとつの壮大な物語に。

    山本 昇平は、自身二度目となる日本選手権プレイオフに臨む
    Game 1

    5つのダイスの合計を競い、17を出した渡辺が16をだした山本に僅差で勝利し、先攻を得る。

    特に4ターン目での《謎めいた命令/Cryptic Command》が大きな焦点となるマッチアップだけに、先手をとれたのは大きい。

    渡辺は、1ターン目に《アダーカー荒原/Adarkar Wastes》セットからの《思案/Ponder》をキャスト。そして、2ターン目に《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》を待機する。

    マリガン後に《鮮烈な小川/Vivid Creek》からスタートしている山本にとっては非常に厳しい形。しかし、山本も負けじと《燃え柳の木立ち/Grove of the Burnwillows》から《根の壁》をキャストし、マナ加速を行う。

    渡辺は続いて2枚目の《変わり谷/Mutavault》をセットしつつ、《熟考漂い/Mulldrifter》を想起。この時点で手札にはさらに2枚の《思案》があるものの、2枚目の青マナソースにたどり着かない。

    ここで、渡辺は再度《思案/Ponder》をキャスト。今度こそ本当にドラマティックに3枚目が《島》。悩んだ末に、渡辺はこの《島》を手にいれる。そして、2発目の《思案》。ここで新たに開示された3枚目が今度は《平地》で、序盤の渡辺の懸念事項であったマナ不足は解消される。

    一方の山本は、鮮烈土地ばかりではあるものの、《根の壁》によるマナ加速もあり、渡辺に先んじて想起無しで《熟考漂い》をキャストする。ここで渡辺の待機のあけた《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》が山本の《鮮烈な小川》を手札に戻し、マナのリードをタイに取り戻す。

    そして、2体目の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》がキャストされ《鮮烈な林》を戻すことで今度は渡辺がリードを。

    これで、マナでもボードでもリードをされてしまった山本だが《炎渦竜巻/Firespout》を緑マナだけで使用することで、とりあえずのボードの脅威を取り返す。

    ここで渡辺が追加の土地をセットできず、また山本が《連合の秘宝/Coalition Relic》をキャストしたことで、マナの優位を確立することになるのだが、しかし、渡辺は一騎当千の《目覚ましヒバリ》をキャスト、臨機応変に勝利をめざす。

    そして《一瞬の瞬き》。

    この変哲もないスペルによって《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》が2体場に戻り、山本からマナの優位を再び奪い去る。

    《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》で《目覚ましヒバリ》をいったん手札に戻したりと、何かしらの策を考える山本だったが、事実上フラッシュバック付きの《ブーメラン/Boomerang》である《一瞬の瞬き》が2枚墓地に並ぶのを見ると、土地を片付けた。

    渡辺 1-0 山本

    山本と渡辺の試合が開始した直後から、ずっと渡辺のプレイを見続けている男がいた。

    2007年日本選手権トップ4の長島 誠(山梨)である。

    思えば渡辺の調整メンバーの名前にはいつものように長島の名前がある。

    そして、当然ながら、昨夜も渡辺の調整相手として長島は今年の日本選手権の物語に登場する。

    長島 「ナベ(渡辺)のデッキはバウンスが多めなので、相性はいい方です。6:4ぐらいはあるんじゃないですかね。2ターン目《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》待機できればほぼ勝てますし、《一瞬の瞬き》が働けばかなり有利にすすめられます」

    山本が自身のヒバリを調整し続けてきたように、渡辺も、青白のヒバリを使い込み続けてきた。

    世間の主流のヒバリが赤をタッチしたタイプになったとしても、青白ヒバリにこだわり続け、デックを調整し、そしてプレイングを磨き続けた。

    そうして渡辺は最終的にデックに《思案》を投入するにいたった。

    日本代表を賭けて、渡辺 雄也は戦う
    Game 2

    渡辺は後手の1ターン目に《思案》をキャスト。ここに土地は無く、また渡辺の手札には2枚目の土地しかなかったものの、マナアーティファクトが十分に手札にあったので、ここはシャッフルを選択せずに、ライブラリートップに《思案》を積み込む。

    《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》をはさんでキャストした《思案》だが、そこにも土地は存在せず、仕方なくシャッフル、やはり土地はない。

    対して、山本は、2ターン目の《難問の鎮め屋/Vexing Shusher》キャストから4ターン目に《冷鉄の心臓》を手札に戻しながらの完全なビートダウン体制を作り上げる。

    攻める側には、相手に対応策を用意させる権利がある。

    山本は、《造物の学者、ヴェンセール》でビートダウン。渡辺はこれを《造物の学者、ヴェンセール》キャストで対消滅させ、続いて《誘惑蒔き》で《難問の鎮め屋》を奪いとる。

    だが、山本も、2マナ残した渡辺に対して《ルーンのほつれ》を打ち込み、マナをフルタップさせた後に、《誘惑蒔き》をキャストし、渡辺の《誘惑蒔き》を奪う。

    これで、地上クリーチャー2体だったクロックが、飛行クリーチャー2体になったわけだ。ここでも渡辺もキチリと対応策を用意している。

    《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》をキャスト。山本の《誘惑蒔き》を手札に戻す。これで、対応完了。渡辺のボードの方が誰が見ても有利な場となった。

    渡辺と調整を続けた長島の解説には続きがある。

    長島 「《大いなるガルガドン》が厳しいです。《一瞬の瞬き》とトントンってところです」

    ここで山本のライブラリーのトップが《大いなるガルガドン》。そして、同じカードとは思えないほど強化された《誘惑蒔き》。

    渡辺は冷静に《一瞬の瞬き》で《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》の能力を使い回し《誘惑蒔き》を手札に戻す。手札が7枚を超えてしまった山本は《フェアリーの忌み者/Faerie Macabre》の能力を起動して、墓地の《一瞬の瞬き》をゲームから除外する。

    そして、続くターンに改めて《誘惑蒔き》をキャストする。ついに対応策の尽きた渡辺。哀れ渡辺の《誘惑蒔き》は山本の傘下に。

    渡辺は《誘惑蒔き》をキャストするものの《大いなるガルガドン》環境下ではこのパワーカードも本来の力を発揮できない。渡辺は山本がオーナーの《誘惑蒔き》をターゲットに指定するが、山本は当然のように2体の《誘惑蒔き》をサクリファイスする。

    これで、山本のもとに《難問の鎮め屋》が戻ってきたことになる。

    この「すべての呪文が実質カウンターされない」状態で、山本は《目覚ましヒバリ》をキャストする。《大いなるガルガドン》環境下のヒバリは一騎当千なんてレベルではない強さだ。

    渡辺の場には《熟考漂い》《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》《誘惑蒔き》と航空戦線が並んでいるため、《目覚ましヒバリ》による攻撃に対しては時間を稼げるのだが、そんなことは許さないとばかりに《雲打ち/Cloudthresher》ですべてをなぎ払う。

    起死回生に《目覚ましヒバリ》を想起する渡辺に山本が提示したカードは《フェアリーの忌み者》。

    渡辺 1-1 山本

    渡辺はThe Finals2006で「ブレイク候補筆頭」として名前を挙げられ、その期待に応える形で決勝に進出した。しかし、そこでの渡辺の役割は、森の日本選手権との同年連覇という大きな物語の中で演じられたものであった。

    そして、渡辺はそれ以外に日本選手権という物語に大きく関わってきていない。

    Game 3

    先手の渡辺が今度は《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を2ターン目に待機する展開。そして、3ターン目には果敢に《変わり谷》でアタックする。

    一方の山本は、3ターン目にドローして...ドローして硬直する。

    渡辺 「ま、まさかの...」

    山本 「そのまさかの...」

    山本、痛恨の土地ストップ。続くターンになんとか土地を引き込み《連合の秘宝》をキャストするが、これは待機のあけた《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》にバウンスされてしまう。

    続いて《目覚ましヒバリ》をキャストした渡辺の増加したクロックに対抗するために山本がキャストしたスペルは《フェアリーの忌み者》。

    山本 「生き残るためには仕方ない」

    この《フェアリーの忌み者》が《誘惑蒔き》されると、山本は、3ターン目と同じ表情をした。

    渡辺 2-1 山本

    山本がその表情のまま土地を片付けるのとほぼ時を同じくして、隣のテーブルで行われている高桑 祥広(神奈川)と三原のマッチが終了し、高桑が勝利した。

    2003年から2005年までの日本選手権で連続してトップ8に入賞したものの、準々決勝で敗れ続けた三原。

    そして、この2008年日本選手権という物語の中でも、三原は同じ役割を演じることとなった。

    山本と渡辺にはどのような役割が用意されているのだろうか。

    Game 4

    後手の渡辺が2ターン目に《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を待機。一方の渡辺は鮮烈土地を2枚並べた上で、3ターン目に《難問の鎮め屋》をキャストする。

    そして《根の壁》を追加する山本だったが、そんな山本の前に渡辺がキャストしたスペルは《誘惑蒔き》。山本は《ルーンのほつれ》で渡辺の土地をフルタップさせるが、貴重なマナソースである《根の壁》を奪われてしまう。

    山本は《造物の学者、ヴェンセール》で《根の壁》を手札に戻すのだが、大きくテンポが失われている感があるのは否めない。

    そして、それを助長するように、渡辺の待機があけた《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》が山本の鮮烈土地を手札に戻す。

    大量のマナアーティファクトで、そのマナ差の優位をより広げている渡辺は《熟考漂い》をさらに盤面に追加する。

    渡辺 3-1 山本

    山本の《根の壁》が《造物の学者、ヴェンセール》で手札に戻され《変わり谷》のダメージでちょうど山本のライフが無くなることを察すると、山本は「がんばってください」と手を差し出した。

    ここで、この日本選手権における山本の物語は終了する。

    日本選手権という壮大な物語のバトンが、山本から渡辺に渡された。こうして多くのプレイヤーがバトンを渡しあった結果として、ひとつの壮大な物語が紡がれる。

    渡辺の準決勝の対戦相手は、2005年日本代表の大礒。

    渡辺には、日本代表経験者との二連戦という物語が、まず用意される。



     
  • Quarterfinals : 仙波恒太郎(千葉) vs. 栗原伸豪(東京)
    by Takeshi Miyasaka
  • 両雄、かたく握手!
    長かった日本選手権も最終日、残すところはプレイオフだけとなった。金曜日の朝に 156 人いた今年の参加選手たちも、日曜日の今日はわずかに 8 人が名を連ねるのみ。この 8 人のなかから、今年の日本代表メンバーと、新しい日本王者が誕生することになる。

    今年の日本選手権をキャッチフレーズで振り返るとすれば「社会人の台頭」と言えるだろう。最終日まで駒を進めた選手のうち、社会人は実に 5 人だ。過去の日本選手権を振り返ってみると、今年との違いはこのあたりに落ち着く。

    学生時代とはがらりと変わってしまった仕事中心の生活のなかで、いかにトーナメントマジックを楽しみ、参加し、勝つか。各個々人で接し方はそれぞれではあるが、やり方次第で、仕事とマジックを両立することができることを、彼らの存在が証明してくれている。

    このテーブルに着いた二人は、どちらもその社会人プレイヤーだ。

    栗原 伸豪は、この春まで世界を駆け巡るプロプレイヤーだった。プロプレイヤーとしては最高ランクである世界に 10 人といないレベル 8 プロプレイヤーであり、このプロレベルによって、この日本選手権に参加した。

    グランプリやプロツアーに参加するだけで参加褒賞をもらえるというすばらしい待遇を持って迎えられるレベル 8 プレイヤーである栗原だが、2月 に開催されたプロツアークアラルンプールを最後にプロツアーへ参戦できていないという。この春から会社員としての新生活が始まったばかりの栗原にとって、プロツアーへ参戦すること、それ自体が難しいのだという。ハリウッドは参加するつもりで航空券まで手配していたものの、仕事との兼ね合いがつかなくなり急遽キャンセルすることになってしまった。

    栗原 「残りの二つ(ベルリンと世界選手権)は、なんとか参加できそうですけどね」

    それでも仕事に兼ね合いをつけて、なんとかプロツアーに参戦したい。一度世界の頂点で戦うマジックの楽しさ知ってしまった栗原にとっては、これからもずっとついて回る命題かもしれない。
    栗原は、カウンタースワンを武器に携え、世界選手権を見据えて戦いに挑む。願わくば、日本代表として、メンフィスへ。

    千葉より、直前予選から駆け上がった仙波 恒太郎
    対する仙波 恒太郎は、地元千葉ではコンスタントに勝ち星を納めているローカルヒーローで、最後の千葉チャンピオンもある。しかし、プレミアイベントで特筆するような実績を残していない彼は、全国的には無名の存在だった。

    そもそも、日本選手権に参加すること自体が初めてなのだ。とにかく仕事が忙しいそうで、夏に開催が予定されている本戦に出ることができないため、最初から予選参加を回避してきた。今年も日本選手権予選が開催されている横で開催されていた地元のトーナメントに参加していた。

    そんな仙波だが、ここ一月とにかく勝ちまくっている、という。ノっている、という。「こんなに勝っているんだから、もっと大会に出たいんだけどなあ」と一週間前に思ったそうだ。それまで日本選手権に興味がなかった仙波だから本戦の日程は知らなかった。もちろん、前日予選の日程も。

    ついうっかり、前日予選に参加した仙波は、いま準々決勝の席に着いている。
    こんなに勝てると思っていなかったから、金曜夜は事前に予定が入っていたカラオケオールに参加して、そのまま土曜日も戦ったという。「100ドルもらえたらラッキー」という気楽な気持ちが、勝利につながったのかもしれない。

    マジックもカラオケも趣味の一つ。そんなアマチュアプレイヤーが、オール仲間の飯塚俊(千葉)がデザインしたフェアリーを武器に、いまレベル 8 プロプレイヤーと対峙する。

    ともに仕事が忙しい社会人。思うようにマジックに時間を割けない生活ではあるが、それでもあこがれる日本代表の、日本王者の座を目指し、いま最初の関門に二人が挑む。

    Game 1

    仙波シングル、栗原ダブルと、両者テイクマリガンから始まった第 1 ゲーム。

    先攻の仙波は《人里離れた谷間/Secluded Glen》をタップインスタート。栗原は《冠雪の島/Snow-Covered Island》から《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機。仙波も 2 ターン目には《苦花/Bitterblossom》を展開するという、両者マリガンしているとは思えないロケットスタートだ。

    互いに順調に毎ターンセットランドしながらドローゴー。仙波の《苦花》がフェアリートークンを産み出し、栗原の《祖先の幻視》は、待機が明けるそのときを、いまかいまかと待ち受ける。

    ダブルマリガンで台所事情が厳しい栗原とは対照的に、仙波はさらなる《苦花》をプレイする。2 枚の《苦花》が量産する 2 体ずつのフェアリーは、盤面に強烈なプレッシャーを与える。殴られる栗原にも、ライフを失う仙波にも。

    栗原が待機の明けた《祖先の幻視》をプレイすると、待ってましたと《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》をプレイする仙波。しかし、栗原が初めて手札からプレイした呪文は《謎めいた命令/Cryptic Command》。フルタップとなるものの、《祖先の幻視》と《謎めいた命令》通常ドローとあわせて、5 枚のあらたなカードを入手したする。もはや、ダブルマリガンで失ったアドバンテージは、十分取り戻している。

    《祖先の幻視》を巡る戦いに敗れた仙波だが、すでに設置している《苦花》による優位は、まだ揺らいでいない。ドローセットランドアタックゴー。毎ターン 2 体ずつ量産されるフェアリーによるアタックで、栗原へとプレッシャーをかける。栗原のライフは、19、18、16、12 と指数的に減っていく。このまま増え続けるフェアリーたちを放っておいては、栗原に未来はない。

    仙波のアップキープ、フェアリーがさらに 2 体追加されてトークンは 8 体に。栗原のライフはもう 12 となっており、次のターンには死ぬ計算だ。対する仙波のライフもすでに 12 である。攻めるならここしかないという、両者ともそう感じていたであろう。

    栗原は《硫黄破/Sulfurous Blast》をプレイ。赤マナが出る土地が《シヴの浅瀬/Shivan Reef》 2 枚のみで残りライフは 10。2 マナを残して仙波の反応を見る。
    仙波はフェアリーのうち 1 体を《ペンデルヘイヴン/Pendelhaven》で +1/+2 して《硫黄破》から救う。《硫黄破》が解決され、残りの 7 体が墓地へ。両者のライフは栗原 8 に仙波 10。生き残ったフェアリーのアタックを受けた栗原のライフは 6 となった。

    仙波のエンド宣言に対し、栗原もドローゴー。

    仙波のアップキープ、2 体のフェアリーが量産され、仙波の残りライフは 8。先の嵐を生き延びたフェアリー 1 体がアタックして、栗原のライフは 5 へ。

    仙波のターン終了時に栗原が動く。まずは《火葬/Incinerate》をプレイヤーへ。栗原は《シヴの浅瀬》によりダメージを受けて残りライフは 4。仙波はカウンターせず、仙波のライフは 5。ひりひりとした、心地よい緊張感がフィールドにいる二人のプレイヤーを包む込む。

    さらに、《火葬》をもう 1 枚。
    ふたたび《シヴの浅瀬》からダメージを受けた栗原のライフは 3 だ。

    仙波のアンタップしている土地は 6 枚、手札は 4 枚だ。
    《火葬》に対応して《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をプレイし、《苦花》を 1 枚覇権してゲームから取り除く。これで次のアップキープに失うライフは 1 点となり、栗原がなにも持っていなければ仙波のアタックで仙波に勝利がもたらされる、ハズだ。
    2 枚目の《火葬》が解決され、仙波のライフは 2 となった。

    栗原のターン。

    《シヴの浅瀬》からダメージを受けながら、《雪崩し/Skred》を《霧縛りの徒党》へとプレイする。栗原の残りライフは 2、《霧縛りの徒党》へ与えるダメージは 2 点だ。

    カウンターは、ない。

    さらにもう《雪崩し》を《霧縛りの徒党》へ。

    栗原が傷を流しながら倒した《霧縛りの徒党》は墓地へと送られ、仙波の場には、2 枚の《苦花》が残った。

    仙波恒太郎 0-1 栗原伸豪

    社会人になってからも第一線にとどまる栗原 伸豪
    Game 2

    後手の栗原が《祖先の幻視》を待機すれば、仙波も負けじと 2 ターン目に《苦花》をプレイする立ち上がり。先ほどと違って、2 枚目の《祖先の幻視》を待機できた栗原だったが、代わりに 3 枚目の土地を置くことができなかった。

    かたや仙波は 4 マナに到達し、2 枚目の《苦花》をプレイする。栗原は目の前にある 2 枚の《苦花》を恨めしそうに眺めながら、3 枚目の《祖先の幻視》を待機してターンを終える。いまだ土地は 2 枚なり。

    最初の《祖先の幻視》が待機明けする前に、栗原の《冠雪の島》を《謎めいた命令》でバウンスしつつドローする仙波。栗原は最初の《祖先の幻視》をプレイするが、いまだ 2 マナのまま、だ。

    その間に、2 体、また 2 体と量産されていくフェアリー。

    フェアリー量産工場を前にしては、3 枚目の《祖先の幻視》をプレイすることはできなかった。

    仙波恒太郎 1-1 栗原伸豪

    栗原 「《苦花》やめてもらえませんかね」
    仙波 「《祖先の幻視》やめてもらえません?」

    お互いにシャッフルしながらそんな軽口を叩いている。2 ゲームの間にプレイされた《苦花》は 4 枚、かたや待機された《祖先の幻視》は 5 枚だ。

    《苦花》がプレイできるフェアリーは強いという。
    《苦花》自信が、フェアリーのフェアリーたるゆえんだという。

    Game 3

    共に《祖先の幻視》を待機する立ち上がり。本当に栗原は《祖先の幻視》に愛されている、これで栗原が待機した《祖先の幻視》は、実に 6 枚だ。
    しばしドローゴー、のちに斬りかかる。《思考囲い/Thoughtseize》をプレイする仙波。

    《火葬》
    《火葬》
    《霊魂放逐/Remove Soul
    《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll
    《シヴの浅瀬》

    という手札が公開され、仙波は《霊魂放逐》を選ぶ。

    手札が透けてしまった栗原は返す刀で《ブリン・アーゴルの白鳥》をプレイするが、これは仙波の《霊魂放逐》によって落とされる。

    カウンターが打てない栗原は、カウンターによって行動を阻害されている。さらに仙波は、《人里離れた谷間》をアンタップして《呪文づまりのスプライト》を公開する。まだあるんだよ、といわんばかりに。

    仙波が公開した《呪文づまりのスプライト》は、続くターンに栗原の《祖先の幻視》へと向けられる。栗原は《謎めいた命令》でカウンターしつつドローするが、さらに仙波がプレイした《呪文づまりのスプライト》がによって、《祖先の幻視》による 3 枚のドローは許されない。タップアウトした栗原を前に、仙波は自身の《祖先の幻視》によって、手札を充実させる。

    カウンター合戦を制したあとは、フェアリーによるビートを。《呪文づまりのスプライト》は《ペンデルヘイヴン》のバックアップを受けて地味に、だが確実に栗原のライフを削っていく。仙波はさらなる《祖先の幻視》を待機して、次の攻防へ備える。

    機は熟し、仙波が仕掛ける。まずは《思考囲い》で安全確認。対応して栗原は《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》をプレイするが《霊魂放逐》でカウンター。

    《火葬》
    《火葬》
    《ルーンのほつれ/Rune Snag

    という手札から、またもカウンターを捨てさせて、満を持してプレイする《苦花》。

    仙波が勝利に近づくには、《祖先の幻視》によって充実させた手札で《苦花》を守りきるだけでよかった。

    栗原には、カウンターをかいくぐって仙波を倒すだけの火力はもはや残されていなかったのだから。

    仙波恒太郎 2-1 栗原伸豪

    Game 4

    ついに《祖先の幻視》の待機ができなかった栗原に対して、お株を奪うかのように《祖先の幻視》を待機してスタートする仙波。

    しかし、栗原は別のカードに愛されていた。
    3 ターン目、フルタップで栗原が叩きつけたカードは《放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer》。仙波はだまって OK のサインを出し、返す刀で《思考囲い》をプレイして、栗原の手札を確認する。

    《放蕩魔術師》
    《放蕩魔術師》
    《霊魂放逐》
    《火葬》
    《火葬》

    なんという《放蕩魔術師》無双。
    1 枚は捨てさせることができた《放蕩魔術師》だが、すぐさま 2 体目の《放蕩魔術師》が栗原によって命を吹き込まれる。2体の《放蕩魔術師》砲台を前にしては死が見える仙波は、片方を《恐怖/Terror》した。

    仙波が《祖先の幻視》でカードを手に入れるころ、ようやく《祖先の幻視》を手にした栗原も、自らの未来へ投資する。仙波は《変わり谷/Mutavault》で、栗原は《放蕩魔術師》でライフを削りあうダメージレースが展開される。気が遠い、だがいつかケリがつくダメージレース。

    栗原の《祖先の幻視》がプレイされる前に、仙波は《人里離れた谷間》で《呪文づまりのスプライト》を公開してから、《苦花》をプレイする。だが、《放蕩魔術師》を前にしては、満足な仕事ができない。

    《祖先の幻視》を巡るカウンター合戦は、《呪文づまりのスプライト》を《霊魂放逐》した栗原に軍配が上がる。栗原も手札を充実し、つけられたアドバンテージを取り戻す。
    《変わり谷》によるアタックで、栗原のライフは 10 まで減らされていたが、《祖先の幻視》によって《変わり谷》がもたらされ、地味な殴り合いには終止符が打たれた。いつしか栗原の《放蕩魔術師》は仙波のフェアリートークンへ向けられている。

    さらなるプレッシャーをかけるべく、栗原は仙波のターン終了時に《ザルファーの魔道士、テフェリー》をプレイするが、これは《霊魂放逐》でその存在を許さない。仙波の場にはなお潤沢な 8 枚のアンタップした土地が残されている。
    栗原はさらに自分のメインで《ブリン・アーゴルの白鳥》をプレイするが、これも《霊魂放逐》。しかたなく《冠雪の山/Snow-Covered Mountain》と《変わり谷》を立ててターンを終了する栗原。

    ここが攻め時とみた仙波。

    《変わり谷》と《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》 2 枚をクリーチャー化してレッドゾーンへ送り込む。1 体の《フェアリーの集会場》は《放蕩魔術師》されるが、残りの 2 体が通って栗原のライフは 5 へ。
    ターン終了時に、残した 2 マナでずっと手札に抱えていた《火葬》をプレイヤーへプレイする栗原。これが通れば仙波のライフは 7 となるのだが、そこに突き刺さる《瞬間凍結/Flashfreeze》。

    自分のメインフェーズ。「ハンドは 2 枚?」と手札の枚数を確認し、あらためて《ブリン・アーゴルの白鳥》をプレイする栗原。仙波の手札にもはやカウンターはないのか、ようやく《ブリン・アーゴルの白鳥》が登場し、栗原はターンを終了する。

    お互いの残りライフは 仙波 9、栗原 は 5 だ。

    仙波は《フェアリーの集会場》と《変わり谷》をクリーチャー化し、フェアリートークンとともにレッドゾーンへ。《フェアリーの集会場》は《放蕩魔術師》の砲撃を受け、《変わり谷》は《変わり谷》と相打ちになり、フェアリーが本体へ届き、栗原のライフは 4 となる。
    《祖先の幻視》を待機してエンドする仙波。

    栗原は、ブロッカーとして残っていたフェアリートークンを《放蕩魔術師》で落とし、《ブリン・アーゴルの白鳥》をレッドゾーンへ送り込む。仙波のライフもまた危険域へ、残ライフは 5 だ。

    そしてまだ、栗原の手札には《火葬》があることがわかっている。もちろん、栗原はこれをプレイする。仙波は必死に《瞬間凍結》するが、《謎めいた命令》でカウンターとドロー。しかし、仙波もさらなる《瞬間凍結》で《火葬》をカウンターする。

    しかし、仙波の抵抗もそこまでだった。

    仙波のターン終了時に、栗原が呼び出したのは、現代の青い悪魔。
    《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》。

    仙波恒太郎 2-2 栗原伸豪

    Game 5

    互いに互いを裁き、いなし、好ゲームが展開された仙波と栗原の対戦も、両者譲らぬままついに迎えた最終ゲーム。泣いても笑っても、このゲームの勝者が準決勝へと進み、敗者の日本選手権は、このゲームで終わる。勝利の女神はどちらにほほえむのか。

    オープニングハンドをマリガンする仙波。隣のテーブルでは、すでにゲームが終了しているようで、高橋優太(東京)が「オレ《苦花》をプレイしてないよ!」とぼやいていた。

    栗原 「ぜひ、こっちも」
    仙波 「まさに、それが理由でマリガンしたんです」
    栗原 「いやキープするっしょ」
    仙波 「ゆとってたら勝てないし! 日本選手権だよ?」

    ゆとりハンドはキープできない。このゲームですべてが決まる。そんな仙波の思いにデッキは答えず、仙波はダブルマリガンでゲームを始めることになった。

    はたして仙波の 2 ターン目に《苦花》はなく。
    栗原は 2 ターン目に《祖先の幻視》を待機する。

    ダブルマリガンだが、土地はセットできている仙波は《思考囲い》で栗原の手札を確認する。

    《霊魂放逐》
    《ルーンのほつれ》
    《火葬》
    《硫黄破》
    《放蕩魔術師》
    《ブリン・アーゴルの白鳥》

    というたいへんカロリーが高い手札のなかから、《ルーンのほつれ》を捨てさせる。栗原の手札に土地はなく、栗原はそのまま土地が 2 枚でストップする。

    待機が明けた《祖先の幻視》を《謎めいた命令》でカウンターしたい仙波だが、これには栗原が引いてきていた《ルーンのほつれ》が突き刺さる。カロリーが高い手札に、さらに追加されるあらたな手札。仙波としては踏んだり蹴ったりだ。
    手札があふれた栗原は、《火葬》と《硫黄破》を捨てた。

    火力を捨てる栗原の手札を確認すべく、またも《思考囲い》する仙波。

    《変わり谷》
    《紅蓮地獄/Pyroclasm
    《突撃の地鳴り/Seismic Assault
    《霊魂放逐》
    《謎めいた命令》
    《ブリン・アーゴルの白鳥》
    《放蕩魔術師》

    公開された 7 枚を確認してしばし考え込んでから、トークンを封殺される《放蕩魔術師》を選んだ仙波。

    《変わり谷》をプレイしてドローゴーする栗原。焦ることはない。マナを伸ばして、ゆっくりと、じっくりと攻めればいい。栗原は《変わり谷》で殴る。ライブラリのトップからカードをプレイする。まずは《冠雪の島》を、ついで《祖先の幻視》を。
    さらに《突撃の地鳴り》をもプレイする栗原だったが、これは《瞬間凍結》でカウンターする仙波。

    やられてばかりではいられない。仙波もようやく《祖先の幻視》を待機するが、栗原は《ブリン・アーゴルの白鳥》でゆっくりとした時間の流れを許さない。
    ガンとなりそうな《ブリン・アーゴルの白鳥》を《恐怖》する仙波。対応して栗原は《ブリン・アーゴルの白鳥》へ《火葬》をプレイするが、これは《瞬間凍結》してカードは与えない。

    栗原には、次のターンに待機があける《祖先の幻視》があり、仙波のそれは、あと 2 ターン後である。

    ダブルマリガンのフェアリー使いはスワン使いの《祖先の幻視》がプレイされることを許し、スワン使いこれによってあらたな《白鳥》を自軍の陣容に加える。

    そしてフェアリー使いの《祖先の幻視》を巡るカウンター合戦が繰り広げられる。
    栗原が《謎めいた命令》でカウンターとドローを選べば、仙波も《命令》をを同じモードで。
    栗原はさらに《謎めいた命令》を同じモードで打てば、仙波はさらなる《謎めいた命令》で、カウンターしつつ《ブリン・アーゴルの白鳥》をバウンスする。

    かくしてカウンター合戦に勝利した仙波は、あらたなカードを手に入れたのだが、代償としてすべての土地をがタップされてしまう。
    かたや栗原は、戻された《ブリン・アーゴルの白鳥》をプレイして、すぐさま《紅蓮地獄》でカードを 2 枚補充する。

    仙波は《祖先の幻視》によって入手した 2 枚の《祖先の幻視》を待機する。が、はたしてこの《祖先の幻視》は待機をあけることができるのだろうか。

    そんな時間は与えないとばかりに、《放蕩魔術師》をプレイする栗原。仙波は《フェアリーの集会場》と《変わり谷》をそれぞれクリーチャー化したうえで、《呪文づまりのスプライト》をプレイして《放蕩魔術師》へ備える。
    しかし、《呪文づまりのスプライト》が場に出たところで突き刺さる《硫黄破》! クリーチャー化した土地と《呪文づまりのスプライト》を墓地へと送り込み、両者に 3 点のダメージを与えたうえに、3 枚のカードを手にする栗原。そして、《放蕩魔術師》が場に登場する。

    ブロッカーが一掃されたあとで、仙波に殴りかかる《ブリン・アーゴルの白鳥》。この攻防によって仙波のライフは 5 となった。

    さらに、栗原は《ザルファーの魔道士、テフェリー》をプレイしてたたみかける。仙波が一縷の望みをかけてプレイした《霧縛りの徒党》すらも、《白鳥》によってもたらされた《霊魂放逐》が奪い去っていった。

    栗原が、日本王者を目指して、まずは最初の試練を乗り超えた。

    仙波恒太郎 2-3 栗原伸豪

    Final Results: 栗原 伸豪、準決勝進出!



     
  • 3位決定戦 : 渡辺 雄也(神奈川) vs. 栗原 伸豪(東京)
    by Atsushi Ito
  • 渡辺 雄也、日本代表を賭けて最後の戦いへ
    大礒との青白《目覚ましヒバリ/Reveillark》対決を、制することができなかった渡辺。

    熱戦の末、高桑に紙一重で敗れた栗原。

    惜しくも決勝戦に駒を進めることができなかった2名には、最後の戦いが待っている。

    2008年の世界選手権メンフィス大会にて行われる国別対抗戦に、『日本代表チーム』の一員として参加できるか否か。

    3位なら正式メンバーであるが、4位なら補欠メンバー。この差が果てしなく大きい。天国と地獄、まさに雲泥の差である。

    何故かというと、国別対抗戦の上位入賞チームには独自にプロポイントが与えられるのである。

    プロプレイヤークラブ制度が導入されて以来初の、そして突然の基準変更。

    MAXレベル6からレベル8に細分化され再編成されたその変革により、プロポイント1点の価値は跳ね上がった。

    RoY(新人王)を取った昨年に比して、思ったほどの活躍ができていない渡辺。

    社会人になって、グランプリはもちろんのこと、全てのプロツアーを当然のように巡れるというわけにはいかなくなった栗原。

    二人が少しでも高いプロレベルで来年もマジックをするためには、日本代表チームへの参加は絶対条件である。

    青白《ヒバリ》対カウンター《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》バーン。

    もう一つの決勝戦が今、始まる。

    Game 1

    先攻は栗原。淡々と土地を置く栗原を尻目に2ターン目に《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》を待機した渡辺、3ターン目には《精神石/Mind Stone》を置こうとするが、これは栗原に《ルーンのほつれ/Rune Snag》される。

    だが4ターン目、土地3枚の初手で始めたはずの栗原のセットランドが止まってしまう。この隙にと渡辺は《精神石》→《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》とマナを伸ばす。次のターンにも栗原は土地を引けず、渡辺の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》の待機明けにも抵抗することができない。3枚しかない土地が2枚まで逆戻りする。栗原は戻された3枚目の土地を置いてターンエンド。

    渡辺は《思案/Ponder》でライブラリを掘り進め、今度は栗原のアップキープに《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》をプレイしてマナを縛る。しかし栗原もここで《紅蓮地獄/Pyroclasm》をプレイしてクロックを一掃。だが渡辺はここで《目覚ましヒバリ/Reveillark》を着地させる。

    栗原は《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機させるが、渡辺はさらに《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を召喚して徹底的に栗原の動きを阻害する構え。栗原はこれを《ルーンのほつれ》するしかない。

    だが栗原が待望の4枚目の土地を引き当てると、《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》を召喚。渡辺は《目覚ましヒバリ》で果敢にアタック後、2体目の《目覚ましヒバリ》を想起で召喚し、2体の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》を場に戻して《白鳥》と土地をバウンス。栗原はここで《火葬/Incinerate》でヒバリを処理した後、戻ってきた《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》もろとも2枚目の《紅蓮地獄/Pyroclasm》!これでしのいだか・・・

    と、思いきや渡辺は3枚目の《目覚ましヒバリ/Reveillark》をプレイし、栗原は仕方なく4枚目の土地を置いて《白鳥》を再召喚してターンを返す。渡辺は《造物の学者、ヴェンセール》をプレイして《変わり谷/Mutavault》とヒバリでアタックし、栗原のライフはわずか4。

    ここでようやく栗原の《祖先の幻視/Ancestral Vision》の待機が明けるが、土地を戻され続けた結果のわずか5マナでは《ヒバリ》を止めつつ《ヴェンセール》と《変わり谷》のアタックをしのぐことができない。ここで栗原は《謎めいた命令/Cryptic Command》をオールタップ+ドローでプレイし急場を凌ぐ。

    渡辺は《雪崩し/Skred》をケアして《変わり谷》は殴らず、6マナから《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》2体を戦線に追加。栗原は6枚目の土地を置いてターンを返すのみ。《台所》《台所》《ヴェンセール》《ヒバリ》という渡辺の布陣に対し、栗原は再度《謎めいた命令/Cryptic Command》オールタップ1ドロー。

    このままではジリ貧の栗原は、しかし7マナ目を置くと三たびターンエンド。渡辺のアタック宣言・・・を今度はスルーして4体アタックにきたところで《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》をプレイ。渡辺はこれに対し《精神石/Mind Stone》をドローに変換した後、《テフェリー》を通す。

    栗原はこの戦闘を生き残るため、残りの2マナで《雪崩し/Skred》を2発、《ヒバリ》と《台所》に撃つものの、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》2体が墓地から戻ってきて根本的な解決にはならない。ついにライフ2となって《硫黄破/Sulfurous Blast》すら撃てない盤面に。3枚目の《紅蓮地獄/Pyroclasm》なら・・・だが引くことはできずに、栗原は投了。

    渡辺 雄也 1-0 栗原 伸豪

    すでに日本代表入りを決めた大礒(手前)と高桑が、誰が代表チーム最後の一人になるかを見守る
    Game 2

    再び先攻は栗原。渡辺は《精神石/Mind Stone》を置く立ち上がり。だが2枚目の《精神石/Mind Stone》から3枚目の《精神石/Mind Stone》を置く渡辺に栗原も苦笑。だが4枚目の土地を置いてターンエンドの栗原と対照的に、渡辺の場には既に6マナが揃っている。

    渡辺はここから《変わり谷/Mutavault》でアタック後、2マナ残して《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》をプレイすると、これが通る。返しのターン、栗原は《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機し、4マナ立たせてエンドを宣言。

    渡辺はエンド前に《精神石》の1枚をドローに変換すると、自分のターンにまずは《台所の嫌がらせ屋》だけアタックし、続いて2体目の《台所の嫌がらせ屋》。栗原はたまらずこれを《霊魂放逐/Remove Soul》する。

    続くターン、栗原は6枚目の土地を置けずターン終了。8マナ目を置いた渡辺は《熟考漂い/Mulldrifter》を想起する。が、これにスタックで栗原は《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》をプレイ!だがこれを渡辺が《否定の契約/Pact of Negation》すると、余ったマナで渡辺の場に《目覚ましヒバリ/Reveillark》が降臨してしまう。

    ようやく6マナ目を引いた栗原はメインで2枚目の《ザルファーの魔道士、テフェリー》をプレイする。渡辺はアップキープに契約コストを払うと、《変わり谷/Mutavault》2枚を起動し4体アタックで一気に攻勢に出る。栗原は《テフェリー》で《変わり谷》を1体止めて、ライフはわずかに1。

    《シヴの浅瀬/Shivan Reef》からしか赤マナが出ない栗原は、渡辺のアタックに対し《変わり谷》で《変わり谷》、《テフェリー》で《台所》、《白鳥》で《ヒバリ》をブロックし、ライフを守るしかない。

    クロックは失ったが、戻ってきた《熟考漂い》と合わせて6枚ドローした渡辺は、すかさず《ヴェンセール》で《テフェリー》を戻し、《台所の嫌がらせ屋》を追加する。1本目同様に《謎めいた命令/Cryptic Command》オールタップでしのぐしかなくなった栗原は、赤マナを出すたびにダメージを与えてくる《シヴの浅瀬》3枚を恨めしそうに見つめながら、渡辺が《一瞬の瞬き/Momentary Blink》を持っているのを示すとカードを片付け始めた。

    渡辺 雄也 2-0 栗原 伸豪

    Game 3

    奮戦する栗原 伸豪
    三たび先攻は栗原。ここでようやく《祖先の幻視/Ancestral Vision》待機でスタート。渡辺も2ターン目に《冷鉄の心臓/Coldsteel Heart》でしっかりマナを伸ばし、3ターン目は《精神石/Mind Stone》から《熟考漂い/Mulldrifter》を想起といい展開。

    しかし栗原は、1ゲーム同様土地3枚で始めていたはずなのにまたしても4枚目の土地が置けず、待機の明けた《祖先の幻視》への《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》も甘んじて戻されるしかない。仕方なく再び待機してエンドする。

    渡辺は2マナ立たせて《熟考漂い/Mulldrifter》をプレイし、《ヴェンセール》をレッドゾーンへ。追加の精神石は打ちどころがないと判断したのか、《ルーンのほつれ/Rune Snag》される。まだ土地が引けない栗原は《一瞬の瞬き/Momentary Blink》されると勝ち目がない《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》をメインで《雪崩し/Skred》。

    渡辺はさらなる《熟考漂い》をプレイし、これには栗原も《霊魂放逐/Remove Soul》をあわせるが、ここで渡辺の《否定の契約/Pact of Negation》が突き刺さる。2ドロー後《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を戦線に追加して、渡辺の場には《変わり谷/Mutavault》含めて9点クロックが用意されたことになり、栗原にプレッシャーをかける。

    7ターン目を迎えて、そんなこととは関係なしに栗原はまだ土地が引けず、渡辺の3体アタックに対しては《台所の嫌がらせ屋》への《雪崩し/Skred》でしのぐしかない。渡辺は《熟考漂い/Mulldrifter》でドローを掘り進める。

    もう8ターン目にもなってそれでも土地が引けない栗原は、渡辺の《変わり谷》含めた4体アタックも3枚目の《雪崩し》で6点をスルーするしかない。

    再び待機が明けた《祖先の幻視/Ancestral Vision》はやはり再び《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》され、ようやく4枚目の土地にアクセスできた栗原は、やむなく《誘惑蒔き/Sower of Temptation》をプレイするが、渡辺はしっかり《一瞬の瞬き/Momentary Blink》を抱えていたのだった。

    渡辺 雄也 3-0 栗原 伸豪

    Final Results: 渡辺 雄也、日本代表チーム入り!



     
  • PTQ Report : プロツアーベルリン予選 in 大桟橋ホール
    by Keita Mori
  • プロツアーベルリン予選上位2名、浅原 晃(右)と青木 良輔。
    日本選手権サイドイベントとして開催されたプロツアーベルリン予選。ローウィン+シャドウムーア・ブロック構築によって行われたその決勝戦は、青木 良輔と浅原 晃によるフェアリー対決となった。

    いざ決勝戦、ベルリン行きの航空券を手にするのは果たして...?

    浅原 「...よし、日本のために投了します」

    ...?

    青木 「......!!??」

    浅原 「副賞の航空券のために予選に出ていましたが、青木さんは参加権そのものをお持ちではなかったので、譲ることにしました。日本のためです(キッパリ)」

    青木 「あ...ありがとうございます」

    かくて、プロツアーベルリン予選の勝者に輝いたのは青木 良輔! おめでとう!!

    Aoki Ryosuke
    PTQ Berlin - Top 8 *qualified*

    Kawakami Hroshi
    PTQ Berlin - Top 8

    Yukuhiro Ken
    PTQ Berlin - Top 8



     
  • Semifinals : 渡辺 雄也(神奈川) vs. 大礒 正嗣(長野)
    by Daisuke Kawasaki
  • 2007年度新人王(RoY)、渡辺 雄也
    物語を紡ぐ事とデュエルをする事は同じだ。

    人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐとすれば、デュエルをする事も物語を紡ぐ事と同意といっても大げさではないだろう。

    すべてのテーブルに物語があるといっても過言ではなく、すべてのプレイヤーが自分自身の物語を背景にデュエルを行っている。

    渡辺 雄也(神奈川)の話をしよう。

    渡辺が本格的に日本のトーナメントシーンで認識されたのは2006年のThe Finalsであったことはすでにのべたと思う。

    しかし、これはあくまでもプレミアイベントに限った話である。

    渡辺が「ブレイク候補筆頭」として名前を挙げられていたのには十分で当然の理由があった。

    神奈川にPWCと呼ばれる大会がある。ほぼ毎週のように開かれ、そして、多くのプレイヤーを集めている、関東の主要イベントのひとつである。

    そして、渡辺はそこで圧倒的な強さを誇り、50回大会を記念して集計された過去の累計マッチポイントのトップであったことから「ミスターPWC」と呼ばれるようになった。

    この実績によって渡辺の名は関東圏のプレイヤーには広く知られるようになり、The Finalsでも多くのプレイヤーに指名されたというわけだ。

    さて、昨年、その「ミスターPWC」のタイトルをかけてPWC Finalsという大会が開催された。

    清水 直樹の誘いでこの大会を取材させていただくことになった筆者は、実は渡辺ではなく、むしろ有留 知広の強さに驚かされ、おそらく有留が渡辺を決勝で打ち倒し、新しく「ミスターPWC」の名前を受け継ぐのではないかと想像していた。

    スイスラウンドと決勝ラウンドにわけて行われたこの大会で、渡辺が精彩を欠いていたように感じられた一方で、有留は強く、そして美しいプレイングを披露していた。

    だが、渡辺は強かった。

    「ミスターPWC」の名前がかかった決勝ラウンドに入るや否や、圧倒的な強さを見せつけた。

    渡辺のマジック人生は、ほぼPWCとともにあるといってもいいだろう。そして、PWCの名前がかかったとき、渡辺はさらに強くなる。

    今年の日本選手権が行われた大さん橋ホール。

    第1回のPWCが行われた会場は、ここから歩いて5分としないところにある。

    世界選手権団体戦で優勝を飾ったこともある大礒 正嗣
    Game 1

    ダイスロールで先手は渡辺。

    後手の大礒は、キチンと1ターン目に《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機する。

    対して渡辺も2ターン目の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》待機で対抗し、3ターン目には《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》をキャストする。

    カウンターの枚数に定評のある大礒のデックではあるが、初手が《祖先の幻視》頼みの手だっただけに、これをカウンターできない。大礒は3ターン目に《熟考漂い》を想起でキャストし、手札の充実をはかる。

    渡辺は、ここで土地が止まってしまう。手札の《熟考漂い》と《台所の嫌がらせ屋》から《台所の嫌がらせ屋》を選択し、攻め側の姿勢を崩さない。やはり、この渡辺のビートを大礒がいかに凌ぐかが勝負の分かれ目になりそうだ。

    大礒は、待機のあける《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を《造物の学者、ヴェンセール》で手札に戻し、これで《台所の嫌がらせ屋》をブロックし、ライフの損失を最低限に抑える。

    またも土地が止まり、とにかく土地のほしい渡辺は《熟考漂い》を想起でキャスト。ここで念願の土地にアクセスできた渡辺だったが、マナがフルタップしてしまう。

    この隙をついての大礒の《目覚ましヒバリ》!のフルタップの隙をついての渡辺の《誘惑蒔き》!の隙をついての大礒の《目覚ましヒバリ》想起からの《造物の学者、ヴェンセール》!といっためまぐるしい攻防が行われた末に、渡辺は2体の《台所の嫌がらせ屋》(-1/-1カウンター付き)と《誘惑蒔き》《目覚ましヒバリ》(オーナーは大礒)をコントロールし、大礒の場には《造物の学者、ヴェンセール》のみという場が完成する。

    しかし、場のクロックでは渡辺が優位だが、マナ発生源では、大礒が7枚に対して渡辺が5枚と、ちょうど《一瞬の瞬き/Momentary Blink》1枚分大礒が優位という形。この優位を活用してなんとか渡辺の攻めを止めたいところ。

    大礒は、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》をキャスト。これに渡辺は《否定の契約》をキャストする。

    大礒が長考した後に、おそるおそるゆっくりと《一瞬の瞬き》をキャストすると、ふたりはものすごいスピードでカードを片付けはじめた。

    大礒 1-0 渡辺

    生きる事と物語を紡ぐことは同じだ。

    人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐとすれば、人が自然に生きることが自然に物語を紡いでいるといっても大げさではないだろう。

    すべての人生に物語があるといっても過言ではない、すべての人間が自分自身の物語を背景に生きている。

    「川崎さん、日曜日にあいましょう」

    川崎とは筆者の名前だが、この言葉は、日曜日にフィーチャリングテーブルでデュエルをする、つまりトップ8に進出するという宣言である。

    金曜日が終了したときに、筆者にこの言葉をかけてきたプレイヤーがふたりいた。

    そのひとりが渡辺であり、もうひとりが高橋 優太(東京)である。

    そして、ふたりはその言葉の通りに、トップ8進出を決めた。おそらく、ふたりが今の自分のマジックに強く自信があるからこそ発することができたセリフなのだろう。

    渡辺がPWCというイベントをはじめとして草の根イベントに参加しまくっているように、高橋もまた、毎週末、いや平日に行われるトーナメントがあれば、それまでも含めて、でられる大会さえあれば、そのすべてにでる覚悟で大会に参加している。

    多くの大会に参加し、その日々が自力となって、そして自身となって結果につながっている。高橋はそうして、静岡・神戸とふたつのグランプリを制覇した。

    しかし、この準決勝のフィーチャリングテーブルに座っているのは高橋ではない。

    高橋を準々決勝で打ち破り、この準決勝の席を獲得したのが、大礒 正嗣(長野)である。

    Game 2

    後手の大礒がマリガン。

    お互いに土地を並べあう展開。

    大礒が2ターン目に《虹色のレンズ/Prismatic Lens》を置いたことで、先手後手が入れ替わった形か。

    4ターン目のターンエンドに渡辺が動き始める。《造物の学者、ヴェンセール》をキャスト。これは大礒が《ルーンのほつれ》。そして、自身のメインに《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》をキャストする。これには大礒は2枚目の《ルーンのほつれ》。

    そして、大礒は《熟考漂い》を想起し、マナを残してターンを終了する。渡辺は《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》をキャスト。大礒はこれをカウンターせず《虹色のレンズ》が手札に戻る。

    大礒が《虹色のレンズ》をキャストし直し《祖先の幻視》を待機している間に、渡辺は《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》でのビートダウンを開始し、ついに攻めてモードに入る。端的に言えば、今後10ターンの間に大礒に対抗策を用意させなければ渡辺の勝ちなのだ。

    だが、というか、やはり、というか渡辺はまたもマナがスクリュー。ここで何とかするために《熟考漂い》を想起でキャストするが、大礒は見透かして《謎めいた命令》でカウンター。

    さらに、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》をキャストし、それを《一瞬の瞬き》で使いまわすことで、渡辺の土地を2枚手札に戻し、マナ差を拡大する。

    ここで大礒がフルタップした隙をついて、渡辺はこのマッチではフェイタルな《エレンドラ谷の大魔導師》の2体目を場に送り出すが、しかし自身もフルタップというフェイタルな状況になる。

    結局、フルタップの隙に大礒は《一瞬の瞬き》をフラッシュバックして《エレンドラ谷の大魔導師》を手札に戻すことを選択する。ここで5マナまでマナをのばすことに成功した渡辺は《エレンドラ谷の大魔導師》をキャストすることを選択しない。

    その理由は明確であった。

    大礒のターン終了時に《ザルファーの魔道士、テフェリー》をキャスト。《祖先の幻視》の待機が次のターンにあけるだけに、この《ザルファーの魔道士、テフェリー》はゲームを決定づける。しかし、大礒も手札に《ザルファーの魔道士、テフェリー》を持っており、スタックして《ザルファーの魔道士、テフェリー》をキャストすることで、対消滅させる。

    渡辺は仕方なく《エレンドラ谷の大魔導師》をキャストするのだが、ここには《ルーンのほつれ》。《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を待機してターンを返す。またも渡辺はフルタップする。

    虚実という言葉があるが、このマッチアップでは、カウンターという虚をみせることよりも、実として、マナでも手札でも場のクロックでも、なにかしらのアドバンテージを確保していくことが必要なのだ。

    大礒は、このフルタップのタイミングで想起の《熟考漂い》を《一瞬の瞬き》するというお馴染みのテクニックで一気に手札を増やし、さらに《祖先の幻視》を待機する。

    渡辺は《誘惑蒔き》。マナでも手札でも負けている以上は、ボードで優位を得るしかない。大礒の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を《霊魂放逐》でカウンターし、自身のターン終了時に大礒がキャストしてきた《造物の学者、ヴェンセール》も《造物の学者、ヴェンセール》で対抗する。

    だが、大礒は《造物の学者、ヴェンセール》をキャストし直し《誘惑蒔き》を手札に返す。渡辺の渾身の《目覚ましヒバリ》を《霊魂放逐》する。

    このまま《祖先の幻視》の待機があけてしまえば、ゲームの主導権は、完全に大礒のものとなる。渡辺の渾身のドローは魂の《思案》。

    ライブラリーのトップは《島》《熟考漂い》《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》。ここから《熟考漂い》を手にいれ、さらにキャストすることで、残りの2枚をも手札に加える。

    大礒のライフは8。

    渡辺はこれで《熟考漂い》《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》と4点分のクロックを手にいれたことになるのだが、大礒の場にもまだ《熟考漂い》がいるので、そうそう容易にゲームを終わらせられるわけでもない。

    そうこうしているうちに、大礒の《祖先の幻視》の待機があける。渡辺はこの大礒の手札が有効に働く前に、残りのライフを削らなければならない。

    渡辺は一度手札に戻されていた《誘惑蒔き》を再びキャストする。コレは大礒の想定の範囲内。大礒はスタックして《ザルファーの魔道士、テフェリー》をキャストする。

    続けて、瞬速での《目覚ましヒバリ》想起。

    これによって、大礒の場には《造物の学者、ヴェンセール》と《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》が墓地から戻り、《誘惑蒔き》を戻すついでに土地を手札に戻す。

    渡辺は再び《誘惑蒔き》をキャストし《ザルファーの魔道士、テフェリー》のコントロールを奪うが、しかし、当然のようにこの《誘惑蒔き》を《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》で手札に戻されてしまい、《ザルファーの魔道士、テフェリー》を取り戻される。

    もう何度目かわからない渡辺の《誘惑蒔き》キャスト。

    これがついに《謎めいた命令》でカウンターされると、ある意味呪縛から解き放たれたかのように渡辺は《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》をキャストする。これで、《熟考漂い》を手札に戻し、何らかの答えを導き出さなければならないのだ。

    しかし、なんの答えも見つからない。

    大礒 2-0 渡辺

    デュエルをする事と生きる事は同じだろうか?

    人が自然に生きることが物語を紡ぎ、デュエルでの人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐとすれば、そこに相似を求めることはできるのだろうか。

    そんな話よりも、もっと単純に、生きる事とデュエルをする事は結びつけられるのではないだろうか。

    大礒 正嗣の話をしよう。

    といっても、もともと日本の、そして世界のスーパースターである大礒だ。いまさら、過去の実績をひもといて、日本代表といえば2005年の代表は世界選手権で...などと思い出話をしても仕方がないだろう。

    なので、最近の大礒 正嗣の話をしよう。

    先月おこなわれたグランプリ・神戸。

    この会場に大礒 正嗣はあらわれた。当然グランプリは土曜日からおこなわれているので、土曜日の朝に、神戸の会場に大礒はあらわれた。

    サイドイベントのドラフトに参加するために。

    大礒の所属都道府県が、よく知られた広島ではなく、長野になっていることに違和感を覚えた読者の方もいるかもしれない。大礒といえば、津村 健志(広島)とならんで、広島勢として広く知られていたのだからそれも当たり前の話だろう。

    しかし、現在、大礒は大学の研究の関係で長野にすんでいる。以前、寮でのマジックという話があったので詳しいかたなら覚えているかもしれない。なんにせよ、大礒は今、マジックから離れた生活を送っている。

    大礒の生活に、マジックの姿が、特に人と向かって行うリミテッドの姿が無くなった。

    だから、大礒は、神戸の会場に現れた。

    ブロック構築のデックも持たずに。

    Game 3

    手の渡辺が2ターン目に《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を待機すると、大礒も負けじと《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を待機する。

    だが、渡辺の2枚目の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》に対しては、大礒も《虹色のレンズ》でしか対抗できない。むしろ、これを《精神石/Mind Stone》で追いかけられる形になってしまう。

    だが、別にこのゲームは意地の張り合いではない。

    大礒は続けて《虹色のレンズ》をキャストすると、渡辺の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を《霊魂放逐》でカウンターし、続けて渡辺がキャストした《エレンドラ谷の大魔導師》を《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》で手札に戻す。

    そして、渡辺のマナが残り少ない隙に《ザルファーの魔道士、テフェリー》をキャストする。コレによって、渡辺の2体目の《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》は永遠にゲーム外から帰ってこれない。

    渡辺は《目覚ましヒバリ》をキャストし、大礒の攻勢を少しでも削ぎたいのだが、大礒も《熟考漂い》を追加し、主導権を渡さない。

    渡辺は、カードをドローし、少し考えると、手で顔を覆った。そして、うつむき加減に土地を4枚タップし《エレンドラ谷の大魔導師》をキャストする。

    大礒からのカウンターは無し。

    渡辺は続くターンに《エレンドラ谷の大魔導師》をアタックし、《熟考漂い》と相打ちさせた上で、《目覚ましヒバリ》の2体目をキャストする。大礒はコレもカウンターしない。

    渡辺は《熟考漂い》を想起でキャストする。これもカウンターされなかったことで、渡辺は手札を充実させるとともに《目覚ましヒバリ》が場を離れたときに回収できる2枚目のカードを墓地に送り込む。

    大礒は、ターンを終了。このターンエンドに渡辺は頬を軽く打ち鳴らす。

    そして、自身のターンに《一瞬の瞬き》を《目覚ましヒバリ》に。溜めに溜めたこの《一瞬の瞬き》だったが、大礒の手札は7枚。

    大礒はまず《造物の学者、ヴェンセール》で《エレンドラ谷の大魔導師》を手札に戻す。そして《一瞬の瞬き》を《謎めいた命令》でカウンター。

    ここで大礒はマナをすべて使い果たしてしまう。6枚の手札もマナがなければなんら意味をなさない。

    この隙をいかに活用するべきか。まずは《目覚ましヒバリ》2体で攻撃し、渡辺は長く、長く考えて、そして《造物の学者、ヴェンセール》をキャストする。

    この《造物の学者、ヴェンセール》は大礒の《造物の学者、ヴェンセール》と対消滅するが、《目覚ましヒバリ》を手札に戻す。そして《熟考漂い》のお供をつれて、再び場にもどり、今度は大礒の《ザルファーの魔道士、テフェリー》を手札に戻す。

    返して、大礒は《目覚ましヒバリ》。これに対して《否定の契約》が打ち消しあう。

    そして、渡辺は2枚目の《否定の契約》でこれを打ち消すことに成功する。

    大礒は、渡辺の《変わり谷》の枚数を数えた。

    大礒 2-1 渡辺

    大きく戻って、物語を紡ぐ事とデュエルをする事は同じだ。

    そして、今、このテーブルで新しい物語が紡がれている。

    カウンターの枚数の違いで、やはりかなり厳しいマッチアップを迫られることとなった渡辺だったが、しかし、意地でというか、1本を取り返した。

    渡辺も、矜持がある。別にこの会場が最初のPWCの会場に近いという事は本当は特に意味の無い話ではある。それは偶然であり、渡辺の意志の介在した話ではない。偶然は物語ではない。

    だが、渡辺がPWCの看板として着ているこの青いTシャツは、渡辺の意志で着ているものだ。

    Game 4

    先手の大礒は、1ターン目に《島》をセットし、2ターン目に《祖先の幻視》を待機する。

    渡辺 「それ、本当にいまひいたの?」

    大礒 「最初から持っていたかもしれませんね」

    対して、渡辺は《冷鉄の心臓》《精神石》とキャストし《変わり谷》で攻撃する。

    土地の並べあいとなるが、そうなると《祖先の幻視》の分大礒が有利。《祖先の幻視》の待機があける前にと《エレンドラ谷の大魔導師》をキャストするが、これは《謎めいた命令》でカウンター。

    続くターンにも渡辺はアグレッシブに《目覚ましヒバリ》をキャストする。この《目覚ましヒバリ》を大礒は《造物の学者、ヴェンセール》するのだが、渡辺は《否定の契約》でカウンターする。

    こうして、なんとか《祖先の幻視》が解決する前に、ボードの優位を作り上げた渡辺。《変わり谷》で攻撃をする。これで大礒のライフは14となり、《変わり谷》を2枚コントロールしている渡辺は、2ターンのクロックを賭けたこととなる。

    大礒は《造物の学者、ヴェンセール》で《目覚ましヒバリ》を手札に戻すことで、このクロックを外すことには成功するが《エレンドラ谷の大魔導師》が場に戻り、今度の行動を大きく制限されることとなる。

    大礒の《造物の学者、ヴェンセール》と《変わり谷》が相打ち、《エレンドラ谷の大魔導師》のアタックで大礒のライフは12。大礒は、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》で《エレンドラ谷の大魔導師》をバウンス。

    これで、一度すべてのクロックがリセットされてしまう。

    渡辺は大礒に《エレンドラ谷の大魔導師》を《霊魂放逐》させた上で、《誘惑蒔き》をキャストし《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を奪い、第2ラウンドを開始する。

    大礒は《熟考漂い》をキャストするものの、かなり追い詰められつつある感はある。《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》のアタックを通してライフは10。そして《目覚ましヒバリ》を《否定の契約》でカウンターする。

    契約のマナを支払った大礒に対して、今度は《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》と《変わり谷》で攻撃。《変わり谷》を《熟考漂い》でブロックして、大礒の残りのライフは8。

    大礒はドローして、考えて、ターン終了。

    渡辺は《誘惑蒔き》《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》で攻撃し、大礒のライフは4。

    渡辺は力強く《変わり谷》をセットする。

    ターンエンドに大礒は《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を《謎めいた命令》で手札に戻す。

    大礒の《熟考漂い》へと《霊魂放逐》を打ち込んだ渡辺だったが《否定の契約》でカウンターされてしまう。

    渡辺が《誘惑蒔き》と《変わり谷》での攻撃を選ばなかったので、大礒は契約のマナを支払い、そして《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》をキャスト《変わり谷》を手札に戻す。

    こうして膠着したまま、延々とドローゴーが続く。お互いのどちらかが決定打を引かなければならないのだ。

    渡辺は、引き込んだ《思案》を強くたたきつける。ライブラリーのトップは3枚の土地。このライブラリーを渡辺はシャッフルし、改めてドロー、それは土地。

    だが、続く渡辺のドローが願ってもいない《熟考漂い》。これをキャストする渡辺だが、《ルーンのほつれ》で2マナ払わされた上で《霊魂放逐》でカウンターされる。

    そして、ここで渡辺の手札が2枚になったことと、残りのマナが5マナになったことで大礒が一気に動き出す。

    まずは、想起で《熟考漂い》。そして、想起で《目覚ましヒバリ》。この《目覚ましヒバリ》は2体の《熟考漂い》となり、大礒に圧倒的なアドバンテージを与える。

    大礒は自身の陣営に《ジェイス・ベレレン》を追加し、手札にさらなる厚みを求める。このターンのエンドを好機かと渡辺は《ザルファーの魔道士、テフェリー》をキャストするのだが《霊魂放逐》。

    手札に《造物の学者、ヴェンセール》をもつ渡辺は一度これをバウンスするか考えたものの、少考の末、カウンターを許す。

    渡辺は《誘惑蒔き》でアタックし《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》にダメージをスタックした後に《造物の学者、ヴェンセール》で手札に戻し、再び《熟考漂い》へと誘惑をまき散らす。

    が、《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》に《熟考漂い》はまたも手札に戻され、大礒は《熟考漂い》《一瞬の瞬き》のコンボで手札を増やし続ける。

    渡辺は、渾身の力をこめてライブラリーの一番上のカードをたたきつけるが、その《熟考漂い》は《霊魂放逐》。

    渡辺はすべてのダメージソースでアタックをし、大礒の3体の《熟考漂い》を墓地に送り込むかわりに、自身のクロックも失う。ここで大礒は安心して《熟考漂い》でのアタックをはじめる。そして、満を持しての《ザルファーの魔道士、テフェリー》。

    渡辺は《霊魂放逐》を試みるが、《謎めいた命令》を大礒はきちんと握っており、結果、《ザルファーの魔道士、テフェリー》が場に降臨する。

    完全に大礒が場を掌握した形になった。

    懸念材料は残りのライブラリー。少なくとも追加のクロックとして《熟考漂い》を追加できない程度には、渡辺の残りターンと大礒のライブラリーの枚数は拮抗している。

    だが、大礒が《ザルファーの魔道士、テフェリー》でのアタックを続けることで、渡辺は大礒に手をさしのべた。

    大礒 3-1 渡辺

    第1ゲームと第2ゲームの合間に、渡辺がトイレに行くために席を立った。

    そのときに、大礒は筆者にこういった。

    大礒 「やっぱ、このマッチは是非勝ちたいです。勝って、代表を確定させたいです」

    代表になれば、世界選手権で1日長くマジックができる。

    人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐ。

    Final Results: 大礒 正嗣、決勝進出!



     
  • Semifinals : 高桑 祥広(神奈川) vs. 栗原 伸豪(東京)
    by Takeshi Miyasaka
  • 試合開始前の準備をしながら、和やかに談笑してい高桑と栗原。
    二人の間にピリピリとした緊張感はなく、カジュアルに遊ぶノリである。

    二人が友人同士ということもあるだろうが、メンタル的には”世界選手権予選”を突破したということの方が大きいだろう。プロレベルで招待される栗原はともかく、高桑にとっては世界選手権に参加するためのボーダーが準々決勝突破だったのだ。実際に高桑は「これでワールドに行けるよ~」と、ほっとしている様子。

    この二人がこれから戦うのは、日本選手権の準決勝。勝者には、代表入りのイスと日本王者獲得への道が用意されている。

    タイトルまでは、あと二つ。

    Game 1

    準決勝に臨む栗原 伸豪
    両者なかよくマリガンスタートした準決勝。先攻の高桑が《背骨岩の小山/Spinerock Knoll》でカードを秘匿すれば、栗原は《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機という立ち上がり。
    高桑は 2ターン目に《溶鉄の金屑場/Molten Slagheap》をプレイして《睡蓮の花/Lotus Bloom》を待機と最速ではないものの、以降《背骨岩の小山》、《溶鉄の金屑場》と順調に土地を伸ばしていく。

    対する栗原は 2 枚目の《祖先の幻視》を待機したものの、プレイした土地は《冠雪の島/Snow-Covered Island》 1 枚のみだ。

    順調に土地を伸ばす高桑は、《睡蓮の花》の待機が明けても特にアクションを起こさず、《山/Mountain》をプレイするのみで終了する。

    マナスクリューに苦しんだ栗原は、1 枚目の《祖先の幻視》によって待望の土地を手に入れる。《滝の断崖/Cascade Bluffs》をセットし、《霊魂放逐/Remove Soul》《ルーンのほつれ/Rune Snag》《雪崩し/Skred》を捨てた。次いでプレイした 2 枚目の《祖先の幻視》では土地を手にすることができなかった。

    栗原がマナスクリューにおちいっている間に、順調に土地をセットし、貯めランドにカウンターを貯めてマナを増やしていた高桑が、動いた。より正確には、パーツがそろった。

    《魔力変/Manamorphose
    《紅蓮術士の刈り痕/Pyromancer’s Swath
    《ショック/Shock》(4点)
    《ショック/Shock》(4点)
    《裂け目の稲妻/Rift Bolt》(5点)

    《ぶどう弾/Grapeshot》は、ストーム 5 で。

    高桑 祥広 1-0 栗原 伸豪

    Game 2

    ハンドをオープンして即キープした栗原と、対照的に悩んでスタートした高桑。

    栗原が 2 ターン目に《ドラゴンの爪/Dragon’s Claw》をプレイすれば、《菌類の到達地/Fungal Reaches》 1 枚でスタートした高桑がディスカードを強いられる展開に。

    栗原 「逆になりましたね」
    高桑 「......」

    高桑がマナスクリューにおちいっている間に、栗原は青い悪魔こと《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》を降臨させ、高桑のライフを削り始める。さらなる手札の充実を狙って《祖先の幻視》を待機した栗原は、高桑の唯一の希望であるカウンターが貯まった《菌類の到達地》を《謎めいた命令/Cryptic Command》でバウンスして、コンボのスタートを阻害する。

    いつの間にか、栗原の場には青い悪魔と《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》。《紅蓮地獄/Pyroclasm》をプレイして、《ドラゴンの爪》でライフを《白鳥》で手札を充実させて、《ザルファーの魔道士、テフェリー》と《白鳥》で攻撃を加え、高桑のライフはもはや 7 となった。

    もう次のターンが残されていない高桑は、コンボをスタートさせる。
    勝利を信じて。

    《炎の儀式/Rite of Flame》(2マナ/栗原ライフ 22)
    《炎の儀式/Rite of Flame》(4マナ/栗原 23)
    《炎の儀式/Rite of Flame》(7マナ/栗原 24)
    《魔力変》(7マナ/栗原 25)
    《魔力変》(7マナ/栗原 26)
    《紅蓮術士の刈り痕》(4マナ/栗原 27)

    こうしてプレイされた《記憶の点火/Ignite Memories》は、ストーム 6。
    栗原はおとなしく手札を公開する。

    《滝の断崖》
    《冠雪の島》
    《祖先の幻視》

    手札のマナコストはどれも 0 だった。

    高桑 「なんもないのかよ!」
    栗原 「どきどきしたー」

    高桑 祥広 1-1 栗原 伸豪

    Game 3

    準決勝に臨む高桑 祥広
    ようやく両者マリガンなくスタートした第 3 ゲーム。後手の栗原がまずは《祖先の幻視》を待機、ついで《ドラゴンの爪》をプレイするという好スタート。対して高桑は《菌類の到達地》《溶鉄の金屑場》を 2 枚ずつという貯めランド祭り。

    栗原のターン終了時に、少しずつカウンターを貯めていく。まずは《菌類の到達地》へ、次いで《溶鉄の金屑場》へ。

    栗原が《謎めいた命令》でカウンターがいちばん乗った土地をバウンスするが、それに合わせて別の土地へカウンターを貯めていく。ゆっくりと、必要なマナを用意する。

    栗原は《祖先の幻視》を待機し、《謎めいた命令》で貯めランドを戻して、コンボのスタートを少しでも遅らせようとする。《命令》をプレイすること、三度。3 度目には、対象となった土地をコストに《欠片の飛来/Shard Volley》をプレイし、栗原のライフを攻める。

    高桑が考え込んだここで状況を整理しよう。

    高桑(ライフ20):

    《菌類の到達地》(カウンター 2個)
    《菌類の到達地》
    《溶鉄の金屑場》(カウンター 2個)
    《溶鉄の金屑場》

    栗原(ライフ 15):

    《冠雪の島》
    《冠雪の島》
    《冠雪の島》
    《冠雪の山/Snow-Covered Mountain
    《変わり谷/Mutavault
    《滝の断崖》
    《ドラゴンの爪》
    《突撃の地鳴り/Seismic Assault
    《祖先の幻視》(カウンター 1 個)
    《祖先の幻視》(カウンター 2 個)

    高桑は一瞬の隙を突いて、骨を切れば勝ち。
    栗原は隙を見せても、骨まで切られなければ勝ち。実にシンプルだ。

    しばし考え込んでから、《睡蓮の花》と《裂け目の稲妻》を待機してターンを終える。

    栗原は《祖先の幻視》 1 枚目をプレイし、手札の充実を。手札からあふれた《ブリン・アーゴルの白鳥》と《硫黄破/Sulfurous Blast》はディスカードした。高桑はカウンターをさらに一つ貯める。

    ふたたび高桑のターン。《裂け目の稲妻》の待機があけるとともに高桑が動く。《裂け目の稲妻》によって栗原のライフは 14 へ。まずは 3 マナで《紅蓮術士の刈り痕》を(栗原 15)。いまだ高桑の手札にある 4 枚の可能性を検討した栗原は《ルーンのほつれ》でカウンターする。

    《紅蓮術士の刈り痕》はカウンターされ、残ったマナをすべて使って《記憶の点火》をストーム 3 で。

    《ブリン・アーゴルの白鳥》(栗原 12)
    《シヴの浅瀬/Shivan Reef
    《ブリン・アーゴルの白鳥》(栗原 8)
    《ルーンのほつれ》(栗原 6)

    ライフを削りきれなかった高桑は、《睡蓮の花》を待機して攻防の主導権を栗原へと譲る。

    そして。

    2 枚目の《祖先の幻視》をプレイする機会が訪れた栗原にもたらされたのは――《ザルファーの魔道士、テフェリー》と《ブリン・アーゴルの白鳥》。

    高桑 祥広 1-2 栗原 伸豪

    高桑 「やっぱ《ドラゴンの爪》張られるときついなあ。届かなくなるよ~」
    栗原 「ていうか、引けないときついし。むしろ《吠えたける鉱山/Howling Mine》入れてよ」
    高桑 「《ドラゴンの爪》 2 枚引くやんけ!」

    Game 4

    《背骨岩の小山》で秘匿スタートする高桑。2 ターン目にセットするは《睡蓮の花》だ。

    栗原 「それ 2 ターン目によく出てくるね」

    対する栗原も、2 ターン目に《祖先の幻視》を待機する。

    高桑 「それ 2 ターン目によく出てくるね」

    二人とも軽口を叩きながら、互いにドローセットゴーを繰り返す。高桑はマナを貯め。栗原は《ドラゴンの爪》をプレイし。来るべきそのときに備えて、いまは力を貯めるときだ。

    高桑の 5 ターン目、1 枚目の《睡蓮の花》がプレイされ、栗原はこれを《謎めいた命令》でカウンターと《溶鉄の金屑場》(カウンター 3 個)をバウンスするが、そこに突き刺さる《耳障りな反応/Guttural Response》。

    そのまま、高桑はコンボをスタートする。

    《魔力変》
    《紅蓮術士の刈り痕》
    《欠片の飛来》
    《欠片の飛来》
    《記憶の点火》を、ストーム 6 で。

    高桑 祥広 2-2 栗原 伸豪

    高桑 「やっぱり 5 本目まで行くと思ったんだよなあ」
    栗原 「そろそろ《ドラゴンの爪》 2 枚引いてもよくない?」
    高桑 「いやいや!」

    Game 5

    高桑がコンボを決めるか。それとも栗原が阻害しながら殴りきるか。
    ここまで展開されてきた好ゲームもついに最終章となった。

    テイクマリガンしてスタートした栗原はドローゴーをし、高桑はこのゲームでも 2 ターン目に《睡蓮の花》を待機する。続く 3 ターン目にも。

    Use Card Image: Lotus Bloom

    「これじゃ《ザルファーの魔道士、テフェリー》が間に合うんだよなあ」とぼやく高桑。なるほど、確かにお互い順調にマナを伸ばしている。このままいけば、1 枚目の《睡蓮の花》の待機が明けるときには、栗原の土地は 5 枚ある計算だ。そして《テフェリー》のマナコストは 5。

    後手 4 ターン目。《テフェリー》が出る前に動いておきたい高桑は長考に入るが、しかしなにもできないことを悟りおとなしく栗原へターンを渡す。
    その気持ちに応えるかのように、栗原は 5 ターン目に 5 マナそろえ、《ザルファーの魔道士、テフェリー》を自分のターンにプレイしてエンドする。この《テフェリー》によって、高桑が待機した2枚の《睡蓮の花》は、プレイできなくなってしまうのだ。

    「やっぱりなー! 1 ターン目なら間に合ってるのに!」

    目の前に降臨した青い悪魔を前に、高桑から思わず愚痴がこぼれ出る。しかし、すぐに気持ちを切り替えて「やれることをやりましょう」と気合いを入れ直して自分のターンを迎える。

    まずは、待機が明けた 1 枚目の《睡蓮の花》をゲーム外に置き、《背骨岩の小山》をプレイして、しばし長考に入る。いまなら栗原の土地はフルタップなので、妨害はない。ジャッジが再三早くプレイをするようにうながすが「大事なところなので」と、けんもほろろだ。

    たっぷり行動を悩んでから、《裂け目の稲妻》と《欠片の飛来》の合わせ技で《ザルファーの魔道士、テフェリー》を屠ることに成功する。

    栗原が《ドラゴンの爪》をプレイするのみでターンを返すと、高桑はほっとしして待機していた 2 枚目の《睡蓮の花》を無事プレイして、勝利をかけたコンボをスタートする。

    まずは、《魔力変》、次いで《紅蓮術士の刈り痕》。《睡蓮の花》を生け贄に捧げて《記憶の点火》をストーム 3 で。

    《ブリン・アーゴルの白鳥》(栗原 17)
    《ブリン・アーゴルの白鳥》(栗原 17)
    《ルーンのほつれ》(栗原 7)

    ストーム 3 つが解決されたところで、いま公開した《ルーンのほつれ》で《記憶の点火》本体をカウンターしたい栗原だが、高桑は冷静に 2 マナ支払って《記憶の点火》の解決に入る。

    最後も《ブリン・アーゴルの白鳥》がめくれ、栗原のライフは 1 となった。もうなにもプレイできない高桑は、手札に残った《記憶の点火》を捨てて、ビッグイニングとなったターンを終える。あとは、ドローだけが頼りだ。

    もうなにも通せない栗原は、さんざん自分のライフを追い込んだ《ブリン・アーゴルの白鳥》をプレイし、これに《雪崩し》をプレイして、ライフを 2 にして、カードを 4 枚ドローしてターンを終える。

    なにも引かれなければ、まだ望みはある。
    祈るように、高桑のドローを待つ。

    「たたきつけるよ?」

    高桑がテーブルに叩きつけたカードは――――《欠片の飛来/Shard Volley

    高桑 祥広 3-2 栗原 伸豪

    Final Results: 高桑祥広の勝利!



     
  • Finals : 高桑 祥広(神奈川) vs. 大礒 正嗣(長野)
    by Yukio Kozakai
  • 高桑 祥広、日本王者まであと一勝
    「やっと俺の位置まで来たか」

    と、高桑 祥広(神奈川)に語りかける男がいた。昨年の日本選手権で高桑と同じくストームを操って準優勝した石川 錬(神奈川)だ。かつての浅原連合の流れを組む2人が、奇しくも同じデッキを使って同じ日本選手権の決勝の舞台に上がる。

    ストームというデッキの性質上、勝利するのも敗北するのもそう多くの時間はかからない。実際、準々決勝も準決勝も一番に試合を終わらせている。試合中からデッキデザイナーの高橋 純也(神奈川)が常に高桑のプレイに目を光らせ、マッチが終わるとすぐに作戦会議をはじめていた。ここで、軽くではあるがゲームの鍵となるポイントを、ブレインのコメントを中心におさらいしよう。

    高橋 「《睡蓮の花/Lotus Bloom》の待機のタイミングですね。第1ターンに待機出来れば大きいですが、少し遅れると《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》の餌食になりますから」

    確かに、準決勝の栗原 伸豪(東京)戦では1度も第1ターンに《睡蓮の花》を待機できず、間に合わないシーンが散見された。

    高橋 「それから、相手に4マナ揃ったところで《謎めいた命令/Cryptic Command》されると、《睡蓮の花》カウンター+バウンスモードでチャージランドや《背骨岩の小山/Spinerock Knoll》を戻されると、もうゲームプランも何も無いですから。サイドボード後はそこで《耳障りな反応/Guttural Response》をあわせられるかどうかが鍵です」

    石川 「デッキの有利不利で言うと、若干有利かな? ぐらいですが、大礒さんが勝つとしたら《造物の学者、ヴェンセール/Venser, Shaper Savant》出して《一瞬の瞬き/Momentary Blink》を構えるところまで試合が長引くパターンですね」

    ストームの「前任者」である石川も、両者のリストを見比べた上でゲームプランの予測を立てていた。

    それでは、大礒 正嗣(長野)サイドはどうだろうか。デッキデザイナーでもある津村 健志(広島)に話を聞いてみた。

    津村 「いや、今日のiso(大礒)さんはヤバイですよ? 全盛期に戻ってます」

    大礒の全盛期というと、2002-2003シーズンでルーキーを獲得し、それから世界中を渡り歩いてグランプリとプロツアーで暴れまわった3年間だ。思い起こせば、2005年日本選手権で日本代表の座を勝ち取り、そのまま日本代表を世界選手権優勝に導いた名手なのだ。あれから3年。大礒は全盛期にも手に出来なかった日本王者のタイトルに、あと1歩のところまで来ている。

    ―――あの当時、3年前の大礒さんがここにいると

    津村 「そんな感じですね。昨日とはもう別人です。今のisoさんとは絶対にマッチアップしたくないです」

    双方のブレインに話を聞くという試みでお届けしたわけだが、津村からは戦術らしいコメントは一言もなかった。つまり、それだけ全盛期の大礒に全幅の信頼を置いているということだ。

    第1ターンと第4ターン。それから、大礒の場に4マナ、ないし5マナ以上が並んだ時の両者の駆け引き。それから、全盛期の勢いを取り戻したという大礒に注目しよう。

    高桑は4年越しのリベンジで掴んだ決勝ラウンドで。大礒は3年ぶりの日本代表を目指し。2人のプレイヤーが、今年の日本選手権でただ1つ残されたマッチに、タイトルをかけて挑む!

    2008年日本選手権決勝、まもなくの開幕だ!

    Game 1

    大礒 正嗣はまさしくその全盛期を思わせる輝きを取り戻した
    1ターン目の《睡蓮の花》が鍵になる、と高橋は言った。高桑が開いたハンドに《睡蓮の花》は無く、2枚のチャージランドと《ぶどう弾/Grapeshot》《巣穴からの総出/Empty the Warrens》など。これをマリガンすると、その《睡蓮の花》がハンドへ巡ってきた。

    つまり、それは例え土地が1枚しかなくても「行く」ハンドということ。しかし、結論から言うと高桑の《睡蓮の花》が大礒に《ルーンのほつれ/Rune Snag》されるまでの間1枚の土地も引き当てられなかった。

    大礒は《造物の学者、ヴェンセール》で1枚しかない高桑の土地を戻し、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》も加えてライフ回復。高桑も《炎の儀式/Rite of Flame》《魔力変/Manamorphose》と経由させて《ぶどう弾/Grapeshot》を打ち込んでバーンモードに入るが、大礒が《造物の学者、ヴェンセール》を《一瞬の瞬き》し始めると、高桑は投了を宣言した。

    戦前に石川が予想した通りの、「大礒が勝つ展開」だった。

    高桑 祥広 0-1 大礒 正嗣

    Game 2

    高桑はまたもマリガンスタートから《吠えたける鉱山/Howling Mine》という初動。大礒は《祖先の幻視》を待機し、鉱山から得たハンドで《台所の嫌がらせ屋》をプレイし、高桑はチャージランドにカウンターを貯めつつ2枚目の《吠えたける鉱山》をプレイ。

    《祖先の幻視》待機が明け、《吠えたける鉱山》からのドローも加えて大量のハンドを抱えた大礒は、《虹色のレンズ/Prismatic Lens》《造物の学者、ヴェンセール》とプレイしてターンを返す。

    高桑は、大礒がフルタップするこのタイミングを待っていた。《炎の儀式》から2枚の《ショック/Shock》を重ねて《巣穴からの総出/Empty the Warrens》。8体のゴブリンが一斉に生まれ、大礒は《一瞬の瞬き》で《造物の学者、ヴェンセール》をちらつかせて高桑が唯一赤マナの出せる《山/Mountain》をバウンスし、《ザルファーの魔道士、テフェリー》を自陣に加える。

    大礒が目指す勝ちパターンはただ1つ。バウンスモードだ。

    火力とトークンによる攻勢に一息ついたところで、《造物の学者、ヴェンセール》を《一瞬の瞬き》し、さらに《謎めいた命令/Cryptic Command》で高桑の土地を攻める。

    高桑は、1枚は《耳障りな反応》でカウンターするが、2枚目の《謎めいた命令》はかわせない。そして《裂け目翼の雲間を泳ぐもの/Riftwing Cloudskate》が高桑の場に土地が並ぶことを許さない。それでも高桑は《睡蓮の花》を待機して一発逆転に賭け、大礒の攻勢に耐え続ける。

    《睡蓮の花》の待機が明ける。当然大礒は《謎めいた命令》(追加のモードは《山》のバウンス)。高桑は《耳障りな反応》するが《ルーンのほつれ》でしっかりキャッチ。高桑はこれでまたマナが縛られた。

    完全に打ち止めと思われたが、ドローステップに引いた3枚の中に《ぶどう弾》と《炎の儀式》が。ストームも溜まっている。大礒にマナは無い。このターンで決めることは出来ないが、ダメージレースに持ち込むことが出来るかも知れない。

    大礒のサイドボードにある、2枚の《否定の契約/Pact of Negation》を忘れていたわけではないだろうが、「持って無い可能性」に賭けた高桑は《炎の儀式》に手をかける。2枚並んだ土地からでも支払えたが、ストームを1つでも稼いで出来るだけダメージを与えようと動く。

    が、大礒が出した答えは「否定」だった。

    さらに2枚目の《台所の嫌がらせ屋》を追加した大礒は、ライフも圏外へと持っていき、仕方無しにトークンをブロッカーに回そうかという高桑に対して、大礒は4枚目の《謎めいた命令》でブロックすら許さなかった。

    ここで、撮影機材の関係で長めの休憩が入る。ターン数はそれほど長くは無いのだが、何しろストームは考えるシーンが多い。特に《吠えたける鉱山》で選択肢が増え続ける状況ではなおさらだ。大礒も「1つ間違えたら即死がありうる」デッキ相手ゆえ、選択ミスは許されない。必然的に、考える時間は長くなる。すでに1時間半が経過しているのだ。

    しばしの休息。ところがこのインターバルが、ゲームの流れを大きく変えることになる。

    高桑 祥広 0-2 大礒 正嗣

    Game 3

    準々決勝で、三原相手に見せた輝きが高桑に戻る。

    1ターン目《背骨岩の小山/Spinerock Knoll》からの《睡蓮の花》2枚待機、そしてチャージランドの流れるような展開。方や、大礒はダブルマリガンスタートから《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を待機するのみ。

    《睡蓮の花》が花開く。大礒からカウンターは無い。花は実を結んで《紅蓮術士の刈り痕/Pyromancer’s Swath》となり、《ショック》と《ぶどう弾》が4ターンキルを演出した。

    高桑 祥広 1-2 大礒 正嗣

    Game 4

    激戦の続く中で、大礒 正嗣はその本来の冴えを取り戻した
    またしてもマリガンスタートの大礒は、さらに土地が2枚で止まるアクシデント。

    高桑は今度ロケットスタートとはいかず、マナトラブルで苦しむ大礒へ《吠えたける鉱山》プレイで結果的にアシストの格好となる。しかし、ハンドの火力はさらに充実しており、それだけでも勝負に持ち込める勢いだ。

    これで大礒はマナスクリューから抜け出し、《祖先の幻視》《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》と次々に待機させ、高桑の動きがないと見ると待機が明けたタイミングで《造物の学者、ヴェンセール》を重ねて、バウンスモードに入る。高桑は考えた末に、この2体を《ショック》で焼却。

    「《一瞬の瞬き》が来たらゲームが終わる」。大礒のマナが寝ているうちに、脅威の根源を絶っておくプレイを選択した。高桑が予防を施した以上、大礒もまずは予防が必要だ。それこそが《ザルファーの魔道士、テフェリー》であり、《裂け目の稲妻》を次元の彼方へ追いやって、高桑の火力の避雷針とした。

    《吠えたける鉱山》で引いているはずなのに消耗していく高桑の手札。逆に、毎ターン大礒にやってくる鉱山からの産出物は、高桑にとっての不条理を詰め込んだ贈り物となる。2枚目の《祖先の幻視》でさらに手札を強化させていく大礒は、とにかく高桑のマナさえ自由にさせなければ勝利が舞い込んでくるとふんで、フルタップも構わず《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》を送り込んで高桑の土地を戻し、再び高桑は火力を《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》へぶつける。

    サイドボードプランを高橋と確認していた高桑は、大礒がサイドアウトしてくるカードは《目覚ましヒバリ/Reveillark》だと目論んだ。そのスペースにしか《ザルファーの魔道士、テフェリー》は入らない。ならば、出てくるバウンスクリーチャーを全て焼き尽くせば、デッキの火力の枚数だけを考えても、手数は高桑が有利になるはずだ。

    だが、それは《祖先の幻視》のない前提の話。高桑の火力が弾切れになると、追加した《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》《台所の嫌がらせ屋》で攻め始め、《睡蓮の花》は《謎めいた命令》でカウンターしつつ《吠えたける鉱山》へのバウンスでアドバンテージを確保。その攻防から溜まったストームで高桑が《巣穴からの総出/Empty the Warrens》すれば、《神の怒り/Wrath of God》で一掃する。

    キーカードはカウンターされ、パーマネントはバウンスされ、トークンで押そうとすれば流される。万策尽きた高桑は天を仰ぐ。

    準々決勝で、三原 槙仁が最後に残した言葉を思い出した。

    三原 「王者のマジックをしたい」

    筆者なりの解釈をすると、環境の中心のデッキ、すなわち「王者のデッキ」を選択し、小細工無しで純粋なデッキパワーの高さと腕で栄光を掴む。そのスタイルこそが「王者のマジック」だ。

    今まさに、大礒 正嗣がプレイしているマジックこそ、三原の言っていた「王者のマジック」なのではないだろうか。

    そういえば、今年はプロツアー・クアラルンプールで、あのジョン・フィンケルの復活優勝で幕を開けた。彼もまた「王者のマジック」の遂行者である。この流れは偶然ではない。

    まさに、日本王者にふさわしいスタイルとキャリアを兼ね備えたかつての日本代表が、「世界のiso」の二つ名の通り、再び世界へと向けて走り出した。世界選手権でもきっと、我々は「王者のマジック」を目の当たりにするだろう。大礒 正嗣というチャンピオンの「王者のマジック」を!

    おめでとう! 2008年日本王者は 大礒 正嗣(長野)!!

    高桑 祥広 1-3 大礒 正嗣

    なお、大礒の快挙により、2009年度日本選手権は広島で開催されることになった。

    Final Results: 大礒 正嗣 2008年日本選手権優勝!!



     
  • National Team Profile : 2008年日本代表
    by Daisuke Kawasaki
  • 優勝:大礒 正嗣(長野)
    「世界選手権で優勝して見せます」

    大礒は、表彰式で力強くこう語った。そして、その後のインタビューで、さらに力強くこう語った。「勝てるとは思わなかった」と。

    しかし、そうはいっても決勝ラウンドでの大礒の強さは本物だった。盟友である津村 健志(広島)も「あんた、今日は本当に強かった」と語るほどに。

    大礒が自身のプロフィールでも書いているように、スイスラウンドで大礒は、1ターン目に《祖先の幻視/Ancestral Vision》を待機し忘れたり、《否定の契約/Pact of Negation》を払い忘れてゲームを落としたりと、ケアレスミスが多かった。だが、その事が、結果的に大礒を優勝に導いたとも言える。

    「一度ミスったら、もうミスりませんから」

    致命的なミスが逆に大礒に集中力を与えた。

    プロツアー・ハリウッドのように、忙しさが大礒からマジックをプレイする機会を奪うことは少なくない。だが、マジックをできる機会があればできるだけマジックをやりたいと大礒は語る。

    「プロツアー・京都はいきたいですね」

    日本選手権で優勝したことと、国別対抗戦を含む世界選手権の権利を獲得したことで、プロポイントでの京都の権利を実質的に獲得した大礒。

    世界中のマジックファンが、大礒のプレイを待ち望んでいる。


    準優勝:高桑 祥広(神奈川)
    「昔は無尽蔵に時間がありましたからね」

    今年から社会人1年生として、新しい生活をはじめた高桑。生活環境がかわって実感したことを聞くと、こう答えた。

    確かに、無尽蔵にマジックに時間を費やせる日々は幸せだった。しかし、時間が無くなったからこそ、時間の大切さを実感し、できるだけ濃密な練習をする方法を模索したという。

    「例えば、1時間練習できる時間ができたとしたら、その時間の中でもっとも効率的に情報を手にいれる方法を考え抜きましたね」

    いままでは、使用するデックが決まったら、そのデックをできるだけ多くプレイしていた。いや、もっと言えば、無尽蔵にある時間を、ダラダラとプレイすることに費やしていた。だが、限りある時間の中で練習するのならば、その方法は効率が悪すぎる。そこで、高桑は、練習時間の半分を、対戦相手が使ってくるだろうデックを使用する時間に充てることにした。対戦相手の思考を知ることが、もっとも効率のよい方法だと考えたのだ。

    「あと、デッキが強かったですね」

    高橋 純也(東京)から渡されたデック。サイドボードの《吠えたける鉱山/Howling Mine》が、それ1枚で勝たせてくれたという。

    優れたデックを託してくれる仲間がいる生活も、無尽蔵な時間と同じくらい幸せなものだろう。


    3位:渡辺 雄也(神奈川)
    「今年もまた、あそこに行きたいんです」

    昨年の世界選手権。

    Rookie of the Year(新人王)として表彰式でスポットライトを浴びた渡辺は、こう考えた。また来年もこうしてスポットライトを浴びたいと。

    ルーキーを獲得したことで、1年間の自分の軌跡を実感した渡辺は、今年は日本の代表として世界選手権に出場することとなる。そして、それを実感するためにも、国別対抗戦では優勝したいと語る。

    日本代表のメンバーが揃って忙しいため、お互いの練習の時間は十分にとれないかもしれない。だが、幸いにも今年の世界選手権は、個人戦の要素が強いチーム構築によって行われる。

    「ふたりの分をフォローするためにも、スタンダードで星を稼ぎます」

    The Finalsでは2年連続で入賞し、京都ではグランプリ初戴冠を果たした渡辺。だからこそ、まだ実績を残していない日本選手権では勝ちたかったという。

    「あとは...プロツアーですね」

    今シーズン残すプロツアーは、11月のベルリン。渡辺は、世界選手権を待たずして、是非ともベルリンで結果を残したいという。

    過去に日本人でルーキーを獲得したのは、大礒と森 勝洋(大阪)。ふたりとも、ルーキー獲得後も次々と実績を残し、世界でも屈指の強豪として認識されている。

    そして、渡辺は、きっとこのふたりに並ぶ存在になってくれるだろう。

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