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Osawa’s Wurms Flog Prague!

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歴史の薫る街、世界遺産にも指定されている古都で開催されたプロツアーには415人もの勇敢なるプレイヤーたちが参加し、発売日当日にディセンションをまじえてのブースタードラフトに挑戦した。ここプラハでは実に様々な戦略が展開されており、多くの可能性を秘めたドラフト・フォーマットであることが証明された。

数多くのプレイヤーがマルチカラーを多用すべく印鑑やバウンスランドを多用する中、日本の大澤 拓也(神奈川)は基本地形17枚に《楽園の拡散/Utopia Sprawl》を2枚というマナベースで決勝ドラフトのデッキを構築し、そこに数多くのファッティと除去呪文を満載させた。そして、ディセンションで登場した「移植/Graft」を活用し、大澤はただでさえ大きな5マナ域の緑色のモンスターたちをさらにサイズアップさせ、圧倒的なビートダウンを繰り広げてプロツアー王者に輝いたのだ。

大澤は日本人としては四人目のプロツアーチャンピオンとなり、日本国外のプロツアーにはじめて優勝した日本人としてその名を残すことになった。新たなヒーローの誕生だ。

また、決勝ラウンドで圧倒的なパフォーマンスを見せた大澤に唯一黒星をつけたのが、準決勝で戦った中村 修平(大阪)。中村はこの週末での成功によって三度目のプロツアーサンデー進出を果たしたことになり、世界中にその安定した実力をアピールすることに成功した。

かくて、ホノルルでは苦杯をなめさせられた日本勢が最高のかたちでカムバックを果たしたプロツアー・プラハとなった。


The Top 8 bracket is determined randomly; seeds do not correspond with the final Swiss standings.

Quarterfinals   Semifinals   Finals   Champion
1 Takuya Osawa [JPN]   Takuya Osawa, 3-0        
8 Joe Crosby [USA]   Takuya Osawa, 3-1
       
4 Shuhei Nakamura [JPN]   Shuhei Nakamura, 3-2   Takuya Osawa, 3-0
5 Antonino De Rosa [USA]    
       
2 Christian Huttenberger [DEU]   Christian Huttenberger, 3-2
7 Quentin Martin [ENG]   Aaron Brackmann, 3-0
       
3 Aaron Brackmann [DEU]   Aaron Brackmann, 3-2
6 Rasmus Sibast [DNK]    

観戦記事

  • Blog - 10:06 p.m. - 決勝: 大澤 拓也(神奈川) vs. Aaron Backmann(ドイツ)
    by Keita Mori
  • Blog - 6:59 p.m. - 準々決勝: 中村 修平(大阪) vs. Antonino De Rosa(アメリカ)
    by Keita Mori
  • Decklists: The Top 8 Decks
    by Event Coverage Staff
  • Draft Viewer: The Top 8 Draft
    by Event Coverage Staff
  • Feature: The Top 8 Player Profiles
    by Event Coverage Staff



  • Day 2 Blog Archive: 様々な活路, Draft Reports, かなりコンボ!, Top Pro Play, and More!
    by Keita Mori
  • Draft Viewer: Draft 5, Table 1
    by Event Coverage Staff
  • Round 13: Pods
    by Event Coverage Staff
  • Round 10: Pods
    by Event Coverage Staff
  • Info: Day 2 Country Breakdown
    by Event Coverage Staff
  • Info: Day 2 Player List
    by Event Coverage Staff



  • Day 1 Blog Archive: Draft Report : 第1ドラフト―浅原 晃, Round 3 : Jon Finkel(アメリカ) vs. 志村 一郎(茨城), and More!
    by Keita Mori
  • Round 7: Pods
    by Event Coverage Staff
  • Round 4: Pods
    by Event Coverage Staff
  • Round 1: Pods
    by Event Coverage Staff
  • Info: Day 1 Country Breakdown
    by Event Coverage Staff
  • Info: Day 1 Player List
    by Event Coverage Staff
  • Feature: Can’t Hardly Wait: A Prague Playlist
    by Brian David-Marshall
  • Info: Fact Sheet
    by Event Coverage Staff
 1.  Takuya Osawa [JPN] $40,000
 2.  Aaron Brackmann [DEU] $22,000
 3.  Shuhei Nakamura [JPN] $15,000
 4.  Christian Huttenberger [DEU] $14,000
 5.  Rasmus Sibast [DNK] $11,500
 6.  Antonino De Rosa [USA] $11,000
 7.  Joe Crosby [USA] $10,500
 8.  Quentin Martin [ENG] $10,500
組合 結果 順位
最終
15
14
13
12
11
10
9
8
15
14
13
12
11
10
9
8
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
7
6
5
4
3
2
1
7
6
5
4
3
2
1
BLOG

 
  • Sunday, May 7: 6:59 p.m. - 準々決勝: 中村 修平(大阪) vs. Antonino De Rosa(アメリカ)
    by Keita Mori

  • ……今日は本当にありがとうございました。

    Antonino De Rosa

    これは、決勝ドラフトを終えた瞬間に中村 修平(大阪)が口走った言葉である。

    8人のプドラフトピックを網羅した Top 8 Draft Viewerをご参照いただければ一目瞭然だが、《光り輝く炎/Brightflame》、《稲妻のらせん/Lightning Helix》といったボロス=ギルドのパワーカードからドラフティングをスタートした中村は、深い霧の中を迷走するかのようになってしまったのだ。

    最終系が白赤黒なのか白赤青なのか、実際にカードを並べてみるまで自分自身が判断もつかなかったという自身のデッキを、彼は「このプロツアー・プラハでドラフトした中で最悪のもの」と嘆いた。

    そして、今から準々決勝で中村がまみえる相手は、おそらくこの決勝ラウンド進出メンバーの中で最大の難敵と思われるAntonino De Rosa(アントニーノ・デ=ローザ/アメリカ)なのである。昨年度全米王者にも輝いたイタリア系アメリカ人の巨漢は、とくにそのリミテッド戦における実力に定評がある強豪だ。

    ドラフティングを終えた段階で中村の手ごたえは最悪。しかし、中村はプロツアー級イベントの決勝ラウンドに三度到達したという強豪である。彼ならではのプレイスキルが活路をひらいてくれる可能性は捨てきれない。

    De Rosa 「マサシ(=大礒 正嗣)も捨てがたいけど、俺が思うに今の日本人の中で最強のプレイヤーは間違いなくお前だよ」

    そう、その実力は海の向こうの猛者たちも認めるものなのだ。

    中村White ManaRed ManaBlack Mana
    De RosaBlue ManaRed ManaWhite Mana

    Game 1

    ちなみに、決勝ラウンドに進んだもう一人の日本勢である大澤 拓也(神奈川)のビートダウンデッキは素晴らしいクオリティである。準決勝以降に彼の試合をお伝えできるだろうという期待のもと、準々決勝の4カードの中でもっとも注目を集める「テレビマッチ」の模様をお伝えしている次第である。

    中村 修平

    さて、中村の第1ゲームだが、後手De Rosaがダブルマリガンの末にワンランドの手札をキープせざるをえない展開で、3ターン目に《ケンタウルスの護衛兵/Centaur Safeguard》をディスカードという有様。他方の中村は1/1飛行の《哀悼のスラル/Mourning Thrull》と1/1タッパーの《妨害の公使/Minister of Impediments》に続ける形で3/3飛行の《議事会の乗馬兵/Conclave Equenaut》を「召集」によって5ターン目に呼び出すという好スタート。みるみるうちにDe Rosaのライフは削り落とされていった。

    De Rosaも遅ればせながら土地を引き当てはじめ、なんとか5ターン目の2/2飛行《自由風の乗馬兵/Freewind Equenaut》、6ターン目の1/4《魂誓いの陪審/Soulsworn Jury》、7ターン目の1/1飛行《標の鷹/Beacon Hawk》という具合に苦しみながら布陣していった。

    ……が、タッパーによって盤面を支配されながら3/3飛行が殴ってくるという中村の攻勢によって、あっという間にライフレースは3対24という圧倒的なリードを広げられてしまう。

    De Rosaはなんとか《スラル》を《鷹》で相討ちにとり、《乗馬兵》を3/2《オーガの学者/Ogre Savant》のCIP能力でバウンスしてから再召喚されたところへ《悪魔火/Demonfire》を叩き込む。タッパーの《公使》も《蒸気核の奇魔/Steamcore Weird》のCIP能力で除去しようとしたのだが、そこにレスポンスして中村が《焦熱の結末/Fiery Conclusion》を詠唱。3/2《オーガ》を失うことになる。

    ※CIP能力:場に出たときに誘発される能力の略語。Comes Into Play Abilityの意。

    ひどい立ち上がりのわりには善戦したDe Rosaといえるが、中村はここで潤沢なWhite Manaを背景に2体の4/1《オルドルーンの猛士/Ordruun Commando》を展開。De Rosaはこれをチャンプブロックでしのぐのみというジリ貧に陥ってしまい、投了となった。

    中村 1-0

    Game 2

    第1ゲームを獲得したことによって、中村のプレイはいつも以上に冴え渡った。少しマナトラブル気味の立ち上がりとなったものの、Antonino De Rosaの攻めをのらりくらりとかわし、仕掛けるタイミングをうかがう。

    仕掛け、すなわち《殺戮の焚きつけ/Kindle the Carnage》による一斉除去によってAntoninoの軍勢を壊滅させてから――ちなみに、ランダム・ディスカードは《鉱岩流液獣/Petrahydrox》――第1ゲームの勝利を呼び込んだ4/1《オルドルーンの猛士》を送り込んだ。

    中村の計略によって一挙に3体のクリーチャーを失ってしまい、大きくカードアドバンテージをとられてしまったDe Rosaだが、3/4《覚醒石のガーゴイル/Wakestone Gargoyle》で対抗し、つづく中村 修平のタッパーである《木戸番スラル/Ostiary Thrull》を《蒸気核の奇魔》のCIP能力で葬った。今回は中村が一斉除去の機をうかがうために序盤のライフレースで遅れをとっていたため、De Rosaは《ガーゴイル》を「覚醒」させて上空からクロックを動かして勝利を目指した。《悪魔火/Demonfire》のドローを視野に入れれば当然のアクションだっただろう。

    しかしながら、中村も2/1回避能力持ちの《野良剣歯猫/Sabertooth Alley Cat》、White Manaのサポートをえた《オルドルーンの猛士》の2体目といった脅威を展開し、さらにそこへ決定的な一枚、タッパーの《妨害の公使/Minister of Impediments》を送り込んでくる。

    一斉除去による盤上の制圧に成功し、タッパーにバックアップされたビートダウンを成し遂げた中村 修平。なんと、まさかの「このプロツアー・プラハでドラフトした中で最悪のデッキ」で2-0と準決勝進出に王手をかけることになった。

    中村 「ここまで、ちょっと出来すぎっすよね…」

    中村 2-0 De Rosa

    Game 3

    しかしながら、第3ゲームからは昨年度全米王者のDe Rosaが正調を取り戻す。地上に0/4《尊い祖霊/Benevolent Ancestor》で睨みを利かせ、上空に3/2飛行の《噛みつきドレイク/Snapping Drake》を展開。対する中村 修平の4/1《オルドルーンの猛士》を《蒸気核の奇魔》のCIP能力で討ち取った。

    中村も2/1《雷楽のラッパ吹き/Thundersong Trumpeter》によって3/2飛行によるビートダウンに待ったをかけ、地上に3/3《屠殺場の用心棒/Slaughterhouse Bouncer》を追加。ここでDe Rosaは《一時しのぎの協定/Palliation Accord》というライフアドバンテージカードを設置し、4/4の《潮水の下僕/Tidewater Minion》を加えた。

    3/2《噛みつきドレイク》の2体目に対しては《稲妻のらせん/Lightning Helix》を叩き込み、《松明ドレイク/Torch Drake》が呼び出された返しタッパーの《妨害の公使》を呼び出して中村も踏みとどまる。しかしながら、3/2《オーガの学者/Ogre Savant》のCIP能力で《雷楽のラッパ吹き》をバウンスしてから3/1《ケンタウルスの護衛兵》を呼び出し、《松明ドレイク》がダメージを通すチャンスを演出するDe Rosa。

    針の穴を通すようにダメージを通してからは、本体へと全力で《悪魔火/Demonfire》を7点。アメリカ人が反撃の狼煙をあげた。

    De Rosaはギルドパクトで3枚の《蒸気核の奇魔/Steamcore Weird》、2枚の《オーガの学者/Ogre Savant》といった強力なアドバンテージカードを引き当てており、そこからディセンションの初手で《悪魔火/Demonfire》にめぐりあっているという珠玉のデッキである。そして、多くのプレイヤーが16枚の土地でデッキを組もうという環境の中、彼は18枚でデッキを組み上げているのだ。

    De Rosa 1-2 中村

    ともあれ、爽快な「あなたに《火の玉/Fireball》!」系のフィニッシュで星を取り戻したDe Rosaは機嫌よく、

    De Rosa 「ちょっとトイレいってきます!」

    と、テーブルジャッジ付き添いのもとで離席。

    風向きがかわったことを感じたのか、ここで中村はテーブルジャッジを呼んで6枚の《島/Island》と2枚の《平地/Plains》を要求した。

    黒いカードをすべて抜いて、青いパワーカード――しかしながら、タッチするには難しいと思われる《不可解なるイスペリア/Isperia the Inscrutable》や《潮吹きの暴君/Tidespout Tyrant》といった大空の覇者たち――をデッキにサイドインしたのだ。

    Game 4

    しかし、中村の策は第4ゲームでは成就ならなかった。

    De Rosaが《ケンタウルスの護衛兵/Centaur Safeguard》を置いてから《思考訓練/Train of Thought》で2枚のカードを引き、そこから《穏やかな霞/Halcyon Glaze》を設置して4/4飛行によるビートダウンをはじめたのだ。

    中村もサイドインした《ヴィグの移植術師/Vigean Graftmage》からの+1/+1カウンターを受け取った《議事会の乗馬兵/Conclave Equenaut》を呼び出すのだが、これがまた《オーガの学者/Ogre Savant》たちによるCIP能力の格好のターゲットというわけである。

    快調にイゼット=ギルドの優良クリーチャーたちを操り、De Rosaはスコアカウントをタイに戻した。そもそも彼のデッキは強いのだ。

    De Rosa 2-2 中村

    Game 5

    勢いを取り戻したDe Rosaが猛攻を繰り広げる。3/1《ケンタウルスの護衛兵》を配備してから《穏やかな霞》というファーストアクション。しかしながら中村も地面に4/1《オルドルーンの猛士》をプレイして殴り返し、《ケンタウルスの護衛兵》を2/1飛行《金切り声の混種》で相討ちに取る。

    De Rosaは手札にあふれんばかりのクリーチャーたちを次々と並べては《霞》を起動し、4/4飛行でのビートダウンをスタートした。中村の4/1《猛士》は0/4ながらダメージ軽減能力を誇る《尊い祖霊/Benevolent Ancestor》にストップされてしまい、3/3飛行の《議事会の乗馬兵/Conclave Equenaut》を1/4《魂誓いの陪審/Soulsworn Jury》によってカウンターされてしまった。中村は土地ばかりをドローしてしまい、盤面を見る限りでは静かに破滅のときがおとずれようとしているかのようだった。

    しかし、なんとか中村も《オルドルーンの猛士》を《飛び火/Leap of Flame》させてのブロックで《穏やかな霞》を打ち倒す。……が、すでに残りライフは9点。De Rosaは2枚のカードを《思考訓練/Train of Thought》で獲得し、次なる猛攻を予告した。そんな中、中村も《焦熱の結末/Fiery Conclusion》と《棄却/Overrule》を活かしてなんとか踏みとどまった。特に、《噛みつきドレイク》を《棄却》してライフを獲得できたことは大きな意味を持つことになる。

    De Rosaが《蒸気核の奇魔》と《オーガの学者》を召喚すれば、中村は大空の覇者《潮吹きの暴君/Tidespout Tyrant》!!!!を。しかし、それを次なる《学者》でDe Rosaがこれをバウンス。予断を許さない強烈なアクションが続き、観客は完全にこのマッチに引き込まれていった。彼らの一挙手一投足にサツカ・アリーナの観衆がどよめく。

    観衆はDe Rosaのデッキに《悪魔火/Demonfire》が入っていることを知っている。もちろん、コメンテーターたちは解説の放送でそれを煽る。しかしながら、同時に《潮吹きの暴君/Tidespout Tyrant》によって中村が盤上を完全にコントロールしはじめてもいるのだ。

    《暴君》のアタックによるダメージは《一時しのぎの協定/Palliation Accord》からのカウンターによっていくらか軽減されてしまったものの、崖っぷちまで追い詰められた中村が驚異的な反撃を見せる。気がつけばライフは6対6のタイ。

    そして、中村はとあるカードを引き当ててじっくりと考えこんだ。その1枚、《小柄な竜装者/Wee Dragonauts》をプレイして墓地の《謎の幻霊/Enigma Eidolon》を手札に戻し、《暴君》の能力で《一時しのぎの協定/Palliation Accord》をバウンス。さらに《鉱岩流液獣/Petrahydrox》を召喚してDe Rosaのブロッカーをバウンスし、たったいま拾い上げたばかりの《幻霊》をここでプレイ。さらに誘発された《暴君》のバウンス能力によってもう一体のブロッカーを排除し――勝利の一撃を叩き込んだ。

    De Rosaは中村 修平に右手を差し伸べて勝利を祝福し、第5ゲームという肝心の試合で16枚ものランドをドローしつくしてしまったことを呪った。中村に猶予時間をあたえたのは、中盤以降のDe Rosaのドローの澱みだったのかもしれない。18枚の土地を投入するという選択が凶と出てしまったのか。

    そして、静かにDe Rosaがライブラリーをめくりあげていくと、上から2枚目のところに《悪魔火/Demonfire》が潜んでいた。

    中村 3-2 Antonino De Rosa

    デッキパワーで明らかに劣っているということを自覚した中村の奇策。

    《潮吹きの暴君/Tidespout Tyrant》や《不可解なるイスペリア/Isperia the Inscrutable》といった強力なカードを無理やりサイドボードから色を変えて投入するという決断が功を奏した一戦だった。



     
  • Sunday, May 7: 10:06 p.m. - 決勝: 大澤 拓也(神奈川) vs. Aaron Backmann(ドイツ)
    by Keita Mori

  • 大澤 拓也

    どうして大澤 拓也というプレイヤーがここまで勝ち上がって来れたのか? 

    単純明快。それは、彼が見出したドラフティング戦略が優れたものであったからだ。

    予選二日目の 第4ドラフトでのレポートの際にも触れたことだが、彼のストラテジーを簡単に紹介するなら以下のようなものとなる。

    とにかく軽く軽く。
    出来る限りシングルカラーのカードを。
    そして、ビートダウン(出来れば赤緑系)を。

    彼が赤緑系とアーキタイプを特定するのには、実にロジカルな裏付けがある。まず、ギルドパクトでグルールのカードの評価はイゼット系各種に比べれば随分と安いため、思い描くデッキを作るためのパーツが確保しやすい。また、緑に進めば、ディセンションで《楽園の拡散/Utopia Sprawl》をかなり安く手に入れることが出来るだろうという目算があり、これによって評価が高騰しているバウンスランドのピックを無理やりしなくてすむという大きな見返りがあるのである。

    皆さんも想像してほしい。マナベースを安定させるために……という理由で、本当はのどから手が出るほどにほしかったスペルを犠牲にしてバウンスランドや印鑑を入手する自分の光景を。おそらく、私自身を含めたほとんどのドラフターが経験しているであろう忸怩たるこの思い、これを大澤はロジカルに解決してしまったのだ。

    もちろん、大澤がバウンスランドや印鑑を評価していないわけではなく、彼は安価な代用品でマナベースを仕上げることができるように画策し、その分の余剰コストともいうべきピックをマナカーブの充実にあてているのである。

    大澤は2マナ2/2「熊」をはじめとした安定したクオリティのカードを非常に高く評価している。実際、彼が成功をおさめたドラフトの中では、2マナ域のアタッカーが7体も搭載されていたという好例もある。

    バウンスランドや印鑑のあふれかえる世界ゆえか、マナカーブというリミテッドの大原則がおろそかになりがちなRGDドラフト環境。そんな中で、大澤は自分の進むべき路を見つけおり、しっかりとした海図とコンパスをもって航海してきたのだ。

    8《森/Forest
    6《山/Mountain
    3《沼/Swamp
    2《楽園の拡散/Utopia Sprawl

    今回の大澤のデッキリストをじっくりと眺めてほしい。タップインしてくることもない、シンプルながら強固なマナベース。そして、驚くほど充実したクリーチャーたちが17体。

    多くのライバルたちがマナ調節カードに高い出費を強いられている中で、彼は悠々と一流のビートダウンカードたちを確保してマナカーブを完成させていった。そして、ディセンションでお手軽に《楽園の拡散/Utopia Sprawl》をドラフトし、基本地形とこのエンチャントメントだけでマナベースを構築してしまったのだ。

    マナを制するものがマジックを制るのなら、まさしく大澤 拓也には王者の風格あり。

    浅原 晃、石田 格、小室 修、小倉 陵、塩津 龍馬といった多くの仲間たちとサツカ・アリーナの観衆が見守る中、世界最強ドラフターの称号をかけて大澤の戦いがはじまる。

    Game 1

    アーロン・ブラックマン(ドイツ)

    ダイスロールで先手をとったのはAaron Brackmann(アーロン・ブラックマン/ドイツ)。彼も大澤と同い年となる21歳の大学生で、はじめてのプロツアー決勝ラウンドにしてここまでのぼりつめてきたという新鋭である。彼は青緑をベースに、3体の《シラナの星撃ち/Silhana Starfletcher》や2枚のバウンスランドのサポートを得て赤や黒の優秀なカードをちりばめている。

    Aaronが2ターン目に《シミックの印鑑/Simic Signet》をプレイし、3ターン目に《シラナの星撃ち/Silhana Starfletcher》をプレイした上でセット《イゼットの煮沸場/Izzet Boilerworks》。印鑑とバウンスランドというカードが確かに強力だということを裏付ける力強い立ち上がりだ。

    大澤は《シラナの星撃ち/Silhana Starfletcher》がAaronのタッチカラーである「黒」を指定したことに注目し、これを即座に《破滅の印章/Seal of Doom》で除去。ならば、とAaronは3/4の《占い棒使いのシャーマン/Dowsing Shaman》を呼び出してきた。

    このシャーマンをただの5マナ3/4とあなどるなかれ。Aaronのデッキでは《破滅の印章/Seal of Doom》と《炎の印章/Seal of Fire》を回収して使いまわすという驚異のアドバンテージエンジンとなりおおせるパターンも存在しているのである。

    大澤は静かに4ターン目に《胞子背のトロール/Sporeback Troll》を召喚。すると、これをAaronが《蒸気核の奇魔/Steamcore Weird》のCIP能力によって始末した。しかし、ファッティの質と量では決勝ドラフト卓随一の大澤は5/4の《ゴルガリの腐れワーム/Golgari Rotwurm》を展開して睨みをきかせ、続くターンにAaronが4マナ3/3の《シミックのぼろ布蟲/Simic Ragworm》を呼んできたところへ《細胞質の根の血族/Cytoplast Root-Kin》を呼び出した。こちらは4マナ4/4である。

    盤上をサイズ的に圧倒されはじめてしまったAaronだが、ここで3/3のワームと3/4のシャーマンの2体でアタックを宣言。コンバット・トリックをにおわせたブラフ的な挙動だが、大澤は5/4《腐れワーム》で3/3《ぼろ布蟲》を冷静にブロックした。これなら、たとえ《野生の寸法/Wildsize》が飛んできてもクリーチャー同士での相討ちで済む。実際にAaronはここで《野生の寸法》を詠唱し、大澤の想定の範囲内で戦闘は終了した。

    続くターン、ガードがさがったAaronへめがけて4/4の《細胞質の根の血族》でアタックする大澤。Aaronが流す血を糧に、「狂喜」する《ゴーア族の野人/Ghor-Clan Savage》が姿をあらわした。そう5/6という素晴らしいサイズのモンスターだ。

    ファッティの連続展開の前に苦しむAaronは《炎の印章/Seal of Fire》をプレイし、《シラナの星撃ち》を呼び出して「赤」と宣言。盤面を圧倒しはじめた大澤は攻勢を続け、4/4《血族》と5/6《野人》をレッドゾーンに送り込み、《野人》を1/2《奇魔》がチャンプブロックするということになった。この戦闘後に大澤は2匹目となる《ゴルガリの腐れワーム/Golgari Rotwurm》をよびだし、《血族》からの「移植」によって6/5というサイズへと肥大化させた。

    苦しみながらも「再生」クリーチャーである《胞子背のトロール》を召喚して止血を試みるAaron。しかし、次なる全軍突撃の後に6/4の《通り砕きのワーム/Streetbreaker Wurm》までもが呼び出され、うめき声をあげる。

    それでも、次なるドローでAaronは自軍の総大将格である6/6《這い集め虫/Gleancrawler》を引き当てて食い下がる。

    …が、大澤は全軍突撃から《黒焦げ/Char》を本体へと叩き込み、圧倒的なビートダウンを実現した。サイズでサイズを圧倒するという凄まじい力技だ。

    大澤 1-0 Aaron

    Game 2

    先手マリガンから2ターン目に《隠れ潜む密通者/Lurking Informant》を召喚するAaron。一方の大澤は開幕ターンに《楽園の拡散/Utopia Sprawl》を《森/Forest》に装着し、2ターン目にも《水辺の蜘蛛/Aquastrand Spider》を呼び出しながら2枚目の《楽園の拡散》をエンチャント。

    《水辺の蜘蛛》というカードは大澤がディセンションでもっとも強い緑のコモンカードとしてあげる優良クリーチャーで、大澤はそれを3体もデッキに投入できているのだ。

    マナを伸ばすという点では負けていられないAaronも《シラナの星撃ち/Silhana Starfletcher》を呼び出すが、大澤は3ターン目に5マナ域へとアクセスして《通り砕きのワーム/Streetbreaker Wurm》を召喚。くどいようだが、3ターン目に6/4である。

    Aaronも4ターン目に《粘体投げの小蛙/Plaxcaster Frogling》を呼び出せるという悪くないはずの展開なのだが、6/4《ワーム》のビートダウンを本体に通さざるをえない。そして戦闘後に大澤は「移植」《死足虫/Mortipede》を呼び出し、これを5/2というサイズに膨れ上がらせた。

    2ターン目に2/2、3ターン目に6/4、4ターン目に5/2。
    これこそ王者のマナカーブである。

    大澤の次なる6/4《ワーム》のアタックを3/3《小蛙》と1/3《星撃ち》でのダブルブロックするAaron。ここで大澤は戦闘ダメージを3点ずつ割り振り、ダメージスタック後の《野生の寸法/Wildsize》によってAaronはなんとか《小蛙》を守った。この戦闘後に大澤は《胞子背のトロール/Sporeback Troll》を呼び出す。この《トロール》によって、「移植」された5/2《死足虫/Mortipede》はなんと《寄せ餌/Lure》能力持ちの再生クリーチャーとなったわけである。

    Aaronが特に何もアクションを起こせずにターンを終えると、大澤はエンドステップの《種のばら撒き/Scatter the Seeds》で自陣に1/1トークンを追加。その上で、《死足虫》がその名に恥じない暴力的な能力を起動して敵陣を壊滅させた。

    続くターンに大澤が《グルールの潰し屋/Gruul Scrapper》を呼び出すと、ビートダウン・ショーの第二幕もここまでとなった。

    大澤 2-0 Aaron

    Game 3

    大澤を見守る仲間たち

    しかし、栄光のプロツアーチャンピオンへの道のりは生半可なものではない。ここで大澤を襲うのが試練のダブルマリガン。やはり甘くはない。

    それでも開幕ターンに《シミックの信徒/Simic Initiate》を展開し、2ターン目に《楽園の拡散》をプレイする大澤。ただ、背水の陣でのぞむAaronのマナ加速は最上級のもので、2ターン目に《シミックの印鑑》、3ターン目に《シラナの星撃ち》プレイから《イゼットの煮沸場》セットという動き。4ターン目に《棘茨の精霊/Bramble Elemental》を置きながら《炎の印章》をプレイという素晴らしい滑り出しでのリベンジを狙った。

    一方の大澤は《種のばら撒き/Scatter the Seeds》で3体のトークンを生み出し、《掘り起こしスラル/Exhumer Thrull》を「移植」して4/4というサイズに育て、これで敵陣の《精霊》を討ち取る。

    2/2《土を形作る者/Terraformer》で静かにアタックを続けるAaronだが、大澤は先ほどの試合で決定的な役割を果たした《死足虫/Mortipede》を召喚。大澤がこれでアタックを試みるとAaronは1/3の《シラナの星撃ち》との相討ちを狙ってブロックし、戦闘ダメージをスタックさせてから先ほどの《掘り起こしスラル/Exhumer Thrull》が憑依していた1/1トークンへと《印章》を使った。

    あんなものを掘り起こされてはたまらない、というAaronの本音が見え隠れするような一幕だが、とにかく「憑依」していたトークンが墓地にいったことによって大澤は1/1《シミックの信徒》を再召喚できることになった。

    ちなみに、大澤のデッキに《巨大化/Giant Growth》系コンバットトリックの姿はないが、よくよくサイドボードを見てみると《かき集める勇気/Gather Courage》が眠っていることがわかる。つまり、大澤は《かき集める勇気》抜きでも十分に戦えるデッキをドラフトで仕上げているということなのだ。

    それでも、Aaronは大澤の1/1トークンたちのアタックに対して《粘体マンタ/Plaxmanta》をインスタント召喚して不意のブロックを決め、自陣にも《種のばら撒き/Scatter the Seeds》による1/1トークンたち3体を追加。大澤が《胞子背のトロール》を召喚してきたものの、ライフ面では8対15というリードを築いている。

    2/2のうち一体は再生能力をもった《トロール》に一方的に殺されてしまうことを承知でAaronは全軍突撃を敢行し、大澤の残りライフを3点にまで削り落とした。しかしながら大澤は後続として4/4の《細胞質の根の血族/Cytoplast Root-Kin》をプレイし、これによって《トロール》も3/3へとサイズアップを果たした。

    Aaronは《隠れ潜む密通者/Lurking Informant》を呼び出してみるのだが、ここへむけて大澤は《薄暗がりへの消失/Douse in Gloom》を唱え、除去の成功とともに残りライフを5点にまで回復。こうなると、とうとう大澤の最大の長所でもあるファッティの群れが押し寄せる時間となり、4/4《血族》でアタックを通してから、「移植」して6/5《ゴルガリの腐れワーム/Golgari Rotwurm》を召喚する。

    Aaronも《眼球の輪/Ocular Halo》を《粘体マンタ》に纏わせてカードを引き、大澤がBlack Manaを出せない隙をついて《夢のつなぎ紐/Dream Leash》で3/3《血族》を奪い取るという好プレイをみせた。しかし、やはり古都プラハの風は大澤の背中を後押ししていたようだ。

    《連弾炎/Pyromatics》によってドローエンジンとなったはずの《マンタ》をすぐさま焼かれてしまい、6/5《腐れワーム》をチャンプブロックすることしかできないAaron。やむをえず本体にダメージを通すことを選択すると、そこには血を求めて5/6《ゴーア族の野人/Ghor-Clan Savage》があらわれ、続くターンには7/5となって《通り砕きのワーム/Streetbreaker Wurm》がやってくるという有様なのだ。

    とにかくチャンプブロックを繰り返すのみとなってしまったAaronがようやっと「再生」もちの《胞子背のトロール》を呼び出したところで、大澤は階段の最後の1段に足をかけた。

    大澤は大きく深呼吸をしてからエンドステップに2点の《連弾炎/Pyromatics》をプレイし、《野人》を生贄にささげて《ゴルガリの腐れワーム/Golgari Rotwurm》の能力を起動。これでAaronの残りライフを1点にまで削り落とした。

    かくて、万感の思いをこめて18ターン目のアンタップステップを迎え、大澤 拓也はBlack Manaを支払って《腐れワーム》の能力を起動した。

    18回戦のマッチと6つのドラフトを戦い抜き、21歳の若者がプロツアーチャンピオンに輝いた瞬間だった。

    大澤 拓也 3-2 Aaron Brackmann

    Pro Tour Prague Champion is Takuya Osawa !!




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