Japanese Coverage of the 2008 Magic World Championships

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TOURNAMENT CENTER
Sunday Wrap-up
Congratulations to Antti Malin and the U.S. National Team, your 2008 Magic World Champions. Randy Buehler and Brian David-Marshall recap the full weekend from Memphis, including a quick chat with Malin just minutes after his victory.

エルヴィスの生まれ故郷、メンフィスの空を制したのは、青と黒の妖精たちだった。

フィンランドのAntti Malinは、準々決勝で浅原 晃(神奈川)とのフェアリー対決を制すると、準決勝ではHannes Kerem(エストニア)のキスキンに2敗からの3勝と鮮やかな逆転劇を見せた。

決勝の相手は、アメリカのすべての期待を背負った男、Jamie Parke(アメリカ)。

今年のプロツアーの、すべてのチャンピオンを輩出してきたアメリカとしては、年間グランドスラムを達成し、「アメリカ完全復活」をアピールしたかったことだろう。

だが、まだまだ、マジックは、アメリカだけの、いや一部の強国だけのゲームではないことをAntti Malinは証明して見せたのだ。

アメリカの悲願は、別の形で達成されることとなる。

国別対抗戦では「事実上の決勝戦」といわれた準決勝で、大礒 正嗣(広島)率いる日本代表チームに勝利し、決勝でも「Rookie of the Year」Aaron Nicastry(オーストラリア)擁するオーストラリアチームを破り、アメリカに国別対抗戦のタイトルをもたらしたのだ。

結果として、すべてのプロツアーの表彰式でアメリカ人が表彰されたことになり、今年はアメリカの年だったといっても過言では無いシーズンとなった。

しかし、まだ、日本も負けていない。

浅原 晃の他に、池田 剛(福岡)・津村 健志(広島)と合計3人をトップ8に送り出し、代表チームを国別対抗戦のプレーオフに送り出し、間違いなく日曜日を盛り上げた立役者であった。

そして、何より、この男を忘れてはいけない。

シーズン頭からトップグループを維持し続け、見事Player of The Yearに輝いた、中村 修平(大阪)だ。

中村の1年間を通したパフォーマンスは、まだ、日本がマジック強豪国であることを世界中に印象づけるに十分なものだった。

来シーズンは、一年ぶりに日本・京都でのプロツアー開催も決定している。

来年の、ロンドンで、表彰式のスポットライトを浴びるのは、あなたかもしれない。


Quarterfinals   Semifinals   Finals   Champion
1 Paulo Vitor Damo da Rosa   Jamie Parke, 3-2        
8 Jamie Parke   Jamie Parke, 3-0
       
4 Frank Karsten   Tsuyoshi Ikeda, 3-0   Antti Malin, 3-1
5 Tsuyoshi Ikeda    
       
2 Antti Malin   Antti Malin, 3-1
7 Akira Asahara   Antti Malin, 3-2
       
3 Kenji Tsumura   Hannes Kerem, 3-2
6 Hannes Kerem    

  National Team Semifinal   National Team Final   Team Champion
1 Team Brazil   Team Australia, 3-0    
4 Team Australia   Team United States, 2-0
       
2 Team Japan   Team United States, 2-1
3 Team United States    

EVENT COVERAGE INFORMATION

 1.  Malin, Antti $45,000
 2.  Parke, Jamie $24,000
 3.  Ikeda, Tsuyoshi $15,000
 4.  Kerem, Hannes $14,000
 5.  Da Rosa, Paulo Vitor $11,000
 6.  Tsumura, Kenji $10,500
 7.  Karsten, Frank $10,000
 8.  Asahara, Akira $9,500
Pairings Results Standings Standings (Team)
By Format Final
18
17
16
15
14
13
Team 4
Team 3
18
17
16
15
14
13
Team 4
Team 3
18
17
16
15
14
13
--
--
18
17
16
15
14
13
Team 4
Team 3

12
11
10
9
8
7
12
11
10
9
8
7
12
11
10
9
8
7
12
11
10
9
8
7

Team 2
Team 1
6
5
4
3
2
1
Team 2
Team 1
6
5
4
3
2
1
--
--
6
5
4
3
2
1
Team 2
Team 1
6
5
4
3
2
1





 
  • Quarterfinal : 池田 剛(福岡) vs. Frank Karsten(オランダ)
    by Keita Mori
  • 池田 剛は古くから日本の競技のコミュニティの最前線で活躍し続けているプロプレイヤーで、二度のプロツアーサンデー進出、日本代表経験をはじめとした燦然たる戦績を誇る。

    今シーズンに池田が見せている素晴らしいパフォーマンスの原動力のひとつが、その構築戦における安定した戦績だ。そして、的確にメタゲームを捉えるそのデッキ選択は、この世界選手権メンフィス大会でも冴えわたった。

    池田 「今年はとにかくフェアリーをメタり、倒し続けてきた一年でしたね。ブロック構築、スタンダード、それに昨日のエクステンデッドもそうでしたね。妖精は妖精でも緑色のほうは苦手だけど、青いほうは美味しくいただいています」

    妖精使い、高橋 優太(東京)によるグランプリ二連覇というトピックが物語るように、構築シーンにおけるフェアリーの席巻というのは2008年を象徴する出来事だった。しかし、そのフェアリーこそを仮想敵としたデッキ構築を行い、成果をあげているのが池田なのだ。

    昨日の深夜12:00すぎ、ホテルに戻った私はロビーで準々決勝用のプレイテストを行っているフランク・カースティンその人と出会い、少しばかり歓談した。そして、苦笑をうかべながらフランクはこう語った。

    フランク 「カイ・ブッディでもこのマッチアップは厳しいと思うよ・・・」

    Game 1

    先手をとった池田は開幕ターンに《運命の大立者/Figure of Destiny》をプレイし、対するフランクは《思考囲い/Thoughtseize》で池田の手札から《残忍なレッドキャップ/Murderous Redcap》を奪い取った。池田の手札にのこされた手札は《荒廃稲妻/Blightning》と3枚のランド。

    池田は2/2《運命の大立者/Figure of Destiny》を「出世」させながらアタックを継続し、《ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment》をタップイン。《運命の大立者/Figure of Destiny》の存在を考えれば、あまりスペルにめぐまれていないハンドであっても「十分な土地にめぐまれたハンド」とポジティブに解釈できる場合もあるだろう。池田はその《運命の大立者/Figure of Destiny》をさらに4/4に昇格させてアタックを継続し、《苦花/Bitterblossom》を2ターン目に成就させてターンを返してきたフランクを攻めたてる。

    《苦花/Bitterblossom》が強すぎるという論調がある。論調と言うよりは事実でありムーブメントでもあるのかもしれない。しかし、ベテランは戦前にこう語った。

    池田 「つけいるスキはありますよ。そして、今回のオレのデッキはそれを意図したデッキですから」

    池田がここで炸裂させるのは《荒廃稲妻/Blightning》! 

    《苦花/Bitterblossom》の弱点、すなわちライフを・・・手札とともに攻撃するファイアーボール総帥。大立者こそトークンでチャンプブロックしはじめたフランクだったが、《ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment》とのあわせわざのアタックにより確実にライフを削られていってしまう。

    なんとかトークンのブロックと《苦悶のねじれ/Agony Warp》によって《運命の大立者/Figure of Destiny》を屠り、盤面には《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》を追加するフランク。しかし、《炎の投げ槍/Flame Javelin》によって肝心要の4/4飛行も除去されてしまう。

    残りライフ3点にまで削り落とされたフランクは、池田のドローステップに《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》を召喚。ここで、いままさに池田がドローしたばかりの脅威である《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》をライブラリーの底に送り込むが・・・そのかわりに池田が手にした新しいカードがちょうど3点の火力、すなわち《火葬/Incinerate》だった。

    池田 1-0 フランク

    Game 2

    池田 剛という魅力的なプレイヤーのプロフィールを海外の方に説明する必要がある場合、私はよく”Japanese Dougherty”というフレーズを使用する。

    尊敬をあつめる温和な人柄、家族思いの父親であること、十分すぎるほどマジックでの成功をおさめていること、さらに、カードゲームショップ(何店も!)を経営して、多くのひとびとにマジックを遊ぶ機会と場所を提供してコミュニティに貢献していること、等々、YMG総帥ロバート・ドハティと池田 剛の共通項は驚くほどに多い。

    殿堂者、ロブ・ドハティは息子さんをつれてイベント会場でガンスリンガーに参加している

    日本のドハティ、池田 剛は、またしても1ターン目の《運命の大立者/Figure of Destiny》から軍勢展開で先行し、フランクの2ターン目の《苦花/Bitterblossom》に対しても2ターン目の《苦花/Bitterblossom》がえしで応じた。

    3ターン目に土地がおけないという、一瞬ひやりとさせられた瞬間もあったが、無事に3ターン目に3枚目の土地を引き当てて《運命の大立者/Figure of Destiny》とトークンでの攻撃を継続した。

    フランクはライフレースで大きなアドバンテージを稼ぐための《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》を置いて挽回を狙うが、なかなか「装備」するまでの余裕がない。

    池田はよけいなアクションをおこさず、つねに6~7枚の手札を抱えながら攻撃を継続し、アンタップしたマナと十分な手札と言う無言のプレッシャーでフランクに大きなアクションを躊躇させた。池田は対戦相手のエンドステップにインスタント火力を連射し、フランクの手札の打ち消し呪文を消耗させ、続く池田のターンにコンバットトリックをプレイできるだけのマナの余力をフランク・カースティンに与えなかった。つまり、二発の《炎の投げ槍/Flame Javelin》は《瞬間凍結/Flashfreeze》と《謎めいた命令/Cryptic Command》によって打ち消されたが、池田は冷静に制限時間をつげる時計の針をすすめていったのだ。

    とうとう我慢できなくなったフランクはメインステップに3マナを使う大きなアクション、つまり、《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》をフェアリートークンに装備することを選択する。待ち構えていた池田はそのフェアリートークンへと《マグマのしぶき/Magma Spray》を詠唱し、フランクが《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でこれをカウンター。手札の枚数ではるかにまさる池田は2枚目の《マグマのしぶき/Magma Spray》によってこれを阻んだ。

    続くターンにも池田はフェアリートークン軍団での攻撃を敢行し、フランクのターン終了ステップに《炎の投げ槍/Flame Javelin》でカウンター呪文を使わせた。ここで《火葬/Incinerate》と《ボガートの突撃隊/Boggart Ram-Gang》を公開してみせると、フランクは投了を余儀なくされた。

    池田 2-0 フランク

    Game 3

    今度はダメージランド《硫黄泉/Sulfurous Springs》からとはいえ、みたび、開幕ターンの《運命の大立者/Figure of Destiny》に恵まれる池田。これは《苦悶のねじれ/Agony Warp》で除去されてしまうものの、池田はサイドインした《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》を続く3ターン目にプレイする。

    《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》もまたフェアリーには効果のある対策カードで、《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を盤面に送り込んだ上での《コショウ煙/Peppersmoke》で除去するフランクに対して、墓地から《とげ刺し》を「発掘」しての1点狙撃ですぐさまスプライトを除去することに成功した。打ち消されても墓地から活用できる点、これが馬鹿にできない。

    続く池田のアタッカーは《ボガートの突撃隊/Boggart Ram-Gang》で、これを《苦悶のねじれ/Agony Warp》でさばくフランク。池田は《ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment》を起動して2/1先制攻撃でアタックを継続する。

    池田の続く《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》の二枚目を《謎めいた命令/Cryptic Command》で打ち消したフランクだったが、続く《ボガートの突撃隊/Boggart Ram-Gang》を対処するすべには恵まれず、これによって3点のダメージが与えられた。

    それでもフランクは《誘惑蒔き/Sower of Temptation》によって敵陣の3/3速攻・萎縮ゴブリンを奪い取ろうと画策したが、池田はさきほど第2ゲームでも見せたような2連発の《マグマのしぶき/Magma Spray》でこれを阻んだ。しぶきのうちの1発を防いでみせた《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》は、やはり「発掘」からの《ヴィティアのとげ刺し/Vithian Stinger》の狙撃がこれを屠った。

    あとがなくなってきたフランクの《思案/Ponder》をみて、池田は笑った。「それ、1枚だけの《思案/Ponder》でしょ」と冷やかすファイアーボール総帥。独自の構築理論で知られるフランクは、デッキに26枚目の土地をいれるのは土地を引きすぎてしまいそうで恐いが、25枚も少なく感じる、という理由で1枚だけ《思案/Ponder》をデッキに入れているという有名なエピソードがあるのだ。

    フランク 「トップデッキできないかな・・・」

    続くターン、池田は《荒廃稲妻/Blightning》を見舞い、フランクの二枚の手札すべてを捨てさせにかかった。レスポンスで《ウーナの末裔/Scion of Oona》を召喚してみせたフランクだったが、続く池田の《ボガートの突撃隊/Boggart Ram-Gang》のアタックを《変わり谷/Mutavault》でブロックしたところで、《ウーナの末裔/Scion of Oona》へと《火葬/Incinerate》が飛来した。

    つまり、これですべての盤上のクリーチャーを失うことになったフランク・カースティンは投了を余儀なくされた。

    池田 2-1 フランク

    池田 剛 「決勝ラウンドの相手がすべてフェアリーなら、優勝もねらえると思います」



     
  • 2008年度最優秀プレイヤー 中村修平
    by Bill Stark / Translated by YONEMURA “Pao” Kaoru
  •  世界選手権には毎年数多くのドラマがあるが、その中でももっとも興奮をかき立てるのは最優秀プレイヤー・レースであることは論を待たない。その中でも今年は特に大興奮な状況だった。

    何年もに渡って候補になりながらも最優秀プレイヤーの座には縁がなかった中村修平。一昨年、昨年と手が届かなかったそのタイトルを、ついに今年手中に収めたのだ。中村修平の2008年シーズンは、まず2007年世界選手権の終わった翌週に最初のグランプリ・シュタットガルトで優勝したことから始まった。それからもトントン拍子に成績を残し、プロツアー・ハリウッドではトップ8に入賞。史上初めて国別選手権でもプロポイントが得られるようになった今年、さらに点数を稼ぐ機会を手に入れたが、残念ながら紙一重でポイントを手にすることはできなかった。

    このシーズンの間、中村と接戦を繰り広げてきたプレイヤーたちがいる。まずは世界を股にかける高名なオリヴィエ・ルーエル。丁々発止とやり合いながら、世界選手権開始時点での点差は14点と詰まっていた。ルーエルはフランスの代表チームの一員であり、チーム戦の結果によっては追加のプロポイントを手にすることができる可能性がある。その点で日本代表に入っていない中村より有利であった。そして、プロツアー・ベルリンと、その数週後のグランプリに優勝したアメリカのルイス・スコット=バーガスがこの2人を猛追する。他に可能性の残っているプレイヤーはポルトガルの代表チームにも名前を連ねるマルシオ・カルバロと、前年度最優秀プレイヤー齋藤友晴の2人がいた。

    世界選手権では、プレイヤーたちはマジック漬けの長い週末を過ごす。スタンダード、エクステンデッド、そしてアラーラの断片・ドラフトと3種類のフォーマットで戦い抜かなければならないのだ。オリヴィエとカルバロの2人は、代表チームとして点数を手にするチャンスが残されている。ルイス・スコット=バーガスは個人戦で16位以内に入賞した。

    ――しかし、最終的には、プレミアイベントのあった週末25個のうち22個に出場してポイントを稼いだ中村修平が、最優秀プレイヤーの座を手中にしたのだった。

    2008年最優秀プレイヤー、中村 修平!



     
  • 2008年世界選手権:トップ8プロフィール
    by Event Coverage Staff / Translated by YONEMURA “Pao” Kaoru
  • フランク・カーステン/Frank Karsten

    居住地:オランダ・アイントホーフェン
    プロツアー出場回数:40以上
    世界選手権出場回数:9回
    2008年世界選手権出場資格:プロポイントと国別選手権
    GP/PTのトップ8:プロツアーで2回、グランプリで6回、あと今回。
    マジック界での業績:
    ・インビテーショナルで「ザ・ファナティック」に選出
    ・magicthegathering.comで「オンライン・テック」を執筆

    スタンダード戦績:4-2
    スタンダードのデッキとその使用理由:
     フェアリー。州選手権やマジック・オンラインのプレミア・イベントなどから情報収集して、フェアリーが一番パフォーマンスがいいと思ったんだ。それから、フェアリーのデッキリストをできる限りかき集めて、「平均的な」デッキリストを作ったんだよ。

    ブースター・ドラフト戦績:5-1
    ドラフトの戦略:
     単色カードを先に取って、3色カードは後回しにした。なるべく遅くまでどの断片を使うかという選択肢を残しておきたかったからね。柔軟性は重要さ。まあ、俺はジャンドが好きなんだけどね。選択肢が多くて除去もシナジーもたっぷりあるから。

    エクステンデッド戦績:4-0-2
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
     エルフボール。プロツアー・ベルリンでも使ったから、手に馴染んでるんだ。エルフの対策カードは色々入ってくると思うけど、それでもエルフが一番強くて安定してると思ったのさ。サイドボード後の《思考囲い/Thoughtseize》や《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte》、大型クリーチャーを見ていると、こいつらがいれば対策カードも気にしなくていいと思えるよ。

    このイベントに向けての準備と練習相手:
     練習ってほどの練習はしてないな。ネットで見つけた、トップ8のスタンダードのリストを分析して、エクステンデッドのデッキは前のプロツアーで使った奴だし。練習仲間ならベルギーのみんながそうで、アイントフォーフェンのプレイヤーたちと何回かドラフトをやったぐらい。構築のカードを揃えてくれた、Manamazeという店があるんだけど、そこには感謝してるよ。


    ハンス・ケレム/Hannes Kerem

    居住地:エストニア・タルトゥ県ケイラ
    プロツアー出場回数:2
    世界選手権出場回数:1
    2008年世界選手権出場資格:国別選手権
    GP/PTのトップ8:0
    マジック界での業績:
    FNMに勝ったぐらいしかない、と胸を張って書けることを証明したいですね

    スタンダード戦績:5-1
    スタンダードのデッキとその使用理由:
     キスキン。勝てるからね

    ブースター・ドラフト戦績:5-1
    ドラフトの戦略:
     いいレアを剥くこと。《マイコロス/Mycoloth》しか引けなかったけどね

    エクステンデッド戦績:3-2-1
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
     エルフボール。テストする時間なかったし、ベルリンで結果残してたから

    このイベントに向けての準備と練習相手:
     スタンダードとドラフトの練習をした


    津村健志/Kenji Tsumura

    居住地:大阪
    プロツアー出場回数:20か30回ぐらい
    世界選手権出場回数:5
    2008年世界選手権出場資格:プロポイント
    GP/PTのトップ8:グランプリ12回、プロツアー6回
    マジック界での業績:
    -2005年最優秀プレイヤー

    スタンダード戦績:4-2
    スタンダードのデッキとその使用理由:
    フェアリー大好き!

    ブースター・ドラフト戦績:5-1
    ドラフトの戦略:
    白緑が最良。巨大化は除去より上!

    エクステンデッド戦績:5-1
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
    フェアリー大好き!

    このイベントに向けての準備と練習相手:
    有留 知広、中野 圭貴、森 勝洋、渡辺 雄也、大塚 高太郎、栗原 伸豪、高桑 祥広、大礒 正嗣。


    ジェイミー・パーク/Jamie Parke

    居住地:ニューヨーク州ニューヨーク
    プロツアー出場回数:けっこうな回数
    世界選手権出場回数:けっこうな回数
    2008年世界選手権出場資格:レーティング/15 プロポイント
    GP/PTのトップ8:多分5回
    マジック界での業績:
    -Kart.

    スタンダード戦績:2-3-1
    スタンダードのデッキとその使用理由:
     5色コントロール。2日目と3日目に賭けるつもりさ。

    ブースター・ドラフト戦績:6-0
    ドラフトの戦略:
     赤黒がいいね。シナジー満載だから。でなきゃ赤緑。

    エクステンデッド戦績:5-1
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
     ゲイブ・ナシフ作の青単フェアリー・コントロール(”the Wiz”)。ただ強いってだけじゃなく、苦手な相手がいないんだ。

    このイベントに向けての準備と練習相手:
     構築はオンラインの仲間、マーク・ハーバーホルツやゲイブ・ナシフ、スティーブ・サディン、アントニノ・デ・ロサ、ティム・ランデール、メリッサ・デトラあたり。誰か忘れてたら言ってくれ!


    パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa

    居住地:ブラジル・ポルトアレグレ
    プロツアー出場回数:17
    世界選手権出場回数:5
    2008年世界選手権出場資格:プロレベル
    GP/PTのトップ8:GP3回と、PT4回
    マジック界での業績:
    ここ15回のグランプリで14回、トップ25に入ってること

    スタンダード戦績:5-1
    スタンダードのデッキとその使用理由:
     フェアリーだね。最高のデッキだと思うし、齋藤友晴曰く俺はフェアリー・マスターらしいから。

    ブースター・ドラフト戦績:5-1
    ドラフトの戦略:
     赤、特にジャンドがいいけど、それにこだわらないようにしたいね。対処することが大切さ。

    エクステンデッド戦績:4-2 (1回しか負けてないぜ!)
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
     ズー。他のデッキは肌に合わないし、ズーはいつだってメタの2番手だからね。

    このイベントに向けての準備と練習相手:
     友達と対戦したけど、それよりベルリンやハリウッドに向けての練習の方が活きてるかな。


    浅原晃/Akira Asahara

    居住地:神奈川
    プロツアー出場回数:30
    世界選手権出場回数:5
    2008年世界選手権出場資格:プロレベル
    GP/PTのトップ8:GP8回、PT2回
    マジック界での業績:
    玄人杯優勝

    スタンダード戦績:6-0
    スタンダードのデッキとその使用理由:
    フェアリーの「青黒ノーテゼレット」。最強。

    ブースター・ドラフト戦績:3-3
    ドラフトの戦略:
    5色クソサイクリング

    エクステンデッド戦績:4-1-1
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
    エルフ「三田村魂のデッキ」

    このイベントに向けての準備と練習相手:
    佐々木将人と八十岡翔太と、相模原のドリームカフェで


    アンティ・マーリン/Antti Malin

    居住地:フィンランド・ヘルシンキ
    プロツアー出場回数:19
    世界選手権出場回数:4
    2008年世界選手権出場資格:プロレベル
    GP/PTのトップ8:GPで1回、PTで2回
    マジック界での業績:?
    アンヒンジド・リリース大会優勝

    スタンダード戦績:3-3
    スタンダードのデッキとその使用理由:
     フェアリー。このデッキが気に入ってて、強いからね。キスキンや赤単も検討はしたけどね。

    ブースター・ドラフト戦績:6-0
    ドラフトの戦略:
     流れに任せる感じ。ナヤに行けたらいいね。

    エクステンデッド戦績:5-1
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
     赤単バーン「Esko.dec」に決めたのは昨晩なんだけど、正解だったと思うね。フェアリー、ズー、その他、エルフ相手でなければ相性勝ちできるからね。

    このイベントに向けての準備と練習相手:
     カードもデッキもあるだけメンフィスに持ってきて、月曜からフィンランドチーム、エルッキ・シーラ、サミ・ハグクイスト、サミ・ツオミ、テロ・ニエミと調整してたんだよね。


    池田剛/Tsuyoshi Ikeda

    居住地:福岡
    プロツアー出場回数:50回以上
    世界選手権出場回数:9
    2008年世界選手権出場資格:プロレベル
    GP/PTのトップ8:GP3回、PT3回
    マジック界での業績:
    プロツアーに長年出場してることです。

    スタンダード戦績:5-1
    スタンダードのデッキとその使用理由:
     ブライトニング・ビートダウン。私、本当はビートダウン好きなんですよ

    ブースター・ドラフト戦績:5-1
    ドラフトの戦略:
     白緑か白青のテンポ重視デッキが組みたいです

    エクステンデッド戦績:3-2-1
    エクステンデッドのデッキとその使用理由:
     親和。3勝さえすればいいし、もうメタゲームから外れてると思うので選びました。それに、このデッキはフェアリーに有利です

    このイベントに向けての準備と練習相手:
     家族(愛してるよ)がいて仕事が忙しいので、練習といってもトーナメントに出ただけです。手本にしているのは「ローリー」こと藤田剛史さんです。



     
  • 2008年世界選手権 各国代表チーム:トップ4チーム・プロフィール
    by Rich Hagon / Translated by YONEMURA “Pao” Kaoru
  •  大勝には理由がある-大勝したから、大勝したのだ。科学入門より。また、我々ライターがそれをたとえ話に使うのにも理由がある-当然の道理として、世界最強は順位板の上の方に吸い寄せられていくものだ。世界選手権の直前まで、2つのチームがトップに来ることが予想されていた。アメリカと日本の2つだ。まず彼ら、それから土曜日にその予想を覆そうと挑む残り2チームを紹介しよう。

    渡辺 雄也(スタンダード担当:神奈川)、大礒 正嗣(エクステンデッド担当:広島)、高桑 祥広(レガシー担当:神奈川)

     まずは日本、日本王者の大礒正嗣から行ってみよう。日本選手権の最後、祝福するプレイヤーたちの前でチーム戦のタイトルをメンフィスから持ち帰ると、ジョー・ナマスが現役時代に言った言葉を彷彿とさせる宣言をしたという。そう言うにはそれだけの裏付けがある。彼はプロツアーのトップ8に入賞することなんと6回、それに加えてグランプリで決勝卓に進んだこと9回という実績を持っているのだ。その宣言のいい影響を受けたのが、チームメイトの渡辺雄也と高桑祥広である。祥広は(2003年のグランプリ京都で4位に入賞しただけで)比較的無名だが、渡辺は去年ニューヨークで行なわれた世界選手権の場で、新人賞の栄冠を手にしている。チーム戦の4ラウンドではイギリスとアメリカを下し、オーストラリアと引き分けて21点の成績を残している。

    サム・ブラック (エクステンデッド), マイケル・ジェイコブ(スタンダード), ポール・チェオン(レガシー)

     チーム戦で日本に負けただけの3-1の成績を残しているのがアメリカ・チームだ。メキシコ、南アフリカ、ウクライナを下している。また3人とも3日間を通して十分な成績を残しており、安定の大切さを示している。アメリカ王者のマイク・ジェイコブは2年連続の参戦だが、去年の国内4位から2勝増やしたことになる。サム・ブラックの代表入りは初めてだが、彼はアメリカのマジックの聖地の一つウィスコンシン州マジソンで長い間マジックをプレイしていたベテランだ。全体を通して見れば、チームリーダーはポール・チェオンかもしれない。2006年のアメリカ王者であったチェオンはグランプリでもクラクフとバンクーバーで優勝など輝かしい成績を残している。彼ら個人個人の成績にもかかわらず、彼らは以前にもともに座りともに戦った経験があり、いいことが起こりそうだ。彼らは勝つより前にすでに楽しんでおり、優勝したならその楽しみも一入というものだろう。しかし、楽しめないことが一つある。アメリカ・チームの準決勝の相手は、天敵の日本なのだ。

    ウィリー・エデル(スタンダード), ヴァグナー・カサッティ(エクステンデッド), ギリェルメ・ミチェリ・デ・ルイズ(レガシー)

     ブラジル・チームの3人のうち2人は初出場だ。ルイズ・ギリェルメ・デ・ミチェリは土曜日に最長の名前であるということを言えなかった。パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサが個人戦で生き残っていたからである。ヴァグナー・カサッティはブラジル王者である。3人の中で一番経験の深いプレイヤーはウィリー・エデル、2006年のプロツアー・チャールストンとプロツアー・神戸で準優勝を収めており、2007年のインビテーショナルでも名前が挙がっている。暫定1位のブラジルは、準決勝でオーストラリアと対戦する。強敵の日本とアメリカは準決勝でつぶし合ってくれるので少しは楽になる。かも。

    アーロン・ニカストリ(エクステンデッド), ブランドン・ロー(スタンダード), ジャスティン・チェング(レガシー)

     オーストラリアは、世界選手権のヘッドラインに毎日姿を見せている。一つはアーロン・ニカストリの新人賞レース、もう一つはジャスティン・チェングのスタンダード6-0の記録だ。チームの残りはブランドン・ロー。準決勝に進出するためには土曜日の奮闘と、タイブレイカーでマレーシアに押し勝つことが必要だった。

     大礒とチェオン、渡辺とブラック、高桑とジェイコブ、メンバーを見れば戦前の予想でなぜあれだけ持ち上げられていたかはすぐ判ろうというもの。しかし来るべき土曜日、エデルの経験やニカストリの勢いが彼らをなぎ倒すかも知れない。

    スタンダード、
    エクステンデッド、
    レガシー。

    最後の戦いの幕が上がる。



     
  • Quarterfinal : 津村 健志(広島) vs. Hannes Kerem(エストニア)
    by Shuhei Nakamura
  • Round18、予選最終ラウンドでの対戦が準々決勝のこの場で再び。
    ケレムが雪辱か、津村がふたたび退けるか、

    Game 1

    後手、津村の初動が《思考囲い/Thoughtseize》という動きに対してケレムは《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart》、《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain》というキスキンの教科書通りの展開。だが第3ターンは土地が置けず、悲しく《ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender》をプレイするのみ。

    この好機に津村は《ウーナの末裔/Scion of Oona》からケレムの戦闘フェイズ中に意を決したタップアウト《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》を間に合わせ《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain》と貴重な1ターンをもぎ取ることに成功。残る津村のライフは5。

    ここからが本当の意味でのキスキン対フェアリーの戦いとなる。

    まずは《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》、
    これには《砕けた野望/Broken Ambitions》。

    次に《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》、
    重鎮に+3/+3能力を使わせた上で《苦悶のねじれ/Agony Warp》で討ち取り、
    徒党と《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》で場から退場。

    一進一退の攻防でいて津村がケレムのカードを上手く捌いているようで有利に見えるが、カードの引き増し要素の少ないフェアリーにとってまだこの程度では決定打とはならない。

    だが遂にその均衡が崩れうるカードが登場する。
    《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》。

    複数枚のカードを供給するプレインズウォーカー、もちろん津村の場にだ。
    追加のドローをし、ターンを返す。

    ケレムが祈るようにプレイしたのは今引いてきたであろう《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger》。これにカウンターは・・・ ない

    更には2体目の《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》も通ってしまう。
    ジェイスを使い潰し、新たなジェイスを設置するも解答策を見つけられなかった津村は速やかにカードを片付けだした。

    津村 0-1 ケレム

    Game 2

    先手の津村がキープ。ケレムがマリガンを選択。ケレムは重鎮、次ターンも重鎮と展開するが2枚目の土地が置けない。津村の方は静かに《変わり谷/Mutavault》を重ねていく。

    盤面に動きが出たのは第4ターン。変わり谷のブロックから《苦悶のねじれ/Agony Warp》で2対1交換。ようやくケレムも土地を引き出したが再度ねじれの2対1交換で場は《運命の大立者/Figure of Destiny》のみに。この大立者は《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》と相殺され、《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》とお供の重鎮、大立者は《蔓延/Infest》で退場。

    しかしケレムも引けない、更なる《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》。
    これを津村は通した上でリクルートされてきた重鎮共々《蔓延/Infest》し、大立者を《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》。遂にケレムの動きを止めた津村は《ウーナの末裔/Scion of Oona》のバックアップを受けた変わり谷達でケレムに止めをさした

    津村 1-1 ケレム

    Game 3

    両者ともキープ。重鎮、重鎮の展開に対して《蔓延/Infest》。

    その合間を縫って《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain》を召喚。続く《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》は津村の《砕けた野望/Broken Ambitions》がこれを許さない。

    激突で捲れた《皺だらけの主/Wizened Cenn》を下に送るケレム。決定打となる戦力を求めているのだろう、一方で津村は速やかに土地を下に送る。

    《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》にも同様に《砕けた野望/Broken Ambitions》、今度は両者とも土地を下に。

    そして現れる三度目のプレッシャーは《目覚ましヒバリ/Reveillark》。
    これを津村はカウンター出来ない。

    方針を切り替えて《ウーナの末裔/Scion of Oona》、《変わり谷/Mutavault》×2から隠し持っていた《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》、引いてきた《謎めいた命令/Cryptic Command》でダメージレースを挑むが、」津村のライフがわずか2に対して《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain》によって膨れ上がったケレムのライフは遠すぎた。

    津村 1-2 ケレム

    Game 4

    互いに先手、後手で若干枚のカードを入れ替える両者。
    津村がマリガンを選択し、ケレムはキープ。

    ケレムの初動は《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart》。ではなくて《運命の大立者/Figure of Destiny》。4ゲーム通じて初めて1ターン目に重鎮が出ないスタートとなった。

    津村の方もこれまでのゲームとは違う動きを見せる。4ゲーム目にしてようやくの2ターン目《苦花/Bitterblossom》が登場。

    更に《ウーナの末裔/Scion of Oona》でフェアリートークンを補強と完璧な廻りを見せつけ《損ない/Unmake》には駄目押しの《ウーナの末裔/Scion of Oona》2体目。

    トークン2体と末裔2体の戦列に《苦悶のねじれ/Agony Warp》でブロッカーを薙ぎ払いゲーム4は津村の完勝。

    津村 2-2 ケレム

    Game 5

    津村が1マリガン。

    ケレムの初動は《運命の大立者/Figure of Destiny》、《皺だらけの主/Wizened Cenn》。
    津村はいったん両方の攻撃を受けた上でケレムが追加戦力を躊躇わせてターンを返したのを確認した後、《恐怖/Terror》を大立者に、時間を稼ぎつつケレムに追加戦力を出させた上で2マナを残して満を持しての《蔓延/Infest》。

    だが、ここでケレムの用意したカードは2マナ残しての《幽体の行列/Spectral Procession》。残り2マナでは津村のデッキにこのカードをカウンター出来るカードは入っていない。

    次の《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger》こそ《砕けた野望/Broken Ambitions》できたものの激突でケレムが捲ったカードは《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》。ライフも僅かで場にもライブラリーにも解決策が残されていない津村は《苦悶のねじれ/Agony Warp》を下に送りつつドローを確認。

    最後の1ターンを稼ぐ《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》チャンプブロックにも《ひなびた小村/Rustic Clachan》補強とされては手を差し出すしかなかった。

    津村 2-3 ケレム

    Hannes Kerem(エストニア)、準決勝進出。



     
  • Quarterfinal : 浅原 晃(神奈川) vs. Antti Malin(フィンランド)
    by Daisuke Kawasaki
  • 2008年の冬、浅原 晃(神奈川)は真っ赤なジャージを身にまとって、アメリカの世界選手権に《苦花/Bitterblossom》を持ち込んだ。

    「ジャージ」という言葉は、浅原の中で「タキシード」と並んでシンボライズされている。浅原は、強い意志のあるデックを「タキシード」と呼び、メタの中心である、ありふれたデックを「ジャージ」と呼ぶ。

    機能的だけど、スタイリッシュじゃない、それがジャージだ。

    「デッキはジャージ、心はタキシード」と言い、独自に調整を重ねた青黒フェアリーであったとしても、自身のデックチョイスに多少の後ろめたさがあったのかもしれない。「ノーテゼレット」といっても、それは青黒フェアリーなのだから。

    だから、浅原は、真っ赤なジャージを身にまとって、アメリカの世界選手権に《苦花》を持ち込んだ。

    4年連続のトップ8を無念にも逃した、森 勝洋(大阪)と、共用の部屋着だった、真っ赤なジャージを。

    対戦する相手は、同じくフェアリーを使うAntti Malin(フィンランド)。

    Game 1

    先手のMalinは、早速2ターン目に《苦花》をセットする。

    対して、浅原は2ターン目から《変わり谷/Mutavault》で本体にアタックする。《苦花》対策の定石としてライフを攻めていく。

    一方でMalinは、浅原が2ターン目に《苦花》をキャストしてこないのをよいことに、2枚目の《苦花》。

    ここで浅原は小考するが、初志貫徹、まずは《変わり谷/Mutavault》をクリーチャー化、Malinのフェアリートークンを《コショウ煙/Peppersmoke》で除去し、アドバンテージを保ったまま、Malinのライフを削りに行く。ここで、Malinのライフは15。

    このままだと《苦花》による定期的ダメージを、フェアリートークンによるダメージの加速度が上回る前に、ゲームが終了してしまうと考えたMalinは《変わり谷》で攻撃し、損益分岐点を下げていく。

    浅原、ドロー、セットランド、でゴー。初めてのノーアクションで返してきた浅原に対して《変わり谷》とフェアリートークン2体でアタックする。

    《変わり谷》同士をぶつけ合い、ダメージスタック前に「《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》用の2マナを残しつつ」相手の《変わり谷》に《コショウ煙》をキャストし、枚数でもマナ数でも大きくアドバンテージを稼ぐビッグプレイを見せる。

    このターンの終了時に、浅原は《呪文づまりのスプライト》を場に送り、さらに、続くMalinのトークン4体のブロックも本体に通して、ターンエンドに《ウーナの末裔/Scion of Oona》をキャストする。

    これによって、ボードでは大きくリードした形の浅原は、2枚目の《ウーナの末裔》をドローと恵まれたかたちになる。

    この《ウーナの末裔》を握ったまま、浅原は《呪文づまりのスプライト》でアタックする。これをMalinはブロックせず、残りライフは7。

    このタイミングで《ウーナの末裔》をキャストして、ライフをさらに1点削ることも可能だったのだが、浅原はできる限り相手のターンに呪文をキャストし、マナを使わせることを徹底する。

    Malinのアップキープに、やはり2マナ残しての《ウーナの末裔》。この時点で手札には《謎めいた命令/Cryptic Command》《呪文づまりのスプライト》ともっていたMalinだったが、自分のターンにマナをタップしてしまい浅原に好きなようにアクションさせてしまうことを嫌って、長考の末にこれを通すこととする。

    Malinは、6体のトークンでアタックし、浅原は、そのうちの2体を《ウーナの末裔》でブロックする。浅原のライフは8。Malinは土地をセットしてターンを終了する。

    そして、Malinは浅原に習って、浅原のアップキープに《謎めいた命令》をキャストし、クリーチャーをすべてタップしつつ浅原の《フェアリーの集会場/Faerie Conclave》をバウンスすることを選択するが、浅原が《呪文づまりのスプライト》を持っていたことで、「浅原先生の《苦花》対策教室」は終了となった。

    浅原 1-0 Malin

    そういえば、モーニングタイド発売直後に、「《苦花》は実質2ターンキルだ」と2ターン目の《苦花》の強さを早々に予言していたのは、栗原と三田村だったか。

    初日は6-0と好成績だったものの、二日目のドラフトでは3-3と失速。そんな浅原が、三日目のエクステンデッドに持ち込んだのは、やはり「ジャージ」の親和エルフだった。

    《領土を滅ぼすもの》《鏡の精体》に代表される「タキシード」テクニックは詰め込まれているけれど、やはり「ジャージ」は「ジャージ」である。

    ただ、浅原が三日目に使用したエルフは、三田村 和弥(千葉)のカードを使用したものであり「Mitamura Soul」と名付けていた。

    そのエルフが、浅原を2度目の世界選手権トップ8に導いた。

    Game 2

    Sideboard:浅原

    In

    《思考囲い》×3

    Out

    《誘惑蒔き》×2
    《砕けた野望》×1

    Sideboard:Malin

    In

    《エレンドラ谷の大魔導師》×2
    《ジェイス・ベレレン》×2
    《思考の粉砕》×1
    《誘惑蒔き》×1

    Out

    《苦悶のねじれ》×3
    《ヴェンディリオン三人衆》×2
    《霊魂放逐》×1

    後手の浅原は1ターン目に《思考囲い/Thoughtseize》をキャストする。

    Malinの手札は、《変わり谷》《沈んだ廃墟/Sunken Ruins》×2の土地3枚に《謎めいた命令》と《呪文づまりのスプライト》が2枚というもの。

    浅原はここから《呪文づまりのスプライト》をディスカードさせる。

    Malinのライブラリートップは、《思考囲い》。Malinはフィルターランドから黒マナを捻出し、これをキャスト。浅原の《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》をディスカードさせてマナバーンをくらう。

    そしてMalinは浅原のターン終了時に《呪文づまりのスプライト》をキャストし、続く浅原のアップキープに、《謎めいた命令》のマナがないうちにと《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をキャストする。

    だが、浅原の前のターンのトップデックが《苦悶のねじれ》。あわれ《霧縛りの徒党》は役割を果たすことなく墓地へと落ちていく。浅原は初手の懸念材料であった4枚目の土地をひき、これをセットす。

    Malinはひいてきた《思考囲い》をキャストすると、浅原の手札は《謎めいた命令》が2枚に《霧縛りの徒党》《恐怖》と除去が1枚増えた手札。そう、浅原は2ターン連続で除去をひいていたのだ。Malinは悩んだ末に手出しの《謎めいた命令》をディスカード。

    Malinがアタックしてきた《変わり谷》を浅原が《恐怖》で除去すると、浅原は土地をひかず、Malinは土地しかひかない状態で、3ターンをほどドローゴーが続く。

    ここで先に行動したのが、Malin。

    7マナある状態で、4マナ残しての《ジェイス・ベレレン》。5マナの浅原は、ここでX=4の《砕けた野望》をキャストし、《謎めいた命令》を温存しつつ、Malinの行動を縛る。Malinの《謎めいた命令》をケアした行動だ。

    この激突のライブラリートップが《苦花》。これをキャストし、好調の浅原。さらに《思考囲い》で、《変わり谷》《謎めいた命令》という手札から《謎めいた命令》を落とす。

    しかし、《ジェイス・ベレレン》は、この準々決勝というプレインにたどり着いてしまっている。

    この《ジェイス・ベレレン》がMalinに続けて手札を与える。

    そして《エレンドラ谷の大魔導師》をキャストする。浅原も《霧縛りの徒党》をキャストし《苦花》を覇権、これを《ジェイス・ベレレン》にむけてアタックするのだが、頑強をもった《エレンドラ谷の大魔導師》はそうそう容易に突破させてくれない。

    浅原が《霧縛りの徒党》の2体目を追加したところで、《ジェイス・ベレレン》の忠誠カウンターは3つ。

    Malinは、+2能力で、お互いにドローすることを選択し、忠誠度を5とし、片方の《霧縛りの徒党》の攻撃を耐えきれることを確認してから、X=4の《思考の粉砕》。これで浅原の手札はゼロに。

    そして《誘惑蒔き》で《霧縛りの徒党》を1枚奪い去る。

    浅原のライブラリートップは《苦悶のねじれ》。

    Malin “Nice Card!”

    《霧縛りの徒党》を取り返し《ジェイス・ベレレン》の忠誠度を1にまで落とす。

    再び《ジェイス・ベレレン》でお互いにドローすることを選択すると、浅原はここで《霧縛りの徒党》をドローする。

    浅原は、未だ居座る《エレンドラ谷の大魔導師》のブロックも考えると、《ジェイス・ベレレン》をつぶしに行くのは効率が悪いと判断し、Malin本体へと、2体の《霧縛りの徒党》と1体残っていたフェアリートークンでアタックする。

    しかし《霧縛りの徒党》をドローしていたのは浅原だけではなかった。

    Malinは《霧縛りの徒党》をキャストし《エレンドラ谷の大魔導師》を覇権する。浅原は、ここでマナを浮かせ、ダメージスタック後に《霧縛りの徒党》にブロックされた《霧縛りの徒党》に《霧縛りの徒党》を覇権するという、どの《霧縛りの徒党》がどの《霧縛りの徒党》だか、字面では全然わからないプレイをする。

    《ジェイス・ベレレン》はMalinに《霧縛りの徒党》だけでなく、《砕けた野望》も与えていた。

    浅原の最後の《霧縛りの徒党》が《誘惑蒔き》されると、浅原はカードを片付ける。

    浅原 1-1 Malin

    早々に、トップ8のラインである4敗1分にたどり着き、残りを負け無しで抜けなければ行けなくなった浅原の、17ラウンドの対戦相手は、Olivier Ruel(フランス)だった。

    三日目の時点で、Player of The Yearレース首位の中村 修平(大阪)の獲得できる最大得点が確定していたため、Olivierも、歴史的な大逆転をするために必要な点数がほぼはっきりしていた。

    その為の最低条件は、トップ8に入賞すること。そして、Olivierはその条件を、負けが許されないものの、まだ満たすチャンスを残していた。

    自身が殿堂入りした世界選手権。

    この世界選手権で、一度ならず取り逃したPoYというタイトルを、そして、願わくば世界王者というタイトルを。

    これは、Olivierの、そしてフランスコミュニティの願いだった。

    不思議とこのマッチアップはフィーチャリングされなかったものの、幸いにもトーナメントエリアの端でおこなわれ、通路には、兄のAntoine Ruel(フランス)やGuillaum Wafo-tapa(フランス)といったフランスの、そしてOlivierを敬愛する様々な国のプレイヤーが集まって観戦した。

    きっと、観戦者たちは信じていただろう。Olivierがトップ8に入賞し、PoYを逆転するという物語を。

    その物語は、浅原の《領土を滅ぼすもの》によって、終演した。

    Game 3

    Sideboard:浅原

    In

    《砕けた野望》×1

    Out

    《コショウ煙》×1

    Sideboard:Malin

    In

    《思案》×1
    《苦悶のねじれ》×1
    《蔓延》×1

    Out

    《霧縛りの徒党》×1
    《エレンドラ谷の大魔導師》×1
    《霊魂放逐》×1

    先手の浅原は、今度はきっちりMalinの《苦花》を《砕けた野望》で打ち消す。

    続くカウンターを持たない浅原は、どうせ次のターンの《苦花》をケアできないのならばと、先を見越して《変わり谷》でMalinのライフを削っておく。

    Malinは土地が2枚でストップしてしまうが、しかし、この隙に2枚目の《苦花》をセットする。浅原は、土地事故の隙を大きくさせる為に、自身のターンに《謎めいた命令》で《苦花》をバウンスする。

    しかし、無情にも神はMalinに土地をもたらす。

    《思案》でこの先のマナ事情が安泰であることを確認した上で、Malinは《苦花》をキャストする。浅原は、Game 1から一転して自身のメインターンでの行動をする。相手がマナをタップし続けてくれているのなら、呪文を通し続けない理由もないのだ。《変わり谷》を覇権しながらの《霧縛りの徒党》。

    やはり、というか、この《霧縛りの徒党》を奪い去る《誘惑蒔き》を、Malinは持っている。浅原も、除去をドローし、誘惑振り切って《霧縛りの徒党》アタック...といきたいところだが、《呪文づまりのスプライト》をキャストし、相手のトークンを1体《コショウ煙》で除去することでドローを進めても、ひいてくるのは時すでに遅い《苦花》のみ。

    Malinが、X=2の《思考の粉砕》で浅原の手札を丸裸にした上で、アップキープに《霧縛りの徒党》をキャストすると、負けず嫌いの浅原は、一応考えるふりだけはした。

    浅原 1-2 Malin

    18ラウンドでの、Luiz Guilherme De Michielli(ブラジル)戦に勝利することで、浅原は、自身2度目のトップ8を確定させた。

    なにかと、2005年の世界選手権と重ね合わされることの多いこの大会。

    その「2005年の再来」という、日本勢の物語。

    浅原がOlivierへ勝利し、中村がPoYを確定させたことで、より現実味を帯びたこの物語が、浅原のトップ8でさらに深化した。

    浅原の勝利を、トップ8入賞を、観戦していた日本勢が大いに喜び、祝福した。

    そのテーブルの向かい側で、Michielliを、Willy Edel(ブラジル)や、Paulo Vitor Da Rosa(ブラジル)といったブラジル勢が囲んでいた。そして、肩を抱き、頷きあった。

    彼らには彼らの物語があった。

    2002年以来の、南米勢の再興という物語が。

    Game 4

    Sideboard:浅原

    In

    《砕けた野望》×2

    Out

    《コショウ煙》×2
    《苦悶のねじれ》×1

    Sideboard:Malin

    In

    《霊魂放逐》×1
    《蔓延》×1

    Out

    《エレンドラ谷の大魔導師》×1
    《苦悶のねじれ》×1

    先手は浅原。

    《ウーナの末裔》×2
    《謎めいた命令》
    《苦花》
    《呪文づまりのスプライト》

    に土地が2枚という初手をキープする浅原。

    しかし、Malinは、1ターン目の《思考囲い》で浅原の《苦花》をたたき落とし、自身は2ターン目に《苦花》をキャストする。

    浅原は《呪文づまりのスプライト》《ウーナの末裔》と順々にキャストし、ライフを削っていくプランを構築するのだが、2体目の《ウーナの末裔》をキャストする前に《苦悶のねじれ》で1体を除去されてしまう。

    しかし、Malinは土地をひかない。次のターンの攻撃で墓地に送られてしまうことを承知で《ジェイス・ベレレン》をキャストするが、それでもまだ、4枚目の土地をひかない。

    浅原は、ライフを削るプランと、《ジェイス・ベレレン》を破壊するプランで長考するが、結果的に相手の土地が止まっている状態を後押しするべく、《ジェイス・ベレレン》へと攻撃する。

    まだ、Malinは土地をひかない。

    浅原の攻撃を《苦花》のトークンで押しとどめつつ、土地をひくチャンスを淡々と待つ。浅原も、3/3となる《変わり谷》のみでの攻撃にとどめる。

    ここで、ついに、Malinが《変わり谷》をひく。

    これで、プランニングの目処がついたMalinは、ライフが7なのもいとわずに《思考囲い》をプレイ。浅原はこれを《謎めいた命令》でカウンターしつつ、次のターンでの攻撃で勝負を決めようと考えるが、Malinはきっちり《呪文づまりのスプライト》でカウンターする。

    浅原は、2体の《変わり谷》と2/2となっている《呪文づまりのスプライト》でアタックする。どれかを討ち取る形でブロックすると、《苦花》死する前に殴りきるだけのクロックが足りないMalinは、3体のトークンでチャンプブロックをおこなう。

    確実に優位をキープしている浅原は、その優位が確定的であるかを確認するために、《思考囲い》をキャストする。

    そこに広がるのは絶望的な風景だった。

    3枚の《誘惑蒔き》なんて見たくなかった。

    1枚をディスカードさせるものの、ついに4マナにたどり着いているMalinは《ウーナの末裔》を《誘惑蒔き》で奪う。

    浅原の場の優位を陰で支えていた《ウーナの末裔》が、今度は浅原に牙をむく。浅原のフェアリーたちを守っていた被覆能力が、こんどはMalinの《誘惑蒔き》を守り抜く。

    2枚目の《誘惑蒔き》は《砕けた野望》でカウンターしたが、それで手札がゼロになってしまったことで、詰みとなり、浅原の世界選手権はここで終了した。

    浅原 1-3 Malin

    物語を紡ぐ事とデュエルをする事は同じだ。

    人と人との意志のぶつかり合いが物語を紡ぐとすれば、デュエルをする事も物語を紡ぐ事と同意といっても大げさではないだろう。

    すべてのテーブルに物語があるといっても過言ではない、すべてのプレイヤーが自分自身の物語を背景にデュエルを行っている。

    しかし、物語を紡ぐのは、人と人の意志のぶつかり合いだけではない。

    人と人が意志を受け継ぎ、継承していくこと自体が大きな物語となる。

    すべての敗北していったプレイヤーにも、物語がある。

    勝利したプレイヤーは、彼らの物語を引き継ぎ、そして自分の物語を紡いでいく。

    森 勝洋のジャージを着た浅原の物語はここで終わりである。

    決勝に残しておいた、「スーツを着た」浅原の物語は、また、次の機会に。



     
  • Semifinal : 池田 剛(福岡) vs. Jamie Parke(アメリカ)
    by Shuhei Nakamura
  • ジェイミー・パークがプレイするデッキは5色コントロール。PTハリウッドでマヌエル・ブッチャー、ギヨーム・ワフォ=タパらが製作、プレイした「クイッケントースト」以来、トーナメントの常連となっている。

    パークが持ち込んだバージョンは一般的な《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》ではなく替わりにトーナメントではあまり見られない《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》に複数枚の魔除け、そして《残酷な根本原理/Cruel Ultimatum》が投入されたかたちの「アラーラの断片」を大きくフィーチャーしたもの。

    一方で池田剛が駆るのは同じくアラーラの注目カード《荒廃稲妻/Blightning》に代表に体現される赤黒の攻撃的なデッキ。フェアリーのようなコントロールデッキに対して抜群の相性を誇るが果たして5色コントロールには果たしてどうなのだろうか?

    池田は日の丸を背負った最後の一人。準々決勝で散った津村、浅原
    準決勝で涙を呑んだ日本代表の分まで頑張ってもらいところである。

    Game 1

    先攻を取ったのはパーク。

    5色コントロールのセオリー通り、ゆっくり土地を置いてターンを渡すパークに対して池田は2ターン目の《運命の大立者/Figure of Destiny》からパークがプレイした《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》には《炎の投げ槍/Flame Javelin》を浴びせかけ攻撃の手を緩めない。

    だが、池田のデッキが攻めならばパークのデッキ受けて流すデッキ。
    続く大立者は攻撃後の強化スタックで《糾弾/Condemn》し、続く《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》には《謎めいた命令/Cryptic Command》でカウンター。

    攻撃の手が止まってしまい、《ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment》をクリーチャー化して攻撃することしか出来ない池田を尻目にターンエンドに悠々と《雲打ち/Cloudthresher》をプレイ。その雲打ちに2回殴られ、それでも手札が土地だらけの池田はそれを公開して投了した。

    池田 0-1 パーク

    Game 2

    《鮮烈な草地/Vivid Meadow》、《鮮烈な小川/Vivid Creek》というパークの動きに対して先攻している池田は2ターン目に《苦花/Bitterblossom》、3ターン目に《ボガートの突撃隊/Boggart Ram-Gang》、パークがプレイした《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》には《叫び大口/Shriekmaw》を想起でプレイして合わせると抜群の展開を見せる。

    しかし、パークはその全てにおいて一段上の解答を用意していたのだ。

    突撃隊には《糾弾/Condemn》、
    苦花に対しては《ジャンドの魔除け/Jund Charm》、
    そして《熟考漂い/Mulldrifter》から、《雲打ち/Cloudthresher》で今一度フェアリートークンを一掃。

    池田が用意した起死回生の《悪意に満ちた幻視/Spiteful Visions》も効果がアップキープのスタック上にある間に《エスパーの魔除け/Esper Charm》で叩き割るという完璧ぶり。

    止めとばかりに《謎めいた命令/Cryptic Command》でフェアリートークンをバウンスすると雲打ちが止めれない池田は投了。

    池田 0-2 パーク

    Game 3

    もはや後が無い池田なのだが初手は芳しくないもの。悩んだ末にマリガンを選択し6枚を引き直すと今度は土地が無く更にマリガン。結局5枚の手札で第3ゲームを戦う事になった。

    パークは1度マリガンの後、キープを宣言。

    初動はやはり池田、《ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment》×2から3ターン目に《ボガートの突撃隊/Boggart Ram-Gang》。しかしこれは三度目の《糾弾/Condemn》で場外へ、そしてプレイされるは《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》。

    池田も《苦花/Bitterblossom》トップデッキでこれに対応したいところだがいかんせん修道僧を討ち取るのに必要なフェアリーの頭数を揃えるまでには時間がかかりすぎる。

    せっかく引き込んだ《炎の投げ槍/Flame Javelin》はカウンターを警戒してパークのアップキープに打ち込むがやはりというか無情にも《謎めいた命令/Cryptic Command》で手札差は広がるばかり。続いて2体目の修道僧が登場し、《雲打ち/Cloudthresher》がトークンと共に池田の最後の抵抗を摘み取った。

    池田 0-3 パーク

    ジェイミー・パーク、決勝に進出。



     
  • Semifinal : Antti Malin(フィンランド) vs. Hannes Kerem(エストニア)
    by Daisuke Kawasaki
  • 「流れ」というものは本当にあるのだろうか。

    そんなものは、オカルトで、後からなんとでも後付で理由付けができると言われてしまえば、たしかにその通りなのだが、それも夢がないのであると思って話を続けよう。

    この世界選手権では、日本勢は、非常に「勢いに乗っていた」。国全体で勢いに乗っていたといっていいだろう。

    トップ8に3人を輩出し、国別選手権もプレーオフに進出した。PoYも安泰であり、この大会で、久々に日本人プロツアーチャンピオンが輩出されるのでは、そんな期待を抱かせる「勢い」があった。

    だが、準々決勝で、ふたりの日本人が敗北し、プレーオフも日本の出番がなくなってしまったことで、その勢いは衰えてしまったのではないかと、思わされる。

    果たして、勢いはどこでかわってしまったのだろうか?

    その日本の勢いをかえた、直接の理由はこの二人にあるのかもしれない。

    Antti Malin(フィンランド)とHannes Kerem(エストニア)。

    この戦いを制したプレイヤーこそ「勢いに乗っている」と評価するにふさわしいだろう。

    Game 1

    1ターン目に《運命の大立者/Figure of Destiny》2ターン目に《メドウグレインの騎士/Knight of Meadowgrain》という好調なスタートを切るKerem。

    さすがに3ターン目の《運命の大立者》は《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》でカウンターされるものの、さらに《ブレンタンの炉の世話人》を追加する。

    ここで土地が止まってしまうものの、Malinも大きなアクションが無い。Keremは、さらに《メドウグレインの騎士》を追加する。

    この攻撃を押しとどめる為に、Malinは攻撃に対応して《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をキャストするのだが、これが、ちょうどKeremが3枚目の土地をひいた瞬間。

    覇権する対象が《呪文づまりのスプライト》しかいないアグレッシブな《霧縛りの徒党》だったため、これを《損ない/Unmake》されてしまう。

    これで、ライフは一気に4まで削られてしまう。

    Malinは2枚の《謎めいた命令/Cryptic Command》で時間を稼ぎつつ《苦花/Bitterblossom》を設置するのだが、当然、4点のライフで、30を超えようかというライフを削りきるのは厳しすぎる条件だった。

    Kerem 1-0 Malin

    Game 2

    1ターン目《ゴールドメドウの重鎮/Goldmeadow Stalwart》、2ターン目《メドウグレインの騎士》という再びのロケットスタートのKerem。

    だが、今度はMalinも、2ターン目に《苦花》をキャストしている。

    さらにこの2体によるダメージを《苦悶のねじれ/Agony Warp》でさばくというすばらしい展開。

    しかし、ここでマナのない隙にキャストされてしまった《幽体の行列/Spectral Procession》がMalinを追い詰める。

    すでに、Malinも2体のトークンがある状況なので、数で一気に押されてしまうと言うパターンだけは回避できるが、序盤に《苦花》を設置したアドバンテージを失ってしまうのはビートダウン相手にはやはり厳しい。

    この状況を回避するべく《霧縛りの徒党》を、今度は《苦花》もしくはフェアリートークンという複数の覇権先をもった状態で、キャストするが、結局、覇権の効果にスタックでマナを出されて《霧縛りの徒党》自体を《損ない》されてしまう。

    2匹目の《霧縛りの徒党》こそ、無事レッドゾーンに送り込むことができるようになるが、Keremも複数の《損ない》と《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger》でダメージレースに持ち込む。

    《誘惑蒔き》を活用し、なんとか場を平らにして、《霧縛りの徒党》が殴り続けられるような場を作るのに成功するMalinだったが、しかし、キスキントークンを《誘惑蒔き/Sower of Temptation》でブロックしたところで、《ひなびた小村/Rustic Clachan》によって相打ちをとられてしまう。

    さらに、泣きっ面に蜂とばかりに《幽体の行列》のキャスト。

    あと1回アタックできれば...というところで、完全に空中が止まってしまったMalin。

    さらに、《目覚ましヒバリ》をキャストされた次のターンに《霊魂放逐/Remove Soul》をひくというちぐはぐなドロー。

    そして、《黄金のたてがみのアジャニ/Ajani Goldmane》は《霊魂放逐》ではカウンターできないのであった。

    Kerem 2-0 Malin

    2ゲームを圧倒的な勢いで先取したKerem。

    通常のスイスラウンドであれば、ここでゲームが決まっている。

    しかし、プロツアーは3本先取。

    そして、この3本先取というルールが過去に多くのドラマを生み出してきた。

    ここで、もう一席の結果が決まり、テレビマッチのための準備として、席の移動を含め、しばしの間ができる。

    もしも、勢いというものがあるのなら、この「空白の時間」が勢いを変えるのか。

    少なくとも、Malinはそう願っているだろう。

    Game 3

    Malinは、プレイ中に常に力強く話し続けている。

    シャッフルしたデックを渡すときは、「グッドラック」と力強く、そして、ライフの変化があるときは、必ず、そのライフの点数を力強く伝え、「OK」と確認するのだ。

    そして、Keremのマリガンにも声をかける。

    Malin ”How bad?”

    3ゲーム続けての《運命の大立者》と勢いに衰えを見せないKerem。

    続いて《皺だらけの主/Wizened Cenn》とブン回りの気配を見せるが、さすがにMalinは《霊魂放逐》でこれをゆるさない。続くターンの《メドウグレインの騎士》も、《変わり谷》を活用して《呪文づまりのスプライト》でカウンターする。

    こうして、いまだKeremの唯一の戦力である《運命の大立者》なのだが、これも、2/2から4/4に出世させられるタイミングで《苦悶のねじれ》で除去されてしまう。

    だが、Malinも決して勢いをものにしたわけではなく、土地が止まってしまうのであった。

    いや、むしろ、これこそ、勢いがある状態と言えるのかもしれない。

    なぜなら、KeremはMalinが土地が止まっている間、《黄金のたてがみのアジャニ》の他に何もひかなかったのだ。

    Malinも《呪文づまりのスプライト》しかコントロールしていない為、《黄金のたてがみのアジャニ》の忠誠カウンターは増えも減りもせず、Keremの引きはじめた後続は次々カウンターされ、Keremのライフだけが増えていく。

    この膠着を破ったのは、やはり《苦花》だった。

    じわじわと、お互いのライフが減り始める。

    Keremは、《目覚ましヒバリ》を引き当て、これをキャストする。

    しかし、ここでついにMalinが土地をひいてしまう。そして《目覚ましヒバリ》に《誘惑蒔き》。

    《霧縛りの徒党》まで追加され、《黄金のたてがみのアジャニ》も破壊されてしまうと、もはや《運命の大立者》1体でどうにかなる状況ではなくなっていた。

    Kerem 2-1 Malin

    Game 4

    MalinはKeremのデックをシャッフルすると、強く、にらみつけるように言う。

    Malin “Goodluck”

    4度、1ターン目は《運命の大立者》。

    さらに、やはりの《メドウグレインの騎士》。

    だが、Malinも、2ターン目に《苦花》をキャストし、3ターン目には《蔓延/Infest》で場を一掃する。

    大量破壊後に、4マナ使用してキャストした《ゴールドメドウの重鎮》は《誘惑蒔き》されてしまうが、フルタップの隙に、今度は《雲山羊のレインジャー》をキャストする。

    《雲山羊のレインジャー》は《苦悶のねじれ》で処理され、《皺だらけの主》は《呪文づまりのスプライト》でカウンターされてしまった為、3体の1/1トークンだけとなる。

    今度は《メドウグレインの騎士》をキャスト。

    ここで、手札の枚数(1枚)を確認するMalin。枚数をきいてから、さらに質問を続ける。

    Malin “Good Hand?”

    これには、Keremも失笑しながら返答する。

    Kerem “Always”

    Malinは《誘惑蒔き》を《メドウグレインの騎士》へ。

    ここまで除去を引き出す為に、ためにためた「Good Hand」である《目覚ましヒバリ》を満を持してキャストするKerem。

    Malinは、自身のターンに《謎めいた命令》を見せて投了を促す。

    だが、場に並んだクリーチャーのパワーを合計すると、10点で、12点のKeremのライフに足りない。

    Malin “You are 12?Not enough”

    2点程度のダメージソースなど、《苦花》さえあれば、いつか間に合うものだが。

    Kerem 2-2 Malin

    Game 5

    土地ばかりの手札をマリガンするKerem。

    Malin “Problem?”

    Kerem ”No problem.Not enough...”

    Malinの軽口に対応しながらも、盛んに手を拭くKerem。一度は目前までせまった勝利が、今にもこぼれ落ちそうになっているのだ。

    マリガン後のハンドは、土地が多めだったものの、このマッチの全部のゲームで1ターン目に《運命の大立者》がでたという記録を打ち立てられるものだった。

    2ターン目、3ターン目と、《運命の大者》の強化だけでターンを返し続けるKerem。なぜなら、2マナ3マナでキャスト出来るスペルが手札にないからだ。

    一方で、Malinは、2ターン目に《苦花》をキャストする。完全に勢いを取り戻したようだ。

    目下、邪魔者である4/4の《運命の大立者》も、4ターン目に《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》をカウンターするついでに、バウンスし、再キャストされたところを《苦悶のねじれ》で除去する。

    そして《目覚ましヒバリ》を《霊魂放逐》でカウンターしたところで、Malinは攻勢に転じる。

    Malin “17?ok?”

    続くターンの、Keremの《皺だらけの主》は気にせずに、今度は、トークン2体で攻撃する。

    Malin “15?ok?”

    Keremのアップキープに、Malinは《霧縛りの徒党》でトークンを覇権、Keremの行動を阻害しつつ、クロックを強化する。

    《霧縛りの徒党》《変わり谷》トークン2体のアタックに対して、Keremは《変わり谷》を《皺だらけの主》でブロックする。

    Malin “9?ok?”

    Keremは、《ゴールドメドウの重鎮》をキャストし、残った3マナで《忘却の輪》をキャストするのだが、これは《呪文づまりのスプライト》されてしまう。

    Malinは、トークン3体と、《霧縛りの徒党》《呪文づまりのスプライト》を、青いレッドゾーンに送り込む。

    Malin “1?ok?”

    Kerem 2-3 Malin

    勢いというものが、もしも本当にあるのならば、Malinはテレビマッチの待ち時間の休憩中に流れを変えることに成功したと言えるだろう。

    勢いなんていうものは後付だが、でも、それだけで片付けてしまうのは夢がない。

    完全に勢いにのった形のMalin。

    ここで、流れに乗って、Malinは世界王者となりたいところ。

    だが、しかし、決勝の相手は、今年一年間プロツアー・チャンピオンを輩出し続け、「国全体で勢いのある」アメリカのJamie Parkeである。



     
  • Team Semifinal : 日本代表 vs. アメリカ代表
    by Daisuke Kawasaki
  • 日本選手権の終了後に、大礒 正嗣(広島)は宣言した。

    大礒 「日本代表を、優勝させて見せます」

    その言葉を、誰もが大口だと思わなかった。それどころか、大礒ならば現実にしてくれるはずだと、強く信じた。

    たぶん、誰よりも強く信じていたのは、チームメイトの高桑 祥広(神奈川)だったのではないか。

    高桑 「チームメイトが勝ってくれるから、負けられる」

    と、「省エネ」であることを主張する高桑。しかし、チーム戦での連敗が目立っているだけで、高桑自体は、むしろ大礒と渡辺が失速気味だったエクステンデッドでは、4勝をあげ、きちりとお互いの補完関係を保っているのだ。

    そして、そのことをある意味もっとも強く意識しているのは、渡辺 雄也(神奈川)だろう。

    渡辺 「僕は、勝たなくちゃいけないですから」

    チームの誰もがスタンダードキングと認める渡辺は、当然、スタンダードを割り振られた。

    大礒も高桑も、十分な練習時間をとることができるかどうかは難しい。

    だから、スタンダードは一番勝ち星が確実な渡辺に割り振られたのだ。

    渡辺は、それを栄誉と考え、責務を全うしようと考えている。

    まずは、そんなスタンダードキングのマッチアップを見ていこう。

    Game 1

    渡辺 「代表戦は《思考囲い》と《苦花》を手に吸い付くように引けるんですよ」

    渡辺は、1ターン目に《思考囲い》で《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》に《苦花/Bitterblossom》《雲山羊のレインジャー/Cloudgoat Ranger》が2枚ずつに、土地という手札から《潮の虚ろの漕ぎ手》をディスカードさせると、2ターン目に《苦花/Bitterblossom》を置くという、理想的な展開を見せる。

    Jacobは、3ターン目には《潮の虚ろの漕ぎ手》をトップデックして見せるのだが、渡辺の手札には《苦悶のねじれ/Agony Warp》があり、《霧縛りの徒党》のような一番消し去りたいカードを消せずに《苦悶のねじれ》をリムーブするしかない。

    そして、渡辺は2枚の《霧縛りの徒党》を次々にキャストし、2枚目では《苦花》を覇権し、「逆ロック」状態を回避する。Jacobも《苦花》をキャストしているものの、そのトークンは《霧縛りの徒党》へのチャンプブロックに費やされ続けているのだから。

    ほどなくして、Jacobはサイドボードのプランを練りはじめた。

    渡辺 1-0 Jacob

    渡辺 「1本とりました!」

    チームで最年少の渡辺は、ふたりにそう伝える。

    そのころ「リーダー」大礒は、《虚空の杯/Chalice of the Void》をX=1で置いた状態で《滅び/Damnation》をうったところだった。

    エルフを使用するサムにとって、ほぼ八方ふさがりに近い状態。

    一方、高桑もX=1の《虚空の杯》を置いていた。そして、《三なる宝球/Trinisphere》をキャスト。ここで、Cheonが、ジャッジを呼び《虚空の杯》と《三なる宝球》によるコスト変化による相互作用について質問していた。

    そんな中で、サムは大礒に投了した。

    大礒 1-0 サム

    結局、相互作用はない(1マナの呪文を3マナでキャストしても、カウンターされる)ことにCheonは納得する。

    そして、Cheonはデックの代名詞とも言える《行き詰まり/Standstill》をキャストする。

    Cheonの手札は6枚。

    高桑は、すでに《虚空の杯》によって「まったく利用価値のない」《悟りの教示者/Enlightened Tutor》を、Cheonのディスカードフェイズにキャストする。

    当然《悟りの教示者》は高桑の《虚空の杯》によってカウンターされるが、かわりに《行き詰まり》をトリガーさせ、本来は3枚のカードになっていたこのエンチャントを、3枚ひいて2枚捨てる、手札を整理するだけの効果とすることに成功する。

    《行き詰まり》がスタンダードやブロック構築で現役であったオデッセイ発売当時では、ごく当たり前におこなわれていたテクニックだが、不慣れなレガシーでもきちんと応用して使ってくるあたり、「マジックセンスに定評のある」高桑の面目躍如といったところか。

    あとは、成績さえ伴えば。

    そんな応酬がおこなわれているうちに、Jacobと渡辺はシャッフルを終えた。

    それでは、渡辺のデュエルに戻ろう。

    Game 2

    再び、1ターン目に《思考囲い》を打ち込む渡辺。手札には《苦花》もあり、またもロケットスタートの準備は万端だ。

    先攻のJacobは、それを許すまいと、2ターン目に《潮の虚ろの漕ぎ手》をキャスト。渡辺の手札の《苦花》をみつけ、それをキャッチしようと思うのだが...ここにはまたもや《苦悶のねじれ》が。

    無事渡辺は2ターン目に《苦花》をキャストする。

    こうなってしまったら、積極的にライフを攻めていかなければならないのは万国共通。Jacobは《栄光の頌歌/Glorious Anthem》をキャストし《潮の虚ろの漕ぎ手》を3/3にすると、渡辺のライフを削りにかかる。

    渡辺は、これをトークンによるチャンプブロックでしのぎ続け、着々と力をためていく。

    そのころ、高桑は《ハルマゲドン/Armageddon》を、5マナ払った、いわゆる生《Force of Will》でカウンターされていた。

    閑話休題。

    渡辺は、Jacobの後続を《謎めいた命令》と《砕けた野望》で退け続ける。

    そして、機を見ての《誘惑蒔き/Sower of Temptation》。

    これによって、Jacobの攻め手である《潮の虚ろの漕ぎ手/Tidehollow Sculler》を奪い去り、それらをレッドゾーンに送り込むと、渡辺は、力強くチームメイトに声をかけた。

    渡辺 「勝ちました!」

    渡辺 2-0 Jacob

    日本代表 1-0 アメリカ代表

    そのころ、高桑は《ハルマゲドン》を、3枚目の《Force of Will》でカウンターされていた。

    大礒 「もってるねぇ、よく」

    そんな大礒も、Game 2は非常に厳しい状況だった。

    ■大礒 正嗣(広島) vs. Samuel Black(アメリカ)

    Game 2

    ビートダウンモードに移行しているサムのエルフ。

    場には《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》《ワイアウッドの共生虫/Wirewood Symbiote》《ワイアウッドの養虫人/Wirewood Hivemaster》《イラクサの歩哨/Nettle Sentinel》に、虫トークンという状況。

    ここで、大礒は、自身の得意のスペルでもある《けちな贈り物/Gifts Ungiven》をキャストする。

    まず《仕組まれた爆薬/Engineered Explosives》《トリスケリオン/Triskelion》《ウルザの塔/Urza’s Tower》《ウルザの魔力炉/Urza’s Power Plant》(《ウルザの鉱山/Urza’s Mine》はセット済)を選択する。

    しかし、小考ののち《ウルザの魔力炉》を《滅び》に変更。

    さらに、《ウルザの塔》を《魂の裏切りの夜/Night of Souls’ Betrayal》に変更する。

    大礒 「むっじいなぁ...」

    その後のゲームプランのすべてを支配するだけに《けちな贈り物》の選択は、もっとも難しいプレイのひとつとまで言われている。

    大礒は悩みに悩んだ上で、どれかと交換するべく《アカデミーの廃墟/Academy Ruins》をライブリーから、4枚に加える。

    サム 「5枚だったら、3枚墓地に置けばいいのかい?」

    高桑が《もみ消し/Stifle》と《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》のコンボで圧殺されたのをみて、気分をよくしたのか、サムは大礒にこんな冗談を飛ばす。

    高桑 0-1 Cheon

    それを無視し、大礒は、結局《仕組まれた爆薬》《トリスケリオン》《滅び》《魂の裏切りの夜》を選択する。

    サムは、前者2枚を大礒に渡す。

    ここで、大礒の《けちな贈り物》の選択が長すぎると、突然のワーニングがでる。そして、テーブルジャッジから伝言される。通常だと、ワーニングの3回目でゲームロスですが、プロレベルのイベントなのですから2回目でゲームロスになりますので、気をつけてください、と。

    これをきいたCheonは大礒に声をかける。

    Cheon 「マサシ!ゆっくりしていってね!」

    渡辺の勝利で後がないアメリカチーム。

    大礒の長考が、勝ち星につながるのであれば、それは僥倖としか言いようがないだろう。

    大礒 「5回くらいしか考えるところないんだから、ワーニングとかやめてよー」

    ぼやきたい大礒の気持ちは察することもできないわけではないが、しかし、指向することのできる回数に明確に線を引くことなどできるはずはない。

    このトーナメントでそれができるのはヘッドジャッジだけなのだ。

    大礒は気をとりなおし...たかどうかはともかくとして、《トレイリア西部/Tolaria West》を変成し《アカデミーの廃墟》をサーチする。

    そして、《仕組まれた爆薬》をX=1でキャストし、能力を起動する。普段の大礒らしい、素早いプレイで。

    ここで《ワイアウッドの共生虫》で《ラノワールのエルフ》と《イラクサの歩哨》のどちらを手札に戻すかの選択肢があるサムは、Jacobと相談をはじめる。

    サムの選択の結果待つ間に、高桑の様子を見てみよう。

    高桑は《師範の占い独楽/Sensei’s Divining Top》の能力起動を《真髄の針/Pithing Needle》でとめ、X=1の《虚空の杯》こそ《渦まく知識/Brainstorm》で対応され《Force of Will》でカウンターされたものの、《計略縛り/Trickbind》された《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》を《忘却の輪/Oblivion Ring》で対処するという順調なスタートを切っている。

    さて、サムは、結局《ラノワールのエルフ》を手札に戻し、自分のターンに再びJacobと相談し、《召喚士の契約/Summoner’s Pact》で《エルフの幻想家/Elvish Visionary》をサーチし、キャストした後に、《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》で《金属モックス/Chrome Mox》を破壊する。

    これで必要な色マナを封じられてしまった大礒は、続くデュエルに決戦を持ち越すことになる。

    大礒 1-1 サム

    ここで、大礒がマリガンをし、さらにテレビマッチの為に、席を移動することになった。

    その間に、高桑は、《三なる宝球》《虚空の杯》《沈黙のオーラ/Aura of Silence》といった、自分の置きたいアーティファクトをどんどん置いている。

    しかし《ハルマゲドン》だけは、《Force of Will》されてしまう。

    Game 3

    前述の通り、マリガンした大礒は、ウルザトロンを早速2枚並べるが、手札に色マナをできれば変成ようにとっておきたい《トレイリア西部》しか持たないというプラン上の弱点を抱えている。

    対して、サムは、1ターン目・2ターン目と《イラクサの歩哨》を並べ、完全にビートダウンの体勢を整える。

    大礒は、《金属モックス》に《滅び》を刻印することで色マナを確保し、《仕組まれた爆薬》をX=1で使用、《イラクサの歩哨》を一掃する。

    そして、手札の《けちな贈り物》を使用する為に、虎の子の《トレイリア西部》をセットする。

    ここで、Cheonに相性差を覆す健闘を見せたものの《Force of Will》を4枚ひききられた高桑が宣言する。

    高桑 「負けました!」

    高桑 0-2 Cheon

    日本代表 1-1 アメリカ代表

    これで、このゲームですべてが決定されることになる。

    そして、このゲームのすべては、大礒のキャストする《けちな贈り物》で決定する、といっても過言では無いだろう。

    その《けちな贈り物》をキャストするターン、サムは、《垣間見る自然》から《遺産のドルイド/Heritage Druid》をキャストし、さらに《ヴィリジアンの盲信者/Viridian Zealot》をキャストする。

    これで《金属モックス》を破壊されてしまうと、間違いなく色マナが足りなくなる大礒は、さらに難しい選択肢を求められることとなる。

    まずは《死の印/Deathmark》《トリスケリオン》《迫害/Persecute》《汚染された三角州/Polluted Delta》を選択する。

    ここで、大礒は、渡辺に意見を求めようとするが、渡辺は、相談=スロープレイと判断されることを警戒し、そして、大礒の《けちな贈り物》のプレイスキルを完全に信頼して、短く返答する。

    渡辺 「まかせます、全部」

    その言葉の意味するところを大礒も十分に理解している。

    大礒 「これって、いきなりゲームロスでるの?」

    イエスの返事に、大礒は、リミットの見えない時限爆弾を抱えたまま、勝敗を分ける選択をしなければ行けなくなる。

    続いて《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》《トリスケリオン》《汚染された三角州》《アカデミーの廃墟》、という選択肢を提示しかけて《その場しのぎの人形》を《死の印》へと変更する。

    これをサムに提示したタイミングが、まさにヘッドジャッジからゲームロスの裁定が出されようとした瞬間であった。間一髪とはこのことだろう。

    なんにせよ、明らかに色マナに困ってる大礒に《汚染された三角州》は渡せず、また《仕組まれた爆薬》を使い回す《アカデミーの廃墟》も渡せないサムは、この2枚を墓地に落とす。ここまでは大礒の予想通り。

    手札に《滅び》を抱える大礒。

    ここで土地をひけば...と、土地をひかず。大礒は《金属モックス》を守る為に《ヴィリジアンの盲信者》に《死の印》をキャストする。

    だが、サムは、続けて《垣間見る自然》から《遺産のドルイド》《ワイアウッドの養虫人》とドローをすすめ、3体のエルフから、《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》に必要なマナを生み出した。

    そして、それから、ゲーム終了まで、大礒は色マナにであうことができなかった。

    大礒 1-2 サム

    日本代表 1-2 アメリカ代表

    これまで、何度も伝えてきたセリフを渡辺は、当日の朝に、再び口にした。

    渡辺 「去年の世界選手権の表彰は最高でした。また、あそこにいきたいんです」

    渡辺の夢は、ロンドンに持ち越される。



     
  • Final : Antti Malin(フィンランド) vs. Jamie Parke(アメリカ)
    by Keita Mori
  • 天空に太陽はただ一つ、世界王者もただ一人。

    18ラウンドにわたる知力のトライアスロンを勝ちあがった八名の猛者たちも、いまやフィンランドのアンティ・マリンとジェイミー・パークを残すのみとなった。もちろん、プロツアーサンデーに勝ち残ったというだけで、2人はすでに充分大きな成功を収めていると言える。

    それでも、その不滅の名をマジック:サ・ギャザリングの歴史に残すことができるのは、王者はただ一人なのである。

    叡智の結晶であるデッキは、ときとしてそれ自体が芸術的な輝きを見せる。

    パークとマリンが仕上げたデッキリストを前に、日本が誇るスタンダード巧者、国代表チーム戦のスタンダード5連勝を飾っている渡辺 雄也は、二人のデッキをこう分析する。

    渡辺 「パークのデッキは現在のフェアリーが《苦悶のねじれ/Agony Warp》を基本的な除去として採用していることをふまえて、《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》を《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》に変更するという判断を行っています。マリンもフェアリー対策での《ジャンドの魔除け/Jund Charm》などが増えている状況をふまえて、日本ではよく見かける《ウーナの末裔/Scion of Oona》を抜いて《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》を使っています。特に《ウーナの末裔/Scion of Oona》型は《ジャンドの魔除け/Jund Charm》で大きな被害を受けてしまいやすい構成といえるので、そのリスクを軽減できていますね」

    まさに、対フェアリーを意識して《ジャンドの魔除け/Jund Charm》をメインから搭載しているのがパークの5色コントロール。そして、対するマリンのデッキも少しでもその被害を小さくできるように工夫されている。一方、標準的に《苦悶のねじれ/Agony Warp》を搭載するようになったフェアリーに対して、それ一枚では対処されない脅威・ライフ獲得要員として《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》を採用しているのがパーク。

    ここで取り上げた《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》や《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》のエピソードも、あくまで彼らの叡智の断片にすぎない。

    はたして、2008年という年を総括する「今年のデッキ」がどうなるか、やはり戦前からささやかれたようにフェアリーなのか、アラーラ新世界のテクニックを満載した5色コントロールなのか、見届けようではないか。

    Game 1

    先手をとったフィンランドのマリンは、開幕ターンにおいた《変わり谷/Mutavault》を第2ターンにさっそく起動してアタック宣言というアグレッシブなスタート。後手のパークの3ターン目には《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique》でパークの《謎めいた命令/Cryptic Command》を奪い取り、パークは残された手札から《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》を3ターン目に召喚することとなった。

    パークは敵陣の《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》を《誘惑蒔き/Sower of Temptation》で奪い取りながら上空でアタック3点。パークがもう一度手札から《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》を出してきたのに対して、《思考囲い/Thoughtseize》でパークの《謎めいた命令/Cryptic Command》の2枚目を叩き落すという「安全確認」の後に《恐怖/Terror》で除去してみせた。つまり、3/1飛行、2/2飛行、3/4絆魂による強烈なアタックを見舞うマリン。

    ダメ押しに《苦花/Bitterblossom》を展開されると、まもなくジェイミー・パークは投了を宣言した。

    マリン 1-0 パーク

    Game 2

    フィンランドの若者の勢いはすさまじい。

    後手ながら1ターン目に《思考囲い/Thoughtseize》、2ターン目に《苦花/Bitterblossom》、3ターン目にも《思考囲い/Thoughtseize》と《苦花/Bitterblossom》をあわせて詠唱し、ただ土地を置くだけのパークの手札を攻め、盤面に脅威を展開する。

    さらに自ターンのメインフェイズに《苦花/Bitterblossom》を「覇権」しての《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》をプレイするマリン。対するパークは《エスパーの魔除け/Esper Charm》と《熟考漂い/Mulldrifter》によって手札を回復することに専念する。

    マリンは攻勢を維持し、序盤の勢いのままに空中戦を制しようと意気込んでいた。敵陣の2/2飛行《熟考漂い/Mulldrifter》をものともせず、3体の1/1飛行トークンと4/4飛行《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》で攻撃。しかし、ここで《熟考漂い》で《霧縛りの徒党》のブロックを宣言し、戦闘を終了させるパーク。もちろん、これは単なるチャンプブロックではなく《ジャンドの魔除け/Jund Charm》の呼び水で、これによってフィンランドの若者は自軍のすべてのクリーチャーを失うことになった。

    ここから何が起こったかというと・・・「覇権」から戻ってきた《苦花/Bitterblossom》とあわせ、毎ターン2点ずつのライフ喪失により・・・なんと、マリンは「自滅」してしまうこととなった。序盤のペインランドの使用と《思考囲い/Thoughtseize》の連発によるリスクが、予想しうる最悪の事態を招いてしまったのだ。

    ちなみに、準決勝の2本目でもライフ4点という状況で《苦花/Bitterblossom》を置いて「《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》ドローに期待」というアグレッシブなプレイを見せているプレイヤーがアンティ・マリンなのである。

    マリン 1-1 パーク

    Game 3

    気を取り直して先手でゲームをスタートするマリン。第1ターンの《変わり谷/Mutavault》で第2ターンからアタックというスタートから、3ターン目に《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》をプレイすることに成功する。このプレインズウォーカーがもたらすハンドアドバンテージが、この試合の行方を大きくフィンランド人有利に傾かせることになった。

    マリンはジェイスでドロー加速しながら《誘惑蒔き/Sower of Temptation》で《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》を奪った。さらに、《思考囲い/Thoughtseize》を打ち込み、これを打ち消そうとする《謎めいた命令/Cryptic Command》を《謎めいた命令/Cryptic Command》で防ぎ、アメリカ最後の希望であるパークから《霊魂放逐/Remove Soul》を奪い取りながら「鮮烈」(Vivid)土地を一枚バウンスした。

    ジェイスでの継続したドロー加速の恩恵を享受しながら、《思考囲い/Thoughtseize》の2発目を叩き込むマリン。奪い取った《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》がアタッカーに加わっていることにより、絆魂によるライフ獲得も出来ている。

    抵抗らしい抵抗が《熟考漂い/Mulldrifter》召喚くらいしかできないうちに、パークは投了する羽目になってしまった。

    マリン 2-1 パーク

    ここまで、マジックの母国アメリカのプレイヤーが2008年に開催されたすべてのプロツアーでチャンピオンに輝いている。さらに、この試合の直前に行われた団体戦決勝でもアメリカが優勝を飾っており、アメリカが文字通りのパーフェクトイヤーを達成できるかどうか、瀬戸際の攻防を続けるパークには会場から大きな声援を送られた。

    Game 4

    第4ゲームも後手ながら第1ターンの《思考囲い/Thoughtseize》からゲームをはじめるマリン。アメリカのファンの期待を一身に背負うジェイミー・パークの手札から《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk》を捨てさせた。パークに残された手札は《耳障りな反応/Guttural Response》と《謎めいた命令/Cryptic Command》と土地三枚。

    双方静かに土地を並べあい、またしてもマリンが先にアクションを起こした。彼が4ターン目にプレイした2枚目の《思考囲い/Thoughtseize》を、パークが《謎めいた命令/Cryptic Command》で打ち消そうと動いたのだが・・・これをX=1の《砕けた野望/Broken Ambitions》でマリンがカウンター。手札に残された先ほどとかわらない2枚の内容から、《謎めいた命令/Cryptic Command》をすてさせた。

    パークも「激突」でめくれた《エスパーの魔除け/Esper Charm》をメイン・フェイズで即座に使用して手札の拡充を急ぐが、マリンがとうとう4ゲーム目で最初の脅威となる《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》を召喚してきた。「呪文を打ち消す」能力をもったこのフェアリーは、強力な呪文を乱打することを目的としている5色コントロールにとっては致命傷となりかねない脅威だった。

    《熟考漂い/Mulldrifter》を呼びだして手札を増やすパークに対して、《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》で挑んでくるマリン。《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》に「覇権される前にマナをだして、《エスパーの魔除け/Esper Charm》をマリンに使用して「2枚カードを捨てる」ことを強いるパーク。マリンは2枚の《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》と1枚の《砕けた野望/Broken Ambitions》というハンドを持っており、手札に1枚だけ《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》を残すことにする。

    マリンが4/4で、パークで2/2で、とそれぞれ飛行クリーチャーがアタックを繰り返す中で、アメリカの観衆から大きな歓声があがる。「瞬速」で登場したパークの《雲打ち/Cloudthresher》が《霧縛りの徒党/Mistbind Clique》を討ち取ったからだ。

    しかし「覇権」から戻ってきた《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》は、やはりパークにとって頭痛の種となった。さらに、マリンはさきほどのゲームで勝利を決定付けた《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》をプレイし、ドローを加速しはじめた。

    それでも一度は《雲打ち/Cloudthresher》のアタックが本体に通ることになったゲーム展開だが、なんといってもドローの内容が土地ばかりのアメリカ人とスペルの充実したフィンランド人とでは、その後のゲーム展開に大きな開きが出てしまうのは当然だった。

    ジェイミー・パークの《苦花/Bitterblossom》が《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》で打ち消されてしまい、続くターンのアップキープに《雲打ち/Cloudthresher》を含むパークの全軍をタップさせつつ自分でカードを1枚引くというモードで《謎めいた命令/Cryptic Command》を使用するアンティ・マリン。《耳障りな反応/Guttural Response》も《呪文づまりのスプライト/Spellstutter Sprite》がしっかりと迎撃にかかる。

    さらにマリンは《思考の粉砕/Mind Shatter》でパークに残されていた最後の土地カードをも捨てさせ、万全の状態で《エレンドラ谷の大魔導師/Glen Elendra Archmage》の2体目を召喚し、《苦花/Bitterblossom》をも盤面に加えた。

    ここにきてパークの《雲打ち/Cloudthresher》は「到達」もちのブロッカーとして攻撃を自重せざるをえなくなってしまう。まもなく、ジェイミー・パークが右手を差し出し、2008年度世界選手権が「フェアリーの冬」として記憶されることが決まった。

    マリン 3-1 パーク

    2008年のマジック:ザ・ギャザリング世界王者はアンティ・マリン!



     
  • Sunday 21:21 : Breaking News – 日本に新しいレベル3ジャッジ誕生
    by Keita Mori
  • 総勢25名の日本人プレイヤーの参戦があった世界選手権メンフィス大会。プレイヤーだけでなく、イベントを影から支えるために2人のジャッジが来場し、そのスムーズな運営に貢献した。

    写真右から、2008年度日本選手権のヘッドジャッジをつとめたことでもおなじみの梅咲 直瑛(東京/DCI認定レベル3)と、北海道からやってきた牧野 充典だ。なんと、掲題の通り、みごとに牧野はこの世界選手権メンフィス大会でDCIレベル3ジャッジ試験に合格している。

    おそらく、2009年度のうちのどこかのイベントで牧野がヘッドジャッジとしてイベントを統括することになるはず・・・とのことだ。

    おめでとう、牧野 充典!



     
  • Sunday 22:22 : Feature Article – 浅原 晃のヴィンテージマニュアル
    by Daisuke Kawasaki
  • さぁ、まずは、なにも言わずにこのデックリストを見てもらおう。

    大量に並んだ1枚差しのカード。

    そう、言うまでもなく、シルバーバレット搭載のデック...ではなく、Vintageのデックだ。

    マジック歴代の最強カードたちを(多少の禁止カードと制限カードはありますが)惜しむことなく使用できる、まさにマジックの「歴史と伝統」が詰まった、このレギュレーション。

    なんと、このヴィンテージのトーナメントが世界選手権のサイドイベントで開催されているというではないか。

    しかも、優勝賞品は、パワー9だというじゃないか!

    パワー9というのは、マジック最強の9枚と言われるカード。

    Black Lotus
    Time Walk
    Timetwister
    Ancestral Recall
    そして、5枚の《Mox

    マジックプレイヤーだったら誰もがあこがれる、このパワー9をゲットするべく、ひとりの日本人プレイヤーが立ち上がった。

    「歴史と伝統の男」浅原 晃(神奈川)だ!

    赤いジャージと黒枠パワー9のコントラストが目にまぶしいこの男に、ヴィンテージトーナメント参加の感想をインタビューした。

    川崎 「どうも、お疲れ様でした」

    浅原 「でぃーす」

    川崎 「それでは、まず、今回使用したこのデックの動きを解説してもらっていいですか」

    浅原 「《求道者テゼレット/Tezzeret the Seeker》がヴィンテージでは強すぎるんです。このデッキは、《求道者テゼレット》1枚で完結するコンボデッキですね」

    川崎 「《求道者テゼレット》1枚で、ですか?」

    浅原 「そっす。《求道者テゼレット》だけで勝てます」

    川崎 「具体的な動きを教えていただいていいですか」

    浅原 「基本的には《Time Vault》(タップすると、1ターンを追加できるが、アンタップするにはターンを飛ばさなければ行けないアーティファクト)と《求道者テゼレット》の+1能力(アーティファクトを2つまでアンタップ)のコンボですね」

    川崎 「あぁ、なるほど。エラッタが多いことで知られる《Time Vault》ですけど、最近の印刷された効果に忠実に、という方針に従って『アンタップさえすれば何でも』追加ターンを得られるようになったんでしたっけ」

    浅原 「《通電式キー/Voltaic Key》でも大丈夫っすからね。レガシーで突如禁止になったのも、《求道者テゼレット》がでたからって噂もあるくらいです」

    川崎 「そんなにやばいですか」

    浅原 「バイヤーです。なんせ《求道者テゼレット》さえ、キャストしてしまえば、-X 能力(Xマナ以下のアーティファクトをライブラリーからサーチする)で《Time Vault》自体をサーチできるんで」

    川崎 「そうしたら、次のターンが帰ってさえくれば、無限ターン完成ってわけですね」

    浅原 「適当にターンを経過して、アーティファクト並べまくったら、十分に忠誠カウンターの乗った《求道者テゼレット》の-5能力(すべてのアーティファクトが5/5クリーチャーになる)で一撃KOっす」

    川崎 「2枚コンボながらも《求道者テゼレット》がコンボパーツと、サーチ手段、そして勝ち手段のすべてを兼ねているってわけですか」

    浅原 「そーなのかー」

    川崎 「いや、そーなのかー、って浅原さんが納得してもしょうがないじゃないですか。納得させてくださいよ。しかし、よくこんな高いカード持ってますね」

     「いや《求道者テゼレット》持ってないから、世界選手権ノーテゼレットででたんだって言ったら、通りがかった親切な人が貸してくれたんです」

    川崎 「あぁ、最近結婚したっぽい人ですね」

    浅原 「そっす。全部ベータ、ほかもほとんどフォイルで40~50万、ベータの状態によっては100万位してもおかしくないカードたちなんで、ラウンドとラウンドの間は結構ドキドキでしたわ」

    川崎 「うわ、それは恐いですね」

    浅原 「マジックプレイヤーとしてうまれたからには、一度は手にしてみたいとは思うんですけどね...そんなわけで商品目指して大会参加したんですけど」

    ■Vintageの大会ってこんな感じ!

    川崎 「肝心の成績の方はどうでしたか?」

    浅原 「4-1から最後負けて4-2のノーマネーでフィニッシュでした」

    川崎 「それは無念ですね」

    浅原 「いや、それがあべこべでして。結構楽しかったですよ。やっぱ、歴代のパワーカード使いまくれるのは楽しいです」

    川崎 「浅原さん、パワーカード好きですもんね。回りはどんなデックが多かったですか?やっぱ、せっかくはやりでテゼレッターばかりでしたか?」

    浅原 「いや、むしろストームが多かったですね。0マナアーティファクトが多いVintageでは、スカージの時代からストームが多いんですけど、同じデッキを使い続けてる人が多いんじゃないっすかね」

    川崎 「具体的にはどれくらいいましたか?」

    浅原 「数えたわけじゃないですけど、自分は6回戦中3回当たったっす。一応3回とも勝ちました。あと、同型にも一度あたってこれも勝ってます」

    川崎 「じゃあ、残りは別のデックに負けたってことですか?」

    浅原 「そっすねぇ...ひとつは、いわゆるフィッシュっていうやつです。クロック=パーミ、っすかね。《タルモゴイフ/Tarmogoyf》や《エーテル宣誓会の法学者/Ethersworn Canonist》《翻弄する魔道士/Meddling Mage》みたいなクリーチャーでビートするデッキですね」

    川崎 「へぇ...フィッシュっていう割にはマーフォークは入ってないんですね」

    浅原 「昔の名残とかなんじゃないですか。カウンターそんなに入ってないですけど、別にカウンターノースリバーとかでもいいですよ。あ、でも、自分が当たった相手は《呪い捕らえ/Cursecatcher》が入ってましたね、魚」

    川崎 「もうひとつの負けたデックはなんですか?」

    浅原 「発掘っす。ドレッジ」

    川崎 「発掘って、えっと、僕らのよく知る発掘デックですか?ドローを《ゴルガリの墓トロール/Golgari Grave-Troll》とかで置換して、《ナルコメーバ/Narcomoeba》と《黄泉からの橋/Bridge from Below》でドカーン、っていう」

    浅原 「そうそう、そのドカーンってやつです」

    川崎 「へぇ...発掘って、今のエクステンデッドでもあるデックですけど、Vintageでも通用するんですね」

    浅原 「いや、すげぇ強いっすよ、発掘。土地が《Bazaar of Baghdad》くらいしか入っていなくて、ほとんどマナでないんですけど《Bazaar of Baghdad》がほんとに強い。エクステンデッドの《バザールの大魔術師/Magus of the Bazaar》の入ってるタイプをイメージしてもらって、その《バザールの大魔術師》がマナも使わず、召喚酔いもしないと思ってもらえればイメージしやすいかと」

    川崎 「そんなに強いですか」

    浅原 「ヨイツーです。《トーモッドの墓所/Tormod’s Crypt》2枚張っても勝てませんでした」

    川崎 「なんか、とんでもない世界ですね」

    浅原 「でも、トーナメント自体は、コレクターの、しかもカードいっぱい持ってるタイプの人が多かったので、なんか和やかな感じではありましたよ」

    ■ヴィンテージマニュアル?

    川崎 「えっと、では、今日一日参加してみて、今後、もしもこのデックで参加しようって人がいたらどう改良したらいいかってアドバイスとかいただけますか」

    浅原 「そっすね...《物読み/Thoughtcast》がかなり弱く感じたんで、別のカードに入れ替えたいっすね。《粗石の魔道士/Trinket Mage》とか面白いかもです」

    川崎 「《求道者テゼレット》のサーチカードを増やすってのもいいんじゃないですか?」

    浅原 「ターン帰ってきたら勝ちなので、それができない状態の時に即効性があるカード、たとえば発掘対策の《トーモッドの墓所》とかならアリっすね」

    川崎 「なるほど、他にはなにかありますか?」

    浅原 「発掘がとにかく強いので《不毛の大地/Wasteland》くらいはサイドボードにとってもいいかもしれません」

    川崎 「そんなに発掘恐いですか」

    浅原 「ちょっとしたトラウマです。パーツはほとんどエクステンデッドレベルでそろいますし、高いカードは《Bazaar of Baghdad》くらいなんで、ヴィンテージ初めて見たい人にはお勧めのデッキかもですね」

    川崎 「その《Bazaar of Baghdad》が結構いい値段するんですけどね」

    浅原 「ヴィンテージはじめるなら、そんなに値段のこと考えないほうがいいかもしれませんけどね。パワー9なんか、がんばった自分へのご褒美とかでコツコツ集めていけば、集める行程そのものも楽しめるかもしれませんし」

    川崎 「なるほど。パワーカードを満喫するのを目標に地道にカードを集めてみようと」

    浅原 「圧倒的に楽しいですからね、やっぱ。とにかく楽しさだけは間違いないので、長い目標としてヴィンテージデビューを設定してみるのも、いいマジックとのつきあい方かもしれませんよ」

    川崎 「お疲れの中、ありがとうございました」

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